見終わったあとモヤモヤする映画が大好きな筆者が語る映画連載【シネマ・グレイ】。今回は、育児放棄された子供とゲイカップルの愛情を描いた衝撃作『チョコレートドーナツ』(2012)を紹介します!(文:紺野ミク)

《自己紹介》
『singles』をご覧の皆さんこんにちは!モデルをしながらライターとして記事を書いている「紺野ミク」です。こちらでは映画大好きな私がオススメする作品を紹介しています。好きなジャンルは考察系、クソ映画、鬱映画など見終わった後にモヤっとする映画が大好きです(笑)独断と偏見で楽しくツッコミながら紹介していくのでよろしくお願いします☆

実話をもとに作られた感動作『チョコレートドーナツ』

(C)2012 FAMLEEFILM, LLC

1970年代のアメリカ・ブルックリンで実際にあった「障がい(ダウン症)を持ち母親に育児放棄された子どもと、家族のように過ごすゲイの話」をもとに制作された『チョコレートドーナツ』(2012)。

本作は、モデルになった男性と同じアパートに住んでいたジョージ・アーサー・ブルームによってシナリオ化されました。2011年、トラヴィス・ファイン監督はこのシナリオを読み、崩れ落ちて涙を流したと言います。

トラヴィス自身はゲイではないものの、愛するわが子を奪われる苦しみに普遍性を感じ、出会うこと、求めること、守ること、愛すること……ゲイもダウン症も関係なく、魂のレベルで求め合う愛はすべての人の心に届くと確信したそうです。

そして、『チョコレートドーナツ』は全米中の映画祭で上映され、観客を感動の渦に巻き込み、トライベッカやシアトル、サンダンスほか各地で観客賞を総ナメにするという快挙を成し遂げました。

世界の片隅で家族になった3人

1979年、カリフォルニア。シンガーを夢見ながらもショーダンサーで日銭を稼ぐ主人公ルディは、ある日、ゲイであることを隠して生きる弁護士のポールと出会い、たちまち恋に落ちます。

(C)2012 FAMLEEFILM, LLC

そんな折、ルディはアパートの隣の部屋に住むダウン症の少年マルコが、危険薬物を所持し逮捕された母親のせいで、施設へと隔離された事実を知ります。

繰り返されるマルコの脱走に心を痛めたルディは、マルコを引き取り3人で暮らそうとポールに提案。

同性愛の恋人同士であることを伏せ、法的手続きによりマルコの監護者となった二人は、本当の両親のようにマルコに愛情を注ぎ、3人で幸せな日々を送っていました。

(C)2012 FAMLEEFILM, LLC

しかし、幸福な時間は長くは続きませんでした……。

ゲイであるがゆえに法と好奇の目に晒され、ルディとポールはマルコと引き離されてしまいます。
血は繋がらなくても、法が許さなくても、奇跡的に出会い深い愛情で結ばれた3人はどうなってしまうのか……。

同性愛への差別と偏見

同性愛に対して差別と偏見が強く根付いていた1970年代のアメリカでの実話をもとに描かれた本作。

当時は、今よりもセクシュアルマイノリティや障がいを持っている人に厳しい世の中であったことが作品を観るとよく分かります。

ポールがゲイであることをひた隠しにしているのも、仕事をクビになることや、社会的立場に影響が出るとわかっているからです。もし現代で、ゲイであるからといって会社をクビになったらすぐにSNS等で広まり大炎上しそうですよね……。

(C)2012 FAMLEEFILM, LLC

3人で幸せに暮らしていましたが、ルディとポールが恋人だと分かると周りの態度は一変。
裁判で検事は「性的趣向が子供に悪影響を及ぼすことを否定できない」と言い、マルコの保護者として2人は適任ではないと判断するのです。

これが男女の恋人であったなら問題はなかったのか?

両親が揃っていても幸せではない子供はたくさんいます。一番大切なのは、子供が幸せかどうかであるべきではないでしょうか……。

(C)2012 FAMLEEFILM, LLC

マルコは、3人での生活にこの上ない幸せを感じていました。しかし、本人の意思よりも血の繋がりや世間の意見が優先されてしまう理不尽な現実に2人は絶望します。

正義とは? 法で守られなければいけない本当に大切なものは一体何なのか、を考えさせられます……。

キャストによる圧倒的な演技と歌唱シーンに注目!

舞台「キャバレー」での演技によりトニー賞を受賞、テレビドラマ「グッド・ワイフ」で人気を不動のものにしたアラン・カミングがルディ役を大熱演。

(C)2012 FAMLEEFILM, LLC

本作の演技によりいくつもの主演男優賞を受賞、彼がボブ・ディランの名曲「I Shall Be Released」を歌うシーンは本当に圧巻で心を揺さぶられます……。

そして、マルコを演じたのはアイザック・レイヴァ。実際にダウン症である彼は俳優になる夢を持ち、本作でその才能を見出されました。

(C)2012 FAMLEEFILM, LLC

ダウン症ということで差別されてきたことがあるアイザックだからこそ出来る、繊細かつシリアスな演技が光ります。

また、全米ディスコチャート1位を記録したフランス・ジョリの「Come To Me」のほか、BGMとして流れるT.REXなど1970年代という時代を映し出す楽曲が映画に彩りを添えています。
2012年度のアカデミー賞®オリジナル楽曲賞候補にもなったルーファス・ウェインライトによる切ないエンディング曲「Metaphorical Blanket」にも注目です!

全米が絶賛した感動作! と謳いながらも、鬱映画としてランクインする『チョコレートドーナツ』

果たしてそれはなぜなのか?
ぜひご自身の目で確かめて下さい……。

『チョコレートドーナツ』、週末のお供にいかがですか?

【チョコレートドーナツ 予告動画】

画像: - YouTube youtu.be

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画像: 全米絶賛! 実話から生まれた魂を震わす衝撃作『チョコレートドーナツ』【シネマ・グレイ File.053】

紺野ミク|Miku Konno

モデル・女優などで活躍中の他、2017年からはライターとしても活動。連載を持ちコラム執筆をするなど多方面で活躍中。お酒・映画鑑賞が大好き。

InstagramXYoutubeにて活動をcheck。

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