演奏にアートと、日頃から芸術にどっぷりと浸かっている筆者utoが、ひとりでゆっくりと楽しめる企画展をご紹介。今回は、番外編として現代アートに焦点を当ててピックアップ。カラフルなイラスト風の作風で表現される“すべての人であり、だれでもない”こどもたちを見ることができる個展「現在地」、年に一度の現代アートのイベント「アートウィーク東京」をご紹介します。どちらも大注目のイベントなので、ぜひ足を運んでみてくださいね。

現代アートという、「いま」を感じるアート

「現代アート」とは、広くは20世紀後半から現代までに展開されている、「いま」を表現したアートです。

社会的・文化的な問題点や、これまでの美術や社会への批判を感じさせる作品が多く、手法やアイデアが常に変化をし続けているジャンルとも言えます。

画像: アートウィーク東京で見ることのできる作品例:束芋《あいたいせいじょせい》2015年

アートウィーク東京で見ることのできる作品例:束芋《あいたいせいじょせい》2015年

多種多様なメディアを用いたり、実験的な表現やアイデアを追い求める現代アート。その斬新なあり方やテーマの多様性から、詳細な知識や感性を学んでいないと理解が難しそう……と敷居が高く感じている方もいるのでは?

今回は、そんな方にもおすすめな、どんな方でも楽しめるおすすめの現代アートの個展とイベントをご紹介します。

「いま」を表現した現代アートに触れることは、「いま」を感じる特別な体験です。

そんな「いま」を表現してくれる、ひとりの画家と、年に一度のアートイベント。ぜひ足を運んでみてくださいね。

下田 ひかり|Hikari Shimoda 「現在地」(MEGUMI OGITA GALLERY)

画像: 《God Is Dead, But...》2024年

《God Is Dead, But...》2024年

下田ひかりは、現代の問題点、そして自身の感情までをも擬人化して表現した作品で知られています。一見ポップでカラフルなイラストで表現される作品たちは、見る人を惹きつけますが、同時に人間が持つ複雑な感情も想起させます。

かわいさと恐怖、または孤独、生と死──。二律背反とも言えるイメージの同居は、人間にさまざまな感情のあり方や多面性があることを訴えかけ、見る人ひとりひとりに自分の「物語」があることを思い出させてくれます。

この個展は、そんな下田ひかり作品を見ることができる新作絵画展です。

下田ひかりの作品といえば、左右で描き方の違うひとみ、そして鑑賞者と視線の合わない「すべての人であり、だれでもない」こどもたちのポートレート。カラフルなのにその色彩が反転するのではという不思議な感覚のなかで見る、ポジティブな要素を組み合わせて作られた無表情のこども。

画像: 《人類愛》2024年

《人類愛》2024年

そんな下田ひかりの「感情の器」であるこどものポートレートは、彼女の代表的なモチーフです。今回の個展に向けて制作された作品たちは、希望と悟り、それに向かって進む画家の覚悟というものを感じることができます。

筆者がぜひ行きたい、そしておすすめしたいと思うポイントは、作品によって表現された混迷や不確かさが、見る人の「自分を見つめる」という行為を喚起してくれる点です。

そうして見つめた先にある自分は、自分でも驚くほど色彩豊かな物語を持っています。それは誰に何を言われようとも、大きな意味があると、下田ひかりの作品は教えてくれるのです。

現代アートは鑑賞に難しさを感じてしまうかもしれませんが、アートを見るということは、アートを見ている自分を見るということでもあります。

まさに自分と出会うきっかけになるこの個展、ぜひご注目くださいね。

下田 ひかり|Hikari Shimoda 現在地
会場:MEGUMI OGITA GALLERY(東京メトロ日比谷線「東銀座」駅 3番出口 徒歩3分)
会期:2024年10月4日(金)〜2024年10月26日(土)

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