演奏にアートと、日頃から芸術にどっぷりと浸かっている筆者utoが、ひとりでゆっくりと楽しめる企画展をご紹介。今回は、絵本の世界を存分に堪能できる体験型の企画展から、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の怪談にインスピレーションを受けた作品が見られる企画展まで、多様な物語を感じられる企画展をピックアップしました。ぜひ楽しんでくださいね。

絵本、怪談、伊勢物語! 物語を感じる企画展5選

11月になりました。秋らしくなったかと思えば急に寒くなってきて、体調管理には注意したい時期ですね。

さて、いよいよ冬も近くなってくると、街もホリデーシーズンに向けてノスタルジックな雰囲気に包まれていくのを見ることができます。

そんなホリデーシーズン目前の街のなかを歩いて、物語を感じられる芸術に触れるのはいかがでしょうか?

今回は、小さい頃に触れる機会の多い“絵本”や、古くから語り継がれる“怪談”、“伊勢物語”など、多様な企画の展示が目白押しです。

また、猫をめぐる絵画史も「歴史という名の物語かも」と思ってチョイスしましたので、猫好きの方もぜひ注目してくださいね!

猫のダヤン“ぼくは運のいいねこ”展 7つの幸運を手にいれよう!‐Akiko Ikeda Art Exhibition-(六本木ミュージアム)

Instagram

www.instagram.com

まずは、11月21日(金)から開催される、かわいい企画展をご紹介します。

年齢や性別を超えて愛されている、人気絵本シリーズの「猫のダヤン」。その最新作『ぼくはうんのいいねこ』出版を記念した、体験型の新しい原画展です。

この企画展で取り扱うテーマは、『良運』や『つき(月)』、『占い』、また『アニバーサリー』など、『ぼくはうんのいいねこ』にちなんだもの。これらのテーマに沿って、「七つのつき」を感じることができます。

絵や立体を楽しむのはもちろん、迷路のような回廊を歩いて冒険し、最後には招きダヤンの肉球から「つき」をもらえます。

とってもかわいいこちらの体験型原画展、ぜひご注目くださいね!

猫のダヤン“ぼくは運のいいねこ”展 7つの幸運を手にいれよう!‐Akiko Ikeda Art Exhibition-
会場:六本木ミュージアム(東京メトロ日比谷線「六本木」駅 3番出口 徒歩7分)
会期:2025年11月21日(金)〜2025年12月1日(月)

怪談—ラフカディオ・ハーンとの邂逅(アイルランドハウス東京)

Instagram

www.instagram.com

日本では小泉八雲という名前としても知られる、ラフカディオ・ハーン

文才に恵まれた彼は、異文化で語り継がれる神話や民話などをわかりやすく再編して語る「再話文学」というジャンルを手がけ、『古事記』を読んでからは、日本に対して格別の興味を抱いていたようです。

そんな小泉八雲ことラフカディオ・ハーンの代表作『怪談』は、今でも読者がいるほど有名な怪奇文学作品集です。日本人の妻から聞いた17の怪談と3つのエッセイからなり、収録されている怪談のなかには、「耳無芳一の話」「むじな」「ろくろ首」「雪女」などなどそうそうたるタイトルが並びます。

その『怪談』を視覚的に表現した作品が見られるのが、こちらの企画展です。

日本とアイルランド、それぞれを拠点として活躍する20名のアーティストによる『怪談』のアート。語り継がれてきた『怪談』の、多様な解釈を見ることができるかもしれません。

怪談—ラフカディオ・ハーンとの邂逅
会場:アイルランドハウス東京(JR中央線「四ツ谷」駅 2番出口 徒歩5分)
会期:2025年11月4日(火)〜2025年11月17日(月)
※事前予約制です。

伊勢物語 美術が映す王朝の恋とうた(根津美術館)

Instagram

www.instagram.com

和歌に優れた在原業平は、当時の天皇の孫であり、平安時代前期に活躍した歌人でもあります。彼の和歌が収められた作品では『古今和歌集』なども有名ですが、『伊勢物語』も業平の和歌が中心となった短編物語集なのです。

業平の恋多き人生がうかがえるこの『伊勢物語』。『源氏物語』では、“絵の優劣を競う遊び”のなかで伊勢物語絵巻が出てくることもあり、『伊勢物語』が、いかに日本の文化や芸術などに影響を与えてきたかがわかります。

今年、2025年は業平の生誕1200年という記念の年。その節目の年に、『伊勢物語』から生み出された書や絵画など、多彩な作品が会場に並びます。

和歌とともに、さまざまな作品を鑑賞して、物語の世界を味わってみてはいかがでしょうか?

伊勢物語 美術が映す王朝の恋とうた
会場:根津美術館(東京メトロ銀座線「表参道」駅 A5出口 徒歩8分)
会期:2025年11月1日(土)〜2025年12月7日(日)

物語る黒線たち――デューラー『三大書物』の木版画(国立西洋美術館)

Instagram

www.instagram.com

こちらは、【2025年10月のアート展】でもご紹介した、国立西洋美術館のオルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語と同時開催となっている企画展です。

アルブレヒト・デューラーは、15世紀末~16世紀初頭にかけて活躍した人物で、ドイツにおいて新たなるルネサンス芸術を発展させました。

デューラーの芸術の中心は、色彩を排した“黒い線”でした。彼はそれを巧みに操って、目に見えるものも見えないものも、表現し描き出そうとしたアーティストだったのです。

作品を複製する手法である版画の可能性や表現の多彩さを見抜いていたデューラーは、それを自らの手で切り開き、それによって印刷された作品たちが今でも多くの人の目にとまることを可能としました。

この小さな企画展では、デューラーが手がけた「三大書物」、『黙示録』『大受難伝』『聖母伝』がすべてお披露目となります。「三大書物」作成の折りに刺激を受けた先駆的な作家の作品も同時に展示されますので、どのような流れでこの書物たちが生み出されていったのかを見ることができますよ。

物語る黒線たち――デューラー『三大書物』の木版画
会場:国立西洋美術館(JR「上野」駅 公園口 徒歩1分)
会期:2025年10月25日(土)〜2026年2月15日(日)

フジタからはじまる猫の絵画史 藤田嗣治と洋画家たちの猫(府中市美術館)

Instagram

www.instagram.com

最後にご紹介するのは、これまたかわいい企画展です。

じつは、洋画が発達した本場ヨーロッパでは、猫の絵はそんなに多くありません。ましてや主役に据えられることは少なかったようです。

しかし、日本の画家となると、猫の絵を描くことが多く、【2025年8月のアート展】でも取り上げたようにひとつの企画展として成立してしまうほどなのです。

日本人が描く洋画における猫人気は相当なもので、熊谷守一の朴訥(ぼくとつ)とした猫、猪熊弦一郎のモダンな猫……。じつに多くの猫の絵があります。

日本人の洋画で猫が多いのはなぜなのかと言えば、パリへ渡った藤田嗣治が、西洋の伝統では主役にはならなかった猫をメインに描いたのが始まりとか。

今回の企画展では、藤田嗣治が洋画に猫を持ち込んだことから始まる、日本洋画独特のジャンルである“猫の絵”を存分に堪能することができますよ。

フジタからはじまる猫の絵画史 藤田嗣治と洋画家たちの猫
会場:府中市美術館(京王線「東府中」駅 北口 徒歩17分)
会期:2025年9月20日(土)〜2025年12月7日(日)

アートで感じる物語!

今回は、物語をテーマに5つの企画展を厳選してご紹介しました。

「猫のダヤン」でおなじみの原画展からはじまり、『怪談』『伊勢物語』、「三大書物」などの物語が中心のものから、猫をめぐる絵画史まで、これらを歴史という名の物語として取り扱ってみましたが、どの企画展もおもしろく見られるものばかりです。

また、美術館に足を運んだら、ミュージアムショップもぜひ覗いてみてください。もしかしたら、物語の一部をお持ち帰りすることができるかもしれません。もし興味が出たら、実際に本を読んでみるのもおもしろいかも?

ぜひ、好奇心を持ってアートに触れてみてくださいね!

ほかの月の企画展が知りたい方はこちら

アート鑑賞の初心者向けガイドはこちら

美術館コーデが知りたい方はこちら

物語に興味が出たら……? 本の紹介もぜひご参考に!

おすすめの新着記事

よく読まれている記事

This article is a sponsored article by
''.