週末のまとまった時間を使って一気見(=マラソン)したい、シリーズものや関連する映像作品をご紹介する連載【週末シネマラン】。アマプラ(Prime Video)やNetflixなどの配信サービスを使って観ることができる映画・ドラマ・アニメの中から、singles編集部メンバーが各々おすすめをピックアップ! 今回は、不思議で不気味なもの大好き! な筆者utoが、この夏のゾッ! にぴったりな悪魔祓いものを選びました。知ればより楽しめる知識付きでお送りしますよ!

《utoの自己紹介》
不思議で不気味な世界観の作品が好き。とくに幽霊をこよなく愛しすぎていて、もはや一緒に住みたい。王道なオチもどんでん返しも大好き。
主に利用している配信サービス:アマプラ、ディズニープラス
好きなジャンル:ホラー、サスペンス、ノンフィクションなど

知っておくとより楽しめる! 予備知識

悪魔祓いは”悪魔VS人間”と思われがちですが、じつは”悪魔SV信仰”の戦いであるという描かれ方をすることも多いもの。このあたりが、日本人にとってはあまりぴんとこないポイントかもしれません。

キリスト教圏の生活や文化は、その信仰生活の中心である聖書を元に形成されているので、こういう場合は聖書を読むことが理解への近道になります。

とはいっても、66巻の本が1冊にまとまった辞書みたいにぶっとい本なんてすぐには読めないよ! という方に向けて、筆者が簡単な予備知識をご紹介します。

ちょっと小難しかったりとっつきにくかったりするかもしれませんが、軽くかじっておくとより楽しめると思うので、気になるワードだけでもおさえておくのがおすすめです。

聖書

画像: 取り上げた映画はカトリックのものですが、プロテスタントでも悪魔祓いをすることはあるようです

取り上げた映画はカトリックのものですが、プロテスタントでも悪魔祓いをすることはあるようです

聖書は、悪魔祓いものには必ず登場するアイテムです。

「キリストによる救いを説明する書」であるとともに、「神の言葉」であるとされています。

「ヨハネの福音書」(「ヨハネの黙示録」と同じ著者によるもの)の冒頭では、「はじめに言葉があった。言葉は神とともにあった」とあり、この「言葉」はイエス・キリストのことなので、父と子と聖霊という三位一体の神が”言葉の神”であることがわかります。
※天地創造のときも言葉によって世界を創造したとあります。「光、あれ」という言葉はあまりにも有名ですね。

なので、聖書の言葉には力があるとされ、イエスが洗礼の後に断食し、荒野で悪魔の誘惑を受けたとされる場面では、イエス自身も聖書の言葉を引用して悪魔を退けています。

実際、映画『エクソシスト』『エミリー・ローズ』のなかに、通称「主の祈り」と呼ばれるものの一部が登場します。こちらも聖書にあるイエスによる祈りの言葉を引用したものです。
※天におられる我らの父よ、御名があがめられますように、というような部分。

聖書における悪魔祓い

画像: 聖水も悪魔祓いには必須のアイテム

聖水も悪魔祓いには必須のアイテム

イエスが地上でおこなった数多くの奇跡のなかには、悪魔祓いも含まれています。

イエス自身が祓う以外にも、12人の弟子に悪霊(=悪魔)を追い出す権威を与えて送り出すエピソードがあったり、弟子でない人々もイエスの名前を使って悪霊を追い出していたという話が出てきたりします。
※使徒と呼ばれる人々。イエスの直接の弟子のことを言います。また、直接の弟子ではありませんがパウロという人物も自身のことを使徒と位置づけています。

通常悪魔と戦うときには、「イエスの名によって」とイエスの名前を出します。これは、イエスの名前自体に力があると聖書が教えていることによります。

これは悪魔祓いの映画にはよく出てくるので、覚えておくと「おっ、言ったな!?」となることができるかも!?

十字架

画像: カトリックはロザリオをよく使いますが、プロテスタントは十字架を携行する習慣はないようです

カトリックはロザリオをよく使いますが、プロテスタントは十字架を携行する習慣はないようです

十字架も、悪魔祓い映画には必ずと言っていいほど出てくるもの。

イエスが処刑されたときの処刑具であることは有名ですが、これは生け贄として死んだイエスの死と復活を象徴したアイテムです。

もともと生け贄を捧げる文化は、旧約聖書を継承してきたイスラエル民族のなかに根付いており、本来、罪を犯した際の神との和解のために傷のない子羊を捧げていたことが根底にあります。

子羊の犠牲は神と和解し再び親密な関係に戻ることを意味しているので、イエスの死と復活は、すべての人間のための神との和解であるとされています。この和解のことを救いや福音と呼びます。

そのため、救いや福音の象徴である十字架を聖なるものとしている、と考えられます。

神と人間とオカルト映画

聖書の神が、父と子と聖霊の三位一体の神であることは有名です。

画像: 父(画像左)と子(画像右)と聖霊(画像中央)、これが三位一体

父(画像左)と子(画像右)と聖霊(画像中央)、これが三位一体

これは、ひとりの人間に例えると、家庭のなかでは子を持つ父であり、実家に帰れば親の息子であり、職場に行けば教師である、という多面性があるというふうに解釈できると思います。

この神は愛の神であるとされ、人間と親密な親子関係を結ぶことを求めていると言われています。なので、神と人間との間をつなぐ存在としてイエスを遣わしたとされます。

信仰という言葉はあまりなじみがないかもしれませんが、オカルト映画ではけっこう肝心な部分。簡単に言うと、信仰の対象(キリスト教の場合はイエス)を信じて受け入れることだと思っておいてもらえれば大丈夫だと思います。

悪魔祓いをテーマとした映画の核心的な部分は、この信仰心ということになることが多いようです。いかに神やイエスを信じていられるか、が物語の中核をなすこともあります。このあたりに緊張感があることがわかると、映画にもぐっと入り込むことができます!

以上のようなことに注目すると、より深く悪魔祓い映画を楽しむことができますよ!

悪魔祓いだけじゃない! 見所満載の悪魔祓い映画3選

前述の予備知識を携えて、各映画のおすすめポイントをご紹介していきます!

悪魔祓い×家族愛! 『死霊館』

悪魔祓いの心構えを知ることができると言う意味で、まずおすすめしたいのがこちらの映画『死霊館』。

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悪魔祓いには信仰心が必要であることや、教会と手続き上のやりとりがあることなどが描かれていて、ほかの悪魔祓い映画を観る前に触れておくと理解が深まってより一層楽しめます。

こちらは1971年に実際に起こった事件を元にしており、悪魔祓いをおこなうことになるウォーレン夫妻も、悪魔に魂を売り渡した魔女によって呪われてしまうペロン一家も実在しています。

この事件は、ウォーレン夫妻が「もっとも邪悪で恐ろしい」事例であると言っていて、長らく封印されていたものだとか。

とはいえ、家族を大切に思うシーンがとても印象的なので、家族愛ものとして観るのもおすすめ! この映画のテーマのひとつは家族愛なんじゃないかと思えるほどでした……。

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『死霊館』は続編として『アナベル 死霊館の人形』(2014)や『死霊館 エンフィールド事件』(2016)など数多くの映画が作られていますので、シリーズものとしても楽しめますよ。この『死霊館』シリーズは公開順に見るのが個人的なおすすめです。

また、ウォーレン夫妻は映画『悪魔の棲む家』(1979)のモデルとなった「アミティヴィル事件」にも関わっています。お時間がありましたらこちらの映画もぜひ!

悪魔祓い×オカルト映画の金字塔! 『エクソシスト』

オカルト映画、ホラー映画の金字塔として忘れてはいけないのがこちらの『エクソシスト』!

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取り憑かれるまでの経緯、取り憑かれてからのリーガンの変化、悪魔との戦いなど、悪魔祓いものに欠かせない要素がてんこ盛り! やはり、この映画なくしてオカルト映画は語れないと思います!

こちらの映画には原作があり、その原作小説がモデルにしたのが、1949年に少年が悪魔に憑依されたという事件。

この映画の難しいところは、冒頭でのイラクでの発掘現場シーンが一体何なのかわからないところです。とくに、謎の石像と敬虔なメリン神父が向かい合うところは、緊張感がありながらもどう解釈していいのかわからない部分でもあります。

この石像はパズズと呼ばれる悪霊のものらしく、どうやらメリン神父はこの悪霊と戦ったことがあるようです。そして、劇中でリーガンにとりついた悪魔がメリン神父の名前を呼ぶ場面があるところから、両者には何か因縁があることが推察できます。

この石像と神父が向かう会う場面は、この因縁の対決が差し迫っていることを、神父自身が察するシーンであるのだとか。……説明されないとそこまではわからないです……。

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そんなメリン神父の「悪魔の言葉に耳を傾けてはならない」、というセリフは悪魔祓いをするうえでの鉄則のようで、悪魔が嘘で人間を惑わすことが言及されています。

事実聖書でも悪魔のことを”偽りの君”と表現している部分があるので、これは聖書に基づく考え方であるのでしょう。

この映画でのハラハラドキドキポイントは、なんと言っても悪魔祓いのシーン! メリン神父の助手を務めることになったデミアンは、信仰心の揺らいでいる神父。助けを求める信者の老人を見捨ててしまったこともあります。

このような状態で、はたしてメリン神父とともに悪魔を祓えるのか!? と手に汗握ってしまいます……!

気になる結果は!? ……ぜひ観て確かめてくださいね!

悪魔祓い×法廷バトル! 『エミリー・ローズ』

最後に、悪魔祓いものでイチオシの作品をご紹介します!

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悪魔祓いものなのに、なんとそのほとんどが法廷シーン! 映画の大部分が裁判風景という構成です。こちらもモデルとなった実話があり、1976年にドイツで起こった事件と裁判を元にしています。

検事のトマスはクリスチャン(キリスト教を信じる人のこと)であるものの、今回の事件における悪魔の介入には否定的で、ムーア神父は過失致死で有罪であると徹底して主張してきます。

対するエリンは、キャリアのために何としても無罪を勝ち取りたい野心家。最初は悪魔なんて信じていなかったのですが、やがて自身の身に怪現象が起こり始めたり、ムーア神父にこれは光と闇との戦いだと言われたりすることで、少しずつ考えを変えていきます。

そんな検事と弁護士の法廷バトルは観ていて圧巻! 陪審員による判決を左右する証拠や証言を並べ、どちらも一歩も引かない姿勢で弁論する様子は、まるで本当に法廷へ傍聴に来ているような気になるほど! めちゃくちゃ引き込まれます。

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そんな裁判の中心人物、ムーア神父は、死亡したエミリー・ローズの真実を語ることを望みます。エミリー・ローズはなぜ悪魔に取り憑かれたのか? そしてなぜ取り憑かれたまま命を落としてしまったのか?

それともエミリーは本当に病気を患っていて、治療を受けさせなかったムーア神父による過失致死であったのか……?

手に汗握る裁判の結末、ぜひご覧ください!
エミリー・ローズ役の女優さんの演技がすごすぎて、さすがの筆者もちょっとびびったのは内緒……(笑)

今回ご紹介した3つの映画はどれもおすすめなので、予備知識で理解を深めつつ、楽しんでみてくださいね♪

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