ホリデーシーズン到来! クリスマスを堪能できる小説5選
12月になりました。だいぶ寒くなってきて、年末に向けて体調にも気を遣いたい季節です。
さて、12月と言えば、楽しみなのがクリスマス。子どもだけでなく、大人も楽しいイベントです。いろいろな場所へお出かけしたり、特別なディナーを楽しんだり、この季節を楽しむ方法はたくさんあります。
そんなクリスマスの楽しみ方のひとつに、読書を取り入れてみるのはいかがでしょうか?
いつも文学賞受賞作からピックアップしている【ブックガイド】ですが、今回は、番外編。この時期を楽しむのにぴったりな小説をピックアップ!
取り上げている作品は、いずれもクリスマスシーズンが舞台。この季節を、文学でも。ぜひ楽しんでくださいね!
『クリスマス・キャロル』 チャールズ・ディケンズ(1843)
【あらすじ】
冷酷な守銭奴の商人、スクルージ。金儲けにしか興味がないスクルージにとっては、クリスマスなんていう季節はお金にならない不愉快な時期……。クリスマスイヴの日でも、スクルージはいつものように人々に対して冷酷な態度を崩しませんでした。その夜、スクルージの前に7年前に死んだ元共同経営者・マーレイの亡霊が現れ……!?
おすすめポイント
この作品は、ハッピーエンドの物語に触れたい、という方におすすめです。
映画やミュージカルなどでも有名な、『クリスマス・キャロル』。映像で見たことがあっても、原作を読んだことはない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
お金のことしか考えていないスクルージが、過去・現在・未来それぞれの精霊と出会い、不思議な体験をしていくというストーリー。
クリスマスにぴったりなファンタジーな展開で、スクルージの変化にも心が温まります。クリスマスという特別な季節が起こす奇跡に、きっとほっこりすることができるでしょう。
映画化や舞台化もかなり多いのですが、筆者個人としては、イギリスで製作された1970年版のミュージカル映画『クリスマスキャロル』が大のお気に入りです。思わず踊り出したくなるようなウキウキの音楽とストーリーは、何度観ても楽しい!
原作を楽しんだら、ぜひ映画も観てみてくださいね。
読書時間目安:2時間半~3時間半程度(160ページ)
※ページ数は、角川文庫版でのページ数です。
『青い鳥』 モーリス・メーテルリンク(1908)
【あらすじ】
クリスマスイヴの日、貧しい木こりの子どもチルチルとミチルの前に、醜い妖女が現れます。妖女は、病気の娘のために青い鳥を探しに行ってほしいと言い、ダイヤモンドがついている魔法の帽子をふたりに与えました。この帽子で、光や猫やパンや砂糖に魂があるのが見えるようになったふたりは、青い鳥を探す旅に出ます。
おすすめポイント
この作品は、意外とちゃんと読んだことのない物語に挑戦したい、という方におすすめです。
そもそもこの『青い鳥』は、メーテルリンクが「クリスマス用の話を」と依頼されて書いた劇で、実際に1908年にモスクワ芸術座によって初演されたものが初版。じつは童話ではなく、童話劇、というジャンルのものなのです。
なので、現在文庫でも手に入りやすい堀口大學翻訳の新潮文庫版『青い鳥』は、小説らしい文章ではなく、劇の台本やシナリオのような文章。古い訳ですが、そこまで古めかしい印象はないものの、小説を期待しているとちょっとイメージと違ってしまうかもしれません。
物語として小説のような文章を楽しみたいなら、江國香織さんが翻訳を担当した講談社青い鳥文庫版や、岩波少年文庫版などがおすすめです。子ども向けの文章ながら、『青い鳥』独特のファンタジックかつ深いテーマの世界観を楽しむことができますよ。
『青い鳥』全体のテーマとなっているのは、「本当の幸せとは何か?」ということ。ぜひ読んで、チルチルやミチルと一緒に、幸せを探す旅に出てみてはいかがでしょうか?
読書時間目安:4時間~5時間半程度(238ページ)
※ページ数は、新潮文庫版でのページ数です。
『クリスマスの幽霊』 ロバート・ウェストール(1992)
【あらすじ】
1930年代イギリス。父さんが働く工場には、ある噂がありました。工場に幽霊が現れると、事故が起こるという……。ある日父さんにお弁当を届けに行った少年は、工場で幽霊を見てしまいます。もし、事故で命を落とすのが自分の父親だったら? クリスマスイヴに起こった小さな奇跡の物語。
おすすめポイント
この作品は、ちょっぴりほろ苦いクリスマスストーリーを読んでみたい、という方におすすめです。
宮崎駿監督もファンだという、ウェストールによるクリスマスストーリーです。
ウェストールと言えば、日本でも大変話題になった『弟の戦争』など、戦争やホラーを取り扱った作品が多いですが、この『クリスマスの幽霊』も戦争が人々に与える影響を描いています。
舞台になっている1930年代と言えば、第一次世界大戦と第二次世界大戦の間の時代です。そんな時代にあって、イギリスの小さな町でクリスマスを過ごす人々の描写は、古き良きイギリスのクリスマスをじつに良く表現しています。
もちろん戦争を背景としているので、全体としてそこまで明るいお話ではありません。ですがウェストールの作品のなかでは非常に読みやすく、終わり方も温かいので、ウェストール作品の入門にもいいと思います。
児童文学ながら大人が読んでも味わい深いこの作品、ぜひ読んでみてくださいね。
読書時間目安:2時間~2時間半程度(116ページ)
※ページ数は、徳間書店版でのページ数です。
『賢者の贈り物』 オー・ヘンリー(1906)
【あらすじ】
貧しい暮らしをしているヤング夫妻。そんなふたりにはそれぞれ宝物がありました。夫のジムは受け継いできた金の懐中時計。妻のデラは、美しく長い髪。ある日、お金がない中でもお互いにクリスマスプレゼントを用意しようと、ジムは妻のために櫛を、デラは夫のために時計の鎖を買おうとしますが……?
おすすめポイント
この作品は、有名なお話を改めて読んでみたい、という方におすすめです。
アメリカの短編小説の名手、オー・ヘンリーによる『賢者の贈り物』は、話の筋も結末もとても有名ですが、実際には読んだことはないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
クリスマスストーリーと言えば、という定番のものではありますが、物語の発想は新約聖書にあるそうです。キリストが誕生したとき、東方の三博士という聖者3人が贈り物を持ってきた、というエピソードがあり、それをもとにしているとか。
ところで作者の名前、変わっていると思いませんか? 最近は「オー・ヘンリー」と表記することが多いですが、昔よく使われていた表記は「O・ヘンリー」。この「O(オー)」が何なのかはいくつか説があります。
個人的には、かわいがっていた猫ヘンリーを呼ぶときの言葉、「おーい、ヘンリー」から来ている、という説がとても好きです。
角川文庫版は『賢者の贈り物』を含め16のお話が入っているので、そこそこのボリュームながら長編はまだ読み切る自信がないという方にもおすすめです。
読書時間目安:4時間~5時間程度(240ページ)
※ページ数は、角川文庫版でのページ数です。
『くるみ割り人形とねずみの王様』 E.T.A.ホフマン(1816)
【あらすじ】
シュタールバウム家にもクリスマスがやってきて、下の娘マリーは、たくさんのクリスマスプレゼントの中からくるみ割り人形を見つけます。この人形が気に入ったマリーでしたが、兄のフリッツが無理にくるみを割ろうとして、壊してしまいました。壊れたくるみ割り人形を気の毒に思ったマリーは、人形用のベッドでこの人形を休ませて上がることにしましたが……。
おすすめポイント
この作品は、有名なお話の原作を読んでみたい、という方におすすめです。
【10月のブックガイド:番外編】でもご紹介したE.T.A.ホフマンによるクリスマスストーリーです。ちょっと不気味な雰囲気があるのは、ホフマン独特の世界観ゆえでしょう。
もともと、ドイツロマン派の作家たち、コンテッサやフーケと一緒に、子ども向けのクリスマスストーリーを作ろうとして書かれたお話です。子ども向けとはいえ、大人が読んでももちろん楽しいです。
つい最近(2025年11月20日に刊行されたので本当につい最近)、創元推理文庫から『クリスマスに捧げるドイツ綺譚集』という本が出ました。こちらはまさにコンテッサ、フーケ(創元推理文庫版ではフケー)、ホフマンが作ったクリスマスのお話が詰まっています。
1816年と1817年のクリスマスに出版された『子どものメルヘン』計2冊分・全6編のお話が詰め込まれたこちらの本は、ドイツロマン派の3人のクリスマスストーリーが1冊で味わえる贅沢な内容。文庫本としては少し高いですが、それでも買って読んでみると、とても楽しめると思いますよ。
読書時間目安:6時間半~7時間半程度(398ページ)
※ページ数は、創元推理文庫版でのページ数です。
ホリデーシーズン本番! 文学でもクリスマスを楽しんで!
今回は、ホリデーシーズンにぴったりな、クリスマスの時期を舞台とした作品5つをご紹介しました。
どれも古典的名作で、話の筋は有名なものばかりですが、実際に読んでみると「こんなお話だったの?」と新鮮な驚きを味わえるかもしれません。
クリスマスは街がきらきら輝き、おいしいお料理も楽しめる季節です。そんな季節のワンシーンに、読書時間を取り入れてみてはいかがでしょうか?
温かなおうちでほっこりクリスマスストーリーを楽しむのも、街に出てクリスマスムードたっぷりななかで読書を楽しむのも、きっと素敵な時間になるはず!
この季節を、文学と一緒に。ぜひ、素敵なクリスマスにしてくださいね。










