演奏にアートと、日頃から芸術にどっぷりと浸かっている筆者utoが、ひとりでゆっくりと楽しめる企画展をご紹介。今回は、昔の画家の絵が現代に至るまでどう繋がっていったかや、現在の日本の文化である漫画やアニメとどう繋がっているのかなど、さまざまな見方ができる企画展を厳選! ゴッホや葛飾北斎などの有名どころも取り上げているので、ぜひ挑戦してみてください。

多様な角度から楽しむ! いろいろな視点から現代への繋がりが見て取れる企画展5選

9月になりました。いよいよ秋らしくなってきて日差しも少し和らいでくる時期ですが、まだまだ暑い日々が続きます。体調には引き続き気をつけていきたいものですね。

さて、秋といえば芸術の秋とも言いますが、この機会に美術館に足を運んでみるのはいかがでしょうか?

今回は、数多く開催されている企画展のなかでも、画家本人や、現在の私たちとのつながりなどにフォーカスしている企画展をご紹介します。

芸術と聞くと、いろいろ知識が必要なのでは? 感性が鋭くないとわからないのでは? などなど、心配になってしまうもの。ですが、画家の人間味あふれる人柄から入って、絵画に親しみを持って見てみるのもいいものです。

また、日本の漫画やアニメの表現とも関係があると言われると、これもちょっと興味がわいてきませんか?

ぜひ、いろいろな視点から、絵を眺めてみてくださいね。

ゴッホ・インパクト-生成する情熱(ポーラ美術館)

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まずは、その劇的な生涯とともに、独自の様式で今もなお絶大な人気を博しているフィンセント・ファン・ゴッホの企画展をご紹介します。

ポーラ美術館におけるゴッホをテーマとした企画展は、じつは今回が初。

ゴッホは、わずか37歳という若さでこの世を去りましたが、絵画制作にかけていた期間は10年あまり、しかし総作品数は2000点を超えます。うち、半数に近い800点を超える油絵は、彼が生涯を閉じるまでの2年間に制作されました。

個性的、そして何よりも情熱的な一生は、うねるような筆致と鮮やかな色使いを生み出し、その後の世代にまでも強いインパクトを与え続けてきました。

ゴッホから受けたこのような情熱を、のちの画家たちはどのように表現していったのか? その歴史を見るとともに、私たちにとってのゴッホの価値を再考します。

ゴッホ・インパクト-生成する情熱
会場:ポーラ美術館(箱根登山鉄道「強羅」駅 より 無料送迎バス)
会期:2025年5月31日(土)〜2025年11月30日(日)

ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢(東京都美術館)

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別の視点から、同じゴッホを眺めてみるのはいかがでしょうか?

先ほどの企画展は、ゴッホ自身の生涯やのちの画家たちからゴッホを見ていくことができますが、こちらの企画展は「家族」という視点からゴッホを掘り下げていきます。

1890年7月に亡くなったゴッホの絵画は、その大部分を弟のテオとその妻ヨーが保管していました。テオは、兄のあとを追うようにゴッホの死から約半年後の1891年1月に亡くなりましたが、遺された妻のヨーはゴッホのコレクションを管理し続けました。

そして、そのコレクションは、テオとヨーの息子フィンセント・ウィレムに引き継がれます。作品を散逸させないため財団まで立ち上げた彼は、美術館の設立にも力を尽くしました。
(ちなみに、息子に兄と同じ名前をつけたいというテオの希望で、フィンセント・ウィレムになったのだとか!)

ゴッホは生前「絵によって人々を癒やしたいのだ」という言葉を遺していました。そして、100年後も自分の絵が人々の前にあって、見られることを期待していたのです。

その夢は、ゴッホの家族によって引き継がれ、現在に至っています。ゴッホとその夢を支えた家族とのつながり、見に行ってみませんか。

ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢
会場:東京都美術館(JR「上野」駅 公園改札 徒歩7分)
会期:2025年9月12日(金)〜2025年12月21日(日)

館蔵品展 狩野派の中の人 絵師たちのエピソード(板橋区立美術館)

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こちらは打って変わって、室町時代後期〜江戸時代末期の約400年ものあいだ中心的だった日本絵画史上最大の画派「狩野派」の人々をユーモラスに紹介してくれる企画展です。

天才伝説の持ち主、お腹の弱い人、親子同士、ライバル同士……などなど、江戸時代の狩野派の面々は個性的!? この企画展では、絵師の個性や関係性から、狩野派の作品を楽しく紹介してくれます。

江戸時代の狩野派は、権力者の御用絵師でもっとも格式が高いとされる奥絵師、奥絵師をサポートする表絵師、幕府や大名には仕えずに民間で活躍していた町狩野など、多様な人々が属しています。

多くの人々が活躍していた一方、現代の人々からは、その数の多さゆえに名前も画風も、どの時期に活動していたのかも把握するのが難しくなっています。奥絵師ひとつをとっても4つの家系に分かれているなど、狩野派のなかでも枝分かれがあり、すべてを知り尽くすのは大変です。

そこで、この企画展では、江戸時代の狩野派に親しみが持てるように、各絵師のエピソードなどとともに絵を楽しめる構成になっていますよ。

狩野派の歴史に興味がある人も、お腹が弱い絵師に興味が出た人も!? ぜひ足を運んでみてくださいね。

館蔵品展 狩野派の中の人 絵師たちのエピソード
会場:板橋区立美術館(都営三田線「西高島平」駅 南口 徒歩15分)
会期:2025年8月23日(土)〜2025年9月28日(日)

HOKUSAI-ぜんぶ、北斎のしわざでした。展(CREATIVE MUSEUM TOKYO)

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集中線や効果線、ギャグの描写、アニメ風の表現……。現在の日本を代表する文化であるエンターテインメント分野の「漫画」や「アニメ」。その原点が北斎だった!? という視点から、北斎の絵画を紹介してくれる企画展です。

葛飾北斎、その生涯は90年。総作品数は30,000点あまり、93回も引っ越しをし、30を超える画号を持つ、自らを「画狂人」と呼んだ自由奔放な人物です。

そんな北斎ですが、彼が表現したのはかの有名な〈富嶽三十六景〉〈神奈川沖浪裏〉の大波だけではありません。

〈北斎漫画〉という、多彩なテーマで絵を描いた絵本(今で言う画集。江戸時代では、絵を主体として出版された本のことでした)は、北斎の個性的な画風を広めるのに貢献しました。

この企画展は、この〈北斎漫画〉を1,700冊所蔵している浦上満氏(浦上蒼穹堂)による浦上コレクションからの〈北斎漫画〉全15冊を筆頭に、読本(よみほん)の挿絵、晩年の重要作品〈富嶽百景〉、日本初公開の作品など、300点を超える作品が並びます。

現代の「漫画」や「アニメ」と北斎との共通点、見てみませんか?

HOKUSAI-ぜんぶ、北斎のしわざでした。展
会場:CREATIVE MUSEUM TOKYO(東京メトロ銀座線「京橋」駅 6番出口 徒歩3分)
会期:2025年9月13日(土)〜2025年11月30日(日)

ドーミエ、どう見える?―19世紀フランスの社会諷刺(町田市立国際版画美術館)

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最後は、フランスの風刺画家・オノレ・ドーミエの絵画から、当時のフランスがどう見えるのか、そして現代の社会がドーミエにはどう見えるのか? をテーマとした企画展をご紹介します。

ミレーと同じ時期、同じフランスで活躍していたドーミエ。ミレーは農村や農民をよく描いていましたが、ドーミエは都会に生きる貧しい庶民をよく描きました。風刺画を多く描くとともに、その油絵はロートレックゴッホにも影響を及ぼしたとか。

そんなドーミエの風刺画家としての一面にフォーカスし、現代社会にも通じるテーマを考えます。

ドーミエによるリトグラフ(版画の一種。石版や金属板に描いたものを印刷する技術のこと)を約50点展示。レジャーの風景や、ジェンダーの違いによる差別意識、戦争にいたるまで、ドーミエが描いた社会のありようを見ることで、200年後の私たちの社会も見つめ直します。

当時の王政を風刺したために罰金刑にもなってしまったこともある、ドーミエの鋭い風刺画を、ぜひ見に行ってみてくださいね。

ドーミエ、どう見える?―19世紀フランスの社会諷刺
会場:町田市立国際版画美術館(JR横浜線「町田」駅 ターミナル口 徒歩12分)
会期:2025年6月20日(金)〜2025年9月21日(日)

アートへの入り口はひとつじゃない!

今回は、いろいろな視点から見ることで現代との繋がりが分かる企画展を、5つ厳選してご紹介しました。

人柄に関心を持ってから鑑賞したり、現代とのつながりに興味を抱いて鑑賞したり、アートとの向き合い方は多様でいいものなのです。

今回ご紹介した企画展以外にも、さまざまな切り口で展示をおこなっているアートスペースは数多くあります。

とくに、現代美術になるとアーティスト本人がSNSを開設している場合があり、アーティストを身近に感じられる機会も多いですよ。フォローしてみて、その人柄や考え方に共感してから個展に足を運んでみるのもおすすめです!

ぜひ、いろいろな見方でアートを鑑賞してみてくださいね!

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