夏の日におすすめの企画展をご紹介
8月になりました。連日厳しい暑さが続き、お出かけには日傘も必須なほどですね。夏らしい太陽のもとでのソロ活もよいですが、涼しい場所へお出かけしたいなと思ったら、美術館はいかがですか?
今回は、日本の夏の風物詩ともいえる、お化けの世界に触れられるホラーな企画展や、美術作品と人の関係を改めて感じられる企画展、なんとも美しい写本が見られる企画展まで、幅広くご紹介します。
お気に入りの日傘を差しながら、ぜひ足を運んでみてくださいね。
「浮世絵お化け屋敷」(太田記念美術館)
まずご紹介するのは、日本独自の芸術である浮世絵で描く、お化けの世界の企画展です。
廃屋に住む妖怪や、恨みのこもった目で見つめる幽霊など、お化けというものは浮世絵で扱われるジャンルの中でも大きなもののひとつ。
そこに描かれるお化けたちは、背筋も凍るほど怖いものから、思わず笑顔になるような愛嬌のあるものまで、多彩で魅力的な姿を見せてくれます。
歌川広重や月岡芳年などの有名画家のほか、約170点のお化けたちが一堂に会します。まさに見るお化け屋敷である今回の企画展、涼しくなりたい!と思ったら、ぜひご注目ください。
前期と後期で展示ががらりと変わるので、どちらも見るというのもいいですね。
「浮世絵お化け屋敷」
会場:太田記念美術館(JR山手線「原宿」駅表参道口 徒歩5分)
会期:前期 2024年8月3日(土)~2024年9月1日(日)
後期 2024年9月6日(金)~2024年9月29日(日)
※前後期で全点展示替え
「ルーヴル美術館の銅版画展」(八王子市夢美術館)
「カルコグラフィー(銅版画)」は、ルーヴル美術館で扱われるグラフィック・アートのなかでも重要なジャンルのひとつ。
そんな銅版画とそのコレクションを保存し、原版から版画を刷る場所でもある「カルコグラフィー室」の作品がやってきます。
かつて、太陽王ルイ14世がフランス王家の権威を示すために、建築、芸術、植物学などさまざまな学術研究を銅版画で記録・保存することを推し進めたことで始まった、カルコグラフィー室の歴史。銅版画は、写真が誕生するまでの間、情報を保存するための重要な位置にありました。
現代になっても、版画技術の保存や名画の版画化、そして現代作家の作品の拡充など、そのコレクションの重要性は色あせることがありません。
今回はカルコグラフィー室の約13,000点におよぶコレクションのなかから、当時の版を用いて刷られた約100点が紹介されています。
この機会に、銅版画を通してフランスやヨーロッパの空気を感じてみてくださいね。
「ルーヴル美術館の銅版画展」
会場:八王子市夢美術館(JR線「JR八王子」駅北口 徒歩15分)
会期:2024年6月28日(金)〜2024年9月1日(日)
「空間と作品」(アーティゾン美術館)
これまでたくさんの美術館と企画展をご紹介してきましたが、美術作品は最初から美術館に収蔵されていたわけではないことも多いもの。
本来、美術作品は個人宅の家具だったり、プライベートな依頼で制作されていたりと、所有者と制作者との関係のなかで生まれたものも多いのです。そうして生み出されてから、美術館に並ぶまで、さまざまな人たちの間を旅し、受け継がれてきました。
この企画展では、そういった美術作品の来歴を体感しながら、どのような状況で生まれ、鑑賞されてきたのかを想像することができます。
モネやセザンヌ、日本人画家にいたるまで、多様な作品をコレクションしている石橋財団コレクション144点を見ることができるこの企画展では、美術作品と人との関係を改めて感じることができますよ。
「空間と作品」
会場:アーティゾン美術館(JR線「東京」駅八重洲中央口 徒歩5分)
会期:2024年7月27日(土)~2024年10月14日(月)
「空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン」(東京ステーションギャラリー)
20世紀後半のベルギーを代表するアーティストのひとり、ジャン=ミッシェル・フォロン。
フォロンは、若い時期に出会ったルネ・マグリットの壁画に衝撃を受け、絵画世界に足を踏み入れます。フランスではあまり注目されなかったものの、アメリカの『ザ・ニューヨーカー』や『タイム』といった有名誌で人気を集め、その後は各国で高い評価を得て活躍しました。
その作風は、美しくありながらも、環境破壊や人権問題など現実世界へも目が向けられたもので、孤独や不安といった感情が隠れています。
この展示は日本で30年ぶりとなる大回顧展です。初期のドローイング作品から晩年の立体作品など、約230点を見ることができます。
美しさと詩情あふれる作品の中に流れる、フォロンのメッセージをぜひご覧ください。
「空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン」
会場:東京ステーションギャラリー(JR線「東京」駅丸の内北口 改札前)
会期:2024年7月13日(土)~2024年9月23日(月)
「内藤コレクション 写本 ー いとも優雅なる中世の小宇宙」(国立西洋美術館)
印刷技術が確立されるよりまえ、中世ヨーロッパで信仰や知識の保存を担っていたのが写本です。
動物の皮を加工した紙に、絵や文章を手書きして作られた写本は、多くの時間と労力をかけられているため、ときには高級品・贅沢品となることもありました。その装飾や彩飾によってすばらしい芸術作品として評価されることもあります。
写本リーフ(写本から切り離された1ページ1ページのこと)を中心としたコレクションの寄贈から始まった内藤コレクション。これまで3期にわたって小企画展が開催されてきましたが、コロナ禍などによって規模の小さなものとなっていました。
しかし、今回の企画展では、コレクションの大多数と作品の調査の成果を数多く見ることができます。
聖書や詩編、聖歌集など約150点にもおよぶ「中世の小宇宙」を展示しているこの企画展は、中世のヨーロッパを感じられるよい機会となるでしょう。
「内藤コレクション 写本 ー いとも優雅なる中世の小宇宙」
会場:国立西洋美術館(JR線「上野」駅公園口出口 徒歩1分)
会期:2024年06月11日(火)~2024年8月25日(日)
夏の日差しの下、涼しい美術館へのお出かけをどうぞ
今回は、夏らしいお化けの企画展から美しい写本の世界を見られる企画展まで、幅広くご紹介しました。
きらきら輝く日差しを感じながら、夏のお出かけを楽しんできてくださいね。