《ameの自己紹介》
映画を始めとする映像作品には非日常を求めるタイプ。エンディングはハッピーエンド派。圧倒的な強さを誇る主人公が登場するアクションが好み。
主に利用している配信サービス:アマプラ、ディズニープラス、Netflix
好きなジャンル:アクション、SFなど
よりおもしろくなるかも! 登場する美術品と豆知識
クリムトの絵画たちと、架空の画家ホイトルの絵画<少年と林檎>|『グランド・ブダペスト・ホテル』
『グランド・ブタペスト・ホテル』は、ウェス・アンダーソンが監督・脚本を、レイフ・ファインズが主演を務めた映画です。第87回アカデミー賞をはじめとする、数々の賞を受賞した作品なので、観たことがない方もなんとなく聞いたことがあるかもしれません。
本作は、舞台である「グランド・ブダペスト・ホテル」にアール・ヌーヴォー(新しい芸術)様式のインテリアが散りばめられていたり、語られる3つの時間軸ごとにアスペクト比が使い分けられていたりと、映画自体ももはや芸術作品!

座っている女性が、マダム・D。隣に座る男性が、グスタヴ・H。エレベーターの内装も革新的で素敵
小窓のフレームを額縁に見立てて登場人物を見せるという、まるで絵画のような演出もあり、全体的に気の利いた表現が多いなと感じます。
そんな本作に登場する美術品のなかで、鑑賞のヒントになりそうなのが、オーストリアの画家グスタフ・クリムトの絵画。アール・ヌーヴォーの運動もおこなっていた人物で、現在でも人気の高い画家です。
映画が始まって間もなく、大富豪の常連客マダム・Dと、コンシェルジュのグスタヴ・Hが会っている部屋の壁に、<白樺の森>をはじめとする絵画がいくつか飾られているのが分かります。
グスタフ・クリムトの<白樺の森>(1903)。点描風のタッチが特徴的です
<白樺の森>は、煩わしい人間関係に疲れたクリムトが、自然と過ごすなかで描かれたようなので、親族付き合いに疲れたマダム・Dが、ホテルとグスタヴ・Hをオアシスのように思っていたことのあらわれかもしれません。
さらに、マダム・Dの好みで、ホテルの内装にあわせてアール・ヌーヴォーを意識したクリムトの絵画を飾っていた可能性もあります。“グスタフ”と“グスタヴ”が似ている点も、マダム・Dがグスタヴ・Hを気に入っている理由のひとつかも。
また、クリムトは、官能的なテーマを多く取り扱っていることもあったので、マダム・Dとグスタヴ・Hが懇ろな関係であったことを示唆する意図もあるかもしれません。あくまでも考察の範疇ですが、こういった絵画が舞台装置として役立っていると思います。
@YpotryllMuseum post on X
x.comまた、重要なアイテムとして、<少年と林檎>という絵画も登場します。この絵画は、架空の画家ヨハネス・ファン・ホイトルによって描かれたとされており、かなりの価値を持っているとして扱われます。
この絵画をめぐってさまざまな騒動が起こるわけですが……<少年と林檎>がもともとあった場所にかわりとしてかけられたのは、エゴン・シーレによく似たタッチの絵画です。クリムトに大きく影響された画家でもあるので、ここでも繋がりがありそうなのがおもしろい!
映画自体かなりテンポが良いのもあって、かなり観やすいと思うので、ぜひ絵画にも注目して観てみてください。ひとつ注意点があるとすれば、猫が死んでしまう描写があること……。全体的に人間もかなりポップに、B級映画風の演出で死んでいくのですが、それでも苦手な方はご注意を!
ルノワールの<日傘を持つ女と子ども>、ポロックの<Free Form>、クーリッジの<ポーカーをする犬>|『ザ・コンサルタント』
高機能自閉症の会計士兼殺し屋という、なかなか個性的な主人公が出てくるアクション映画『ザ・コンサルタント』。主演のベン・アフレックの演技が、かなりすごい! かっこいい!
手加減なし&効率的な動きをする最強主人公なのもあり、ここ最近で一番気に入っている映画です。風呂敷もすっきり畳んでくれて大満足。2025年には、続編『ザ・コンサルタント2』も公開されています。

ウルフ(画像左)とデイナ(画像右)のペアもめちゃくちゃ良い!
主人公クリスチャン・ウルフは、裏のお仕事による多額の報酬を、現金以外に貴重な品々としても受け取っているんですが、そのコレクションのなかには超有名画家の絵もあるんです!
彼の隠れ家であるトレーラーの壁には、ルノワールの<日傘を持つ女と子ども>が、天井にはジャクソン・ポロックの<Free Form>が飾られています。報酬にルノワールの絵を指定していたこともあり、ルノワールが好きなのかな? と思っていたら、『ザ・コンサルタント2』では壁の絵が変わってしまっていましたが……。贋作だったのかな。贋作送った人は、この世にもういなさそうですが。
ポロックの<Free Form>は、一見ぐちゃぐちゃに塗りたくったかのように見えますが、似た要素が繰り返され全体をかたちづくるフラクタル構造になっているのだそうです。これにより、鑑賞者はこの絵を見ていると落ち着くという効果を得られるのだとか。
(フラクタル構造は、ググると野菜のロマネスコが出てきます。フラクタル構造をあらわすものはどれもちょっと集合体っぽいので、ご注意ください)
ウルフは高機能自閉症で、動揺したときにはソロモン・グランディの歌詞を唱えながら落ち着くというルーティンがあるので、ポロックの絵画も一役買っていたのかもしれません。
なお、ポロックの絵はニューヨーク近代美術館のサイトで見ることができます。
ちなみに、この2枚は、もし価格がつくとしたらとんでもない金額になります。美術館に所蔵されているので実際に販売されることはないでしょうが、もし売ったら一生遊んで暮らせるかも。それくらい、規格外の価値を持つ超有名絵画だということをぜひ覚えておいてください。

カシアス・マーセラス・クーリッジの<ポーカーをする犬>(1903)。タバコの広告だそうです。……イカサマしてる犬いない?
また、上記の絵とは対照的な、アメリカの画家カシアス・マーセラス・クーリッジによる<ポーカーをする犬>という絵画も登場します。デイナの父が好んでいたということですが、この絵は広告に使われた油絵で、いわゆる大量生産品の安っぽい絵画の代名詞的存在。
これはこれでかわいい絵ですし、また違った魅力や価値がありますが、デイナはポロックが好きらしく、父親とは相入れなかったようです。現代アートっぽい抽象画と、わかりやすい広告の絵では、絵に求めるものが違いますもんね。
ちなみに、『ザ・コンサルタント』も『グランド・ブダペスト・ホテル』と同じように窓のフレームに登場人物を収めるという表現が多々あります。2作品続けて観て、演出を見比べてみてもおもしろいはず!
レオナルド・ダ・ヴィンチの作品たち|『ダ・ヴィンチ・コード』
最後は、ゴリゴリに美術品がストーリーに食い込んでくる有名作品をご紹介します。
ラングドンシリーズのひとつである『ダ・ヴィンチ・コード』は、ダン・ブラウンによる同名の小説が原作です。なお、映画のシリーズと原作のシリーズは異なるので、ご注意ください。
ロン・ハワードが監督を務めており、主演はトム・ハンクス! トム・ハンクスが出る映画は、観終わったあと「良い作品を観たな」と思う作品が多いイメージです。『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994)や、『グリーンマイル』(1999)がとくにお気に入り。
さて、『ダ・ヴィンチ・コード』では、タイトルに入っているとおり、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品がたくさん登場します。<モナ・リザ>や<最後の晩餐>のほか、<ウィトルウィウス的人体図>や<岩窟の聖母マリア>など、盛りだくさん。
とくに、<最後の晩餐>について事前知識があると、よりスムーズに謎解きが頭に入ってくるかもしれません。とはいえ、ダ・ヴィンチの作品はどれも謎だらけなので、あくまでもこんな情報もあるよ程度で軽く。

レオナルド・ダ・ヴィンチの<最後の晩餐>(1495年から1498年)。中央のキリストから出発する、一点透視図法で背景が描かれている点も特徴
ざっくり解説すると、この絵はキリストが12人の弟子とともに夕食をとりつつ、「このなかの1人が裏切るわ」と予言をして周りをざわつかせているシーンです。よーく見てみると、左から四番目の耳打ちしている老人のすぐ近くに、袋を握りしめて硬直しているっぽい男性がいます。
こいつが、裏切り者のユダです。キリストを売ったことで、銀貨30枚を得たと言われています。
そして、老人に耳打ちされている、ピンクのショールをかけている人物がヨハネとされていますが、この人は女性だったかもという説があるそうです。それが何よというと、女性であるということは、キリストの子がいるかもしれない!? という話になってきます。
そうして子孫繁栄していくということは、キリストは神の子ではなく人間であるということの証明になってしまうんです。子孫がいたなんてわかった日には、天地がひっくり返るほどの大騒ぎになること間違いなし。
そんな理由もあって、ヨハネ女性説は物議をかもしているというわけです。絵画というより、キリスト教の予備知識になってしまいました(笑)
映画では、実際にルーヴル美術館で撮影がおこなわれているのもあり、とにかく雰囲気がめっちゃ良い! ガラスのピラミッドはとってもきれいだし、いつか行ってみたいな〜。聖地巡礼もできちゃいますね。
今回ご紹介した映画は、共通して美術品が登場しつつも、どれもそれぞれ雰囲気の異なる3本です。
コミカルな雰囲気もあってテンポよく観られる『グランド・ブダペスト・ホテル』。最強主人公が効率よく敵を倒す『ザ・コンサルタント』。しっかりとした謎解きを楽しめる『ダ・ヴィンチ・コード』。どれもおもしろいので、おすすめです。
秋の夜長に、芸術の秋を映画でも楽しんでくださいね!







