さまざまな「変わり目」を感じる、おすすめの企画展をご紹介
10月になりました。少しずつ秋めいてきて、過ごしやすさとともに外出への意欲も高まってくる季節です。
今回は、激動の時代を生きたアーティストたちの作品が見られる企画展から、まさにアート史の変わり目となったモネの企画展まで、「変わり目」というときにぴったりの企画展をご紹介します。
移ろう季節とともに、美術の世界でさまざまな側面を行き来した作品たちを見てみませんか。
アート気分を高めながら、ちょっとそこまで。アートも歴史もこの季節も、ぜひ楽しんでくださいね。
ベル・エポック 美しき時代パリに集った芸術家たち(パナソニック汐留美術館)
「ベル・エポック」とは、1890年ごろから1914年ごろまでの時期に、パリを中心として展開された華やかな文化や時代を指します。「美しき時代」や、「古き良き時代」をあらわすフランス語で、伝統と革新が融合した魅力的な時代とされています。
19世紀末から第一次世界大戦が勃発するまでの約25年というこのベル・エポックから、1930年代までの、美術や工芸、音楽、文学、科学技術にいたるまで、おおくのジャンルで展開された「美しき時代」が紹介されています。
フランスの「ワイズマン&マイケルコレクション」と呼ばれるコレクションの中から、当時のパリと人々を描いた作品たちが初来日します。また、国内で所蔵している作品たちからも貴重な作品が出品されます。
絵画にとどまらず、当時のファッションも展示され、さらにエミール・ガレやルネ・ラリックの工芸作品、シャルル・ボードレールやポール・ヴェルレーヌの初版本など、この時代らしい貴重な作品を見ることができます。
ベル・エポックのパリがどのようであったのかを体験できる企画展、ぜひご注目くださいね。
ベル・エポック 美しき時代パリに集った芸術家たち
会場:パナソニック汐留美術館(JR「新橋」駅 汐留口・銀座口・汐留地下改札 徒歩約8分)
会期:2024年10月5日(土)~2024年12月15日(日)
市制施行70周年記念 アルフォンス・ミュシャ ふたつの世界(府中市美術館)
「アール・ヌーヴォー(新しい芸術)の旗手」とも呼ばれた、アール・ヌーヴォーを代表する画家アルフォンス・ミュシャ。ポスターをはじめとして、装飾パネルやカレンダーまで、多くの作品を手がけました。
ベル・エポックとも重なる時代に活躍したミュシャは、星や宝石、植物を用いた曲線と美しい色使いが特徴的な画家です。それと同時に、壮大で重厚な油絵も制作しました。
この企画展は、デザイナーと画家、両面の顔を持つミュシャの、「ミュシャらしさ」の表現、造形力に迫ります。
ミュシャの代表作である連作「四季」から、大型の油彩作品も見ることができるこの企画展、ミュシャの世界にどっぷり浸かってみてくださいね。
市制施行70周年記念 アルフォンス・ミュシャ ふたつの世界
会場:府中市美術館(京王線「府中」駅からちゅうバス(多磨町行き)「府中市美術館」(1) 下車すぐ)
会期:2024年9月21日(土)~2024年12月1日(日)
両大戦間のモダニズム:1918-1939 煌めきと戸惑いの時代(町田市立国際版画美術館)
第一次世界大戦と第二次世界大戦に挟まれた、約20年間。このモダニズムの時期を中心に、時代を版画で表現したアーティストたちの作品、約230点が展示されます。
この企画展では、両大戦間の前にあたる19世紀末から、1939年の第二次世界大戦勃発によるアーティストの変容、そして戦後どのようなアートが展開されたかにいたるまでを紹介します。
パリのファッション誌の彩り豊かなポショワール(=ステンシル。亜鉛や銅版を切り抜いた型に刷毛やスプレーで色をつけた西洋版画のひとつ)、街並みを行く人々の生活を表現したドイツの版画、シュルレアリストの銅版画など、激動の時代に制作された作品を見ることができます。
パリ・モード(パリでの「モード」=流行のこと。主にファッション用語)、挿絵本文化、シュルレアリスム。文化が大きく花開いた時代でありながら、大戦にはさまれた時代でもあるこの時期に、アーティストたちがどのようであったのかをぜひご覧くださいね。
両大戦間のモダニズム:1918-1939 煌めきと戸惑いの時代
会場:町田市立国際版画美術館(小田急線「町田」駅 徒歩約15分)
会期:2024年9月14日(土)~2024年12月1日(日)
マルセル・デュシャンを考える(カスヤの森現代美術館)
大量生産された既製品や日用品などをアートのオブジェとしてあつかう「レディ・メイド」をつくり出したマルセル・デュシャン。これまでの時代のように、絵画や彫刻などのかたちをとらずとも、制作者自身の哲学やコンセプト、その制作過程にいたるまでを単独で芸術とみなす、「概念としての芸術」を唱えました。
この企画展では、作品を見るだけではなく、そこに残されたさまざまな謎や意図を再考するものとなっています。
デュシャン自身の作品のほか、現代美術家の若江漢字がデュシャン作品を解釈して制作した作品なども展示されます。
これまでに考えられなかったような作品や概念を提示したデュシャン。その思想にふれる企画展に、ぜひ足を運んでみてくださいね。
マルセル・デュシャンを考える
会場:カスヤの森現代美術館(JR横須賀線「衣笠」駅 徒歩15分)
会期:2024年9月5日(木)~2024年11月10日(日)
モネ 睡蓮のとき(国立西洋美術館)
最後は、アートの歴史を変えたと言っても過言ではない、印象派の創始者クロード・モネの企画展をご紹介します。
自然や自然の風景に対して、自分が認識した感覚……光や色彩といった感覚を、感情豊かに表現するモネの絵画は、それまでの絵画の伝統技法やテーマから離れ、描かれる対象をより感覚的で感情豊かに描きました。
これらのモネ芸術のあり方は、その後のモダニズムの発展に影響をおよぼし、まさにアートのあり方を変えたのです。
そんな「光の画家」モネの晩年の作品を中心に、日本初公開となる7点をも含み、約50点が展示されます。
その作品の中でも、晩年の制作活動の中でももっとも重要な位置を占めた「睡蓮」に関連する20点以上の作品が展示され、かつてない規模で「睡蓮」が見られる企画展となっています。
ベル・エポックの終わり、1914年からモネが制作し始めた「大装飾画」と呼ばれる大型の「睡蓮」に囲まれることができます。大注目のこの企画展、ぜひモネの睡蓮を体験してみてくださいね。
モネ 睡蓮のとき
会場:国立西洋美術館(JR「上野」駅 公園口出口 徒歩1分)
会期:2024年10月5日(土)~2025年2月11日(祝)
季節の変わり目にアートを感じて
今回は、激動の時代に生きたアーティストたちの、時代やあり方に触れられる企画展をご紹介しました。
過ごしやすくなりお出かけの気分も高まる10月、ぜひアートを体感しに美術館へ足を運んでみてくださいね。