かわいいがいっぱい! 童心に返ることができる企画展5つ
7月になりました。暑い日が続き、もう夏がやってきたという気持ちになりますね。
この連載ではとくに「アートは初めて」という方に向けてさまざまなアート展を紹介してきていますが、美術館に行って額縁に飾られた油絵を見るより、見覚えのある絵本のワンシーンを見るほうが身近に感じられる方もいるかもしれません。
絵本だけではなく、新聞の片隅に連載されてきた漫画や、立体的な作品を自分で創り出すトイなども、子どもから大人にいたるまで気軽に触れられるアートと言えるでしょう。
このように、アートを身近に感じられる機会は意外と多いものなのです。
今回は、そんな子ども心がくすぐられるような、かわいい企画展を5つピックアップしてご紹介します。
レオ・レオーニの絵本づくり展(渋谷ヒカリエホール)
レオ・レオーニの名前は、『スイミー』や『アレクサンダとぜんまいねずみ』などの作品で聞いたことがあるかもしれません。絵本作家の側面が有名ですが、ほかにもグラフィックデザインやアートディレクションなど、その仕事は多岐にわたります。
この企画展では、彼が晩年に制作した絵本に注目し、アートディレクターとして活躍してきたセンスを基礎とした絵本づくりのテクニックに触れることができます。
絵本の原画が見られるほか、映像コンテンツで表現されたレオ・レオーニの世界観を体感できるなど、ここでしか体験できない世界が広がっています。
本企画展は、【2024年12月のアート展】でもご紹介した企画展「レオ・レオーニと仲間たち」の絵本のセクションに焦点を当て新たに構成されているので、すでに行ったことがある方でも楽しめるはず。
レオーニが物語に託したものを紐解き、今でも愛され続けているその理由に触れてみてくださいね。
レオ・レオーニの絵本づくり展
会場:渋谷ヒカリエホール(JR「渋谷」駅 2階連絡通路より直結)
会期:2025年7月5日(土)〜2025年8月27日(水)
トーベとムーミン展~とっておきのものを探しに~(森アーツセンターギャラリー)
2025年は、ムーミンの小説が出版されて80年の記念の年です。そんな本年に、フィンランドにあるヘルシンキ市立美術館(HAM)からの協力を得て開催されるのがこの企画展です。
小説のみならず、絵本や絵画、風刺画などさまざまな方面で活躍したトーベ・ヤンソン。
7月15日(火)から開催の本展では、彼女の歩んだ人生がにじみ出るムーミンシリーズの原画やスケッチのほか、初期に制作された油絵、第二次大戦前後に描かれた風刺画、また愛用品も含めて約300点を展示。
会場内にはムーミンの世界観を体感できる仕掛けや、トーベが制作した壁画なども紹介されています。
ムーミンの魅力や、その世界を支えてきたトーベの想像力を、ぜひご覧くださいね。
トーベとムーミン展~とっておきのものを探しに~
会場:森アーツセンターギャラリー(東京メトロ日比谷線「六本木」駅 1c出口より直結)
会期:2025年7月16日(水)〜2025年9月17日(水)
スヌーピーは、今日も語る。- PEANUTS 75th Anniv. -(Ginza Sony Park)
スヌーピーや、チャーリー・ブラウン。魅力的なキャラクターが数多く登場する『PEANUTS』も、2025年が記念の年です。
そんな『PEANUTS』誕生75周年に、スヌーピーたちが語る「言葉」に注目したイベントが開催されます。
7月16日(水)から始まるこのイベントでは、優しさやユーモアなど、現代において再び注目を集めているスヌーピーたちの「言葉」をテーマに、3つのセクションで展示が構成されています。
『PEANUTS』の言葉にインスピレーションを得た作品や、作中の言葉をセレクトしたオリジナルアイテム、コラボメニューなどを楽しめます。
アートという言葉に敷居が高く感じられる方も、こういう表現の形もあると発見することができるかも。
スヌーピーは、今日も語る。- PEANUTS 75th Anniv. -
会場:Ginza Sony Park(JR「有楽町」駅 中央口 徒歩5分)
会期:2025年7月16日(水)〜2025年8月11日(月)
アンデルセン生誕220年 ちひろと見つめるアンデルセン(ちひろ美術館・東京)
デンマークの作家、ハンス・クリスチャン・アンデルセンも今年が記念の年です。生誕220年・没後150年となるアンデルセンに共感したいわさきちひろの、アンデルセンの物語を描いた作品を見ることができます。
ちひろは、童話集や絵本など、さまざまな媒体でアンデルセンの世界を表現しようと試行錯誤を繰り返しました。
実際にヨーロッパを旅行してリアリティを追究したり、ちひろならではの想像力を駆使して登場人物を描き出したり、柔らかな世界の中にしっかりとアンデルセンの物語を映し出してきたのです。
今回の企画展では、ちひろの作品を通して、アンデルセンの世界を存分に堪能することができます。
会期は7月21日(月)までなので、ぜひ予定を合わせてお出かけしてみてくださいね。
アンデルセン生誕220年 ちひろと見つめるアンデルセン
会場:ちひろ美術館・東京(西武新宿線「上井草」駅 徒歩7分)
会期:2025年5月16日(金)〜2025年7月21日(月)
○△□えほんのせかい+目黒区美術館トイコレクション 同時開催 クルト・ネフ生誕99年(目黒区美術館)
絵本や、積み木。人間はさまざまなもので「遊ぶ」ということをおこなってきました。
今回の企画展では、絵本については及川賢治や竹内繭子の作品が紹介されています。
『まるさんかくぞう』という絵本では、ゾウと三角と丸という、現実ではありえない積み重ね方が描かれています。このように、絵本にはありえないことを軽やかに超えていく力があるのです。
また、目黒区美術館は、1987年の開館より前から、国内外のトイを精力的に収集。1995年から発足させた「トイコレクションボランティアチーム」が存在するなど、トイをコミュニケーション・ツールとして捉えた積極的な取り組みをおこなっています。
今回は、実際にトイで遊ぶことができるコーナーも設置されており、トイがいかに想像力を刺激してくれるものなのかを実感することができます。
同時開催となる「クルト・ネフ生誕99年」展では、スイスのトイメーカー・ネフ社を創設した、クルト・ネフを紹介しています。こちらもぜひご注目ください。
○△□えほんのせかい+目黒区美術館トイコレクション 同時開催 クルト・ネフ生誕99年
会場:目黒区美術館(JR山手線「目黒」駅 正面口 徒歩10分)
会期:2025年7月5日(土)〜2025年8月24日(日)
夏の初めに、「かわいい」アート!
今回は、子ども心くすぐる「かわいい」企画展を5つ厳選してご紹介しました。
学問のようにアートを考えなくちゃ! と身構えず、楽しみながらアートに触れていくことも、アート体験のひとつです。
今年はさまざまなアーティストの記念イヤーが重なった年でもあります。「かわいい!」を入り口にして、ぜひいろいろなアートを楽しんでみてくださいね。