読書をこよなく愛する筆者utoが、自分時間の充実した読書体験をご提案。今回は、夏らしい読書がしたい! という方に向けて、ホラーから夏が舞台の作品まで、幅広くご紹介します。ホラーと言っても幽霊は出ない作品をピックアップしましたので、お化けが怖い方でも大丈夫! また、夏らしい雰囲気を楽しめる作品も、ぜひ読んでみてくださいね。

暑い夏には涼しい部屋で! 夏に読みたい小説5選

8月になりました。雨が降る日があっても気温の高い日が続いていますね。体調には充分に気をつけたいものです。

外の暑さに疲れたら、涼しい室内でゆっくりとひとり時間を取って読書なんていかがですか?

本にもいろいろジャンルがありますが、とくに夏に人気が高まると思われるのがホラーです。とは言っても、ホラーが苦手、とくにお化けが苦手……という方もいらっしゃるかもしれません。

そこで、今回は夏にひんやりを感じられるホラー作品のなかでも、幽霊の類いはほとんど出ないホラーをピックアップ!

また、夏を舞台にした夏らしい小説も取り上げています。ホラーはどうしても苦手……という方は、そちらもチェックしてみてくださいね。

第2回日本ホラー小説大賞受賞『パラサイト・イヴ』 瀬名秀明・角川書店(1995)

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【あらすじ】
永島は生化学者として優秀な人間でしたが、愛する妻・聖美の死が受け入れられず、彼女の臓器から細胞を密かに入手し、ラボにこもってそれを培養し続けました。「Eve1」と名付けたその細胞は驚異的なスピードで増殖し、ついには自らの意思で動き出します。人間の細胞の中には、太古から存在していたとある遺伝子が寄生していたのです……。

こちらは、ホラーとSFが合体したような作品です。ジャンルとしてはバイオホラーになるのでしょうか。バイオホラーと言えばゲーム「バイオハザード」シリーズも似たようなジャンルですが、小説『パラサイト・イヴ』もゲーム化されています。未知の生命体が暴走する恐怖をぜひ!

おすすめポイント

この作品は、ヤンデレものを楽しみたい、という方におすすめです。

ヤンデレというのは、「病んでいる」+「デレている」の造語で、「あまりにも相手を愛しすぎて精神的に不安定な人」のことを言います。

これはホラーじゃないの? と感じるかもしれませんが、この歪んだ愛こそ『パラサイト・イヴ』が抱える恐怖というものの根底にあると思います。

もちろん、未知の生命体が暴走するという恐怖もありますが、個人的にはそれ以上に精神的な恐怖を感じました……。

著者が実際に科学者であることも話題になった本作ですが、本文中にも科学的な用語が多く登場します。そのほとんどは読者に対する説明がありません。ですが不思議と読めてしまいます。それくらい、描写がリアルなのです。

文章はやや硬いです。小説を読み慣れていないと最初はなじめないかもしれませんが、徐々に慣れていくことができますので、歪んだ愛の結末を知りたくなったらぜひ!

読書時間目安:9時間半~10時間半程度(560ページ)
※ページ数は、文庫版でのページ数です。

「日本ホラー小説大賞」って?
角川書店とフジテレビが共同で創設した賞です。恐怖を通じて人間の光と闇を描く新人作家を発掘する目的で、2018年の第25回まで開催され、現在は「横溝正史ミステリ&ホラー大賞」として運営されています。

『パラサイト・イヴ』は、1995年の第2回で受賞しました。ラジオドラマや映画、漫画など多数メディア化され、ゲーム化されたときには舞台がニューヨークとなり、当時最先端の技術で表現された世界観は話題を呼びました。

第4回日本ホラー小説大賞受賞『黒い家』 貴志祐介・角川書店(1997)

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【あらすじ】
生命保険会社で働く若槻は、保険の加入者である菰田家に呼び出され出かけていきます。そしてそこで、菰田の妻の連れ子であった、子どもの死体を発見してしまいます。保険金目当ての殺人ではないか? そう疑った若槻は、保険金の支払いを保留。独自に調査を始めますが、それが悪夢の始まりでした……。

著者が実際に保険会社で働いていた経験が濃厚に反映された作品です。一番恐ろしいのは人間であることを極限まで描ききったこの作品は、ハラハラするというより、まさにぞっとするような恐怖を感じることができますよ。

おすすめポイント

この作品は、ヒトコワものを読みたい、という方におすすめです。

ご紹介した『パラサイト・イヴ』と同じく「日本ホラー小説大賞」の受賞作ですが、方向性は全く異なります。『パラサイト・イブ』が「歪んだ愛」なら、『黒い家』は「煮詰められた欲望」と言うところでしょうか。

まさに"人間が引き起こす悪夢"を読むことができます。お金(この場合は生命保険金)のためなら何でもやる、人間の恐ろしさを存分に味わえます。

しかも、これが著者・貴志祐介の経験から発想を得た作品であることを考えると、本当にぞっとしてしまいます。現実の人間より恐ろしいものはない……と思ってしまいそうです。

文章は、シンプルで読みやすいのも魅力。段落も長すぎるわけではないので、小説に不慣れという方でもそこまで苦戦しないと思います。

読書時間目安:6時間半~8時間程度(400ページ)
※ページ数は、文庫版でのページ数です。

「日本ホラー小説大賞」って?
角川書店とフジテレビが共同で創設した賞です。恐怖を通じて人間の光と闇を描く新人作家を発掘する目的で、2018年の第25回まで開催され、現在は「横溝正史ミステリ&ホラー大賞」として運営されています。

『黒い家』は、1997年の第4回で受賞しました。映画は日本と韓国で制作され、日本版には貴志祐介本人も出演するなど、大きく話題になりました。

第6回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞受賞『夏と花火と私の死体』 乙一・集英社(1996)

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【あらすじ】
夏休みのさなか、村の周辺では子どもが行方不明になる事件が相次いでいました。そんなある日、3人で遊んでいた子どもたちのひとりに悲劇が起こります。残されたふたりは、そのひとりの死体を隠すことに決めます。はたして、死体を隠し通すことができるのでしょうか……?

どちらかと言えば、ライトノベル寄りの作品もご紹介します。上記2作品はページ数もあるし本に慣れていないと読むのが大変そう……という方は、こちらの作品をおすすめします。しかし軽めの恐怖かと言えば……? 実際に読んで確かめてみてくださいね。

おすすめポイント

この作品は、一風変わったホラー小説を読みたい、という方におすすめです。

当時16歳だった著者・乙一によるこちらの作品は、受賞当時も大きく話題になりましたが、今でも乙一作品と言えばという話題に必ずと言っていいほど上がってくる作品だと思います。

季節はまさしく夏。しかも花火大会が迫った夏休みの楽しい雰囲気のなか、それは起こります……。筆者はこれを初めて読んだとき、こんな作品読んだことがない! と衝撃を受けました。

いくつか版があり、現在は小野不由美の小説『屍鬼』の漫画化を手がけた藤崎竜の表紙が最新だと思いますが、どの表紙もとてもいいので、お気に入りの表紙を見つける楽しみもあります。

当時16歳の文章かと疑いたくなるくらい読みやすいです。後の作品に通じるようなどこか軽い語り口は、小説慣れしていない人にとっても受け入れやすいはず。

文庫版には『優子』も収録されています。こちらも怖いので、ぜひ読んでみてくださいね!

読書時間目安:3時間半~4時間半程度(224ページ)
※ページ数は、文庫版でのページ数です。

「ジャンプ小説・ノンフィクション大賞」って?
集英社が主催していた公募新人賞です。2007年に「ジャンプ小説新人賞」にリニューアルされました。

『夏と花火と私の死体』は、1996年の第6回で受賞しました。斬新さが話題を呼び、現在にいたるまで人気を博しています。

第26回日本児童文学者協会新人賞受賞『夏の庭 The Friends』 湯本香樹実・福武書店(1992)

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【あらすじ】
「人が死ぬところを見たい!」……3人の小学生は、親戚の死をきっかけに、「死」というものに興味を持ち始めます。そこで、近所に住む一人暮らしの老人が死ぬところを見てみようと、老人の観察を始めることに。やがて3人とおじいさんは顔見知りになり、そして……。

ホラーは読めない! という方向けに、ここからは夏らしい空気感が味わえる小説をご紹介します。本作の舞台はまさに夏。主人公たち3人の動機は、子どもらしい不謹慎さがあるかもしれません。でも夏の空気のなかで交わされる心温まる物語を、ぜひ楽しんでくださいね!

おすすめポイント

この作品は、感動する名作を読みたい、という方におすすめです。

この作品は、世界十数カ国で翻訳・出版されているほどの名作で、海外の賞も受賞するほど高く評価されています。

その評価に違わず、内容は読んでいてとても感動的です。最初は子どもらしい不謹慎さで老人を観察し始めた子どもたちが、ひょんなことからそのおじいさんと交流しはじめ、変化していく……。

読後はとても爽やかです。「死」を扱うということは「命」を扱うのと似たような話ですが、この作品で読めるのもまさにそう言うところだと思います。

一部独特な表現がありますが、想像力を膨らませてその一文を味わってみてください。もしかしたら、それが心に残る大切な文章になるかもしれませんよ。

読書時間目安:3時間半~4時間程度(218ページ)
※ページ数は、文庫版でのページ数です。

「日本児童文学者協会新人賞」って?
児童文学の創作や、評論、研究などの新人の単行本に対して与えられる賞です。毎年開催されています。前年1月から12月の間に刊行された、新人の第3作目までの単行本が対象となります。

『夏の庭 The Friends』は、1993年の第26回で受賞しました。 児童文芸新人賞、ボストン・グローブ=ホーン・ブック賞、ミルドレッド・バチェルダー賞といった賞も受賞しています。1994年には映画化もされています。

第22回群像新人文学賞受賞『風の歌を聴け』 村上春樹・講談社(1979)

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【あらすじ】
東京の大学生であるは、夏の間ずっと友人のとビールを飲み明かして過ごしていました。すると、バーの洗面所に女性が倒れており、彼女を介抱して家に送り届けます。後日、レコード店で働いているその女性を再会しますが、一方鼠のほうは誰かのことで悩んでいる様子で……。

最後に、大人の夏を体験できる作品をご紹介します。村上春樹のデビュー作ですが、村上春樹らしさはこの作品からも感じることができます。今でも根強いファンのいる作品ですので、春樹作品に触れる足がかりとしてもおすすめですよ。

おすすめポイント

この作品は、はかない物語を読みたい、という方におすすめです。

大学生ふたりと、レコード店の店員の女性、という3人を中心にして物語は進みます。村上春樹の作品のいくつかには共通することのように思いますが、読者に語りかけるような雰囲気があります。

そのため非常に読みやすく、友だちから話を聞いているような気持ちになります。

まず、最初の一文から引き込んでくれるので、村上春樹の作品にいつか挑戦してみたかった! という方には、こういう導入の仕方をしている本作はとくにおすすめです。

手記の形式で書かれているのですが、文章は柔らかながらも物語の真剣さが伝わってくる感じなので、村上春樹どころか小説自体もあんまり読んだことがないという人にとっては、春樹入門にも、小説入門にもとても良いと思います。

読書時間目安:2時間半~3時間程度(168ページ)
※ページ数は、文庫版でのページ数です。

「群像新人文学賞」って?
純文学の公募新人賞のひとつです。2015年からは小説部門のみとなり、評論部門とは独立しました。年1回の開催です。

『風の歌を聴け』は、1979年の第22回で受賞しました。1981年には映画化もされています。

夏の自分時間に、涼しく読書!

今回は、夏にふさわしい小説を5つご紹介しました。

前半2冊は長さもあり、読み応えのあるホラー、後半3冊はほどほどのページ数でのんびり読める作品です。夏といえばなホラーをたしなむのも、夏らしい空気に本を通して触れるのも、とても楽しいですよ。

ぜひ、この夏の1冊を楽しんでみてくださいね!

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