見終わったあとモヤモヤする映画が大好きな筆者が語る映画連載【シネマ・グレイ】。今回は、名優アンソニー・ホプキンスが認知症の父親役を演じた新感覚ムービー『ファーザー』(2020)を紹介します!(文:紺野ミク)

《自己紹介》
『singles』をご覧の皆さんこんにちは!モデルをしながらライターとして記事を書いている「紺野ミク」です。こちらでは映画大好きな私がオススメする作品を紹介しています。好きなジャンルは考察系、クソ映画、鬱映画など見終わった後にモヤっとする映画が大好きです(笑)独断と偏見で楽しくツッコミながら紹介していくのでよろしくお願いします☆

ゴールデン・グローブ賞4部門ノミネート!『ファーザー』

(C)NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION TRADEMARK FATHER LIMITED F COMME FILM CINE-@ ORANGE STUDIO 2020

名優アンソニー・ホプキンスが認知症の父親役を演じ、『羊たちの沈黙』(1991)以来、2度目のアカデミー主演男優賞を受賞した『ファーザー』(2020)。

第78回ゴールデン・グローブ賞4部門ノミネート、第93回アカデミー賞では作品賞、主演男優賞、助演女優賞など計6部門にノミネートし、アンソニー・ホプキンスは主演男優賞のほか、脚色賞を受賞しました。

本作は、日本を含め世界30カ国以上で上演された舞台「Le Pere 父」をもとに、老いによる喪失と親子の揺れる絆を、記憶と時間が混迷していく父親の視点で映し出した作品です。

 

さて!! さっそくひとつ言わせてください!(笑)

今回紹介する『ファーザー』、メインビジュアルや映画の告知などでとにかく推されていたのが、

“最高の感動作!!”

という謳い文句。

ふーん。認知症の父と娘の話ならそりゃ感動ものか。と、何の気なしに観た私の感想は……

  

「えええ! どこが感動!? 下手なホラーよりも怖いじゃん!!」

です。(笑)
※あくまで個人の感想です。

ちょっと詳しく紹介していきますが、決して親子の感動的な映画を観たいときに観る映画ではないということを覚悟してください!

認知症であるアンソニーが見る世界

物語はロンドンで独り暮らしを送る81歳のアンソニーのもとを、娘のアンが訪れるところから始まります。

アンソニーは認知症の進行により1人で生活を送るのが難しくなっていたため、介護人に面倒を見てもらっていたのですが、プライドが高くワガママなアンソニーの態度で介護人が辞めてしまったのです。

新しい介護人を見つけるため父のもとに来たアンから「新しい恋人とパリで暮らすことになった」と告げられると、アンソニーはひどく動揺します。

ある日、アンソニーがキッチンで紅茶を入れていると、見知らぬ男がリビングに座っていました。彼は自分がアンの夫であり、結婚して10年以上になると言うのです!

混乱するアンソニーでしたが、何とか思い出そうとします。するとそこに買い物からアンが帰ってくるのですが、それはいつものアンではない別人なのです。

見知らぬ男に見知らぬ娘。何がどうなっているのか分からなくなるアンソニー。

新しくやってきた介護人のローラとも距離を縮めますが、「認知症」という病気は無常にもアンソニーの記憶をどんどん曖昧に、そして不確かな日々に変えていくのです……。

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果たしてアンソニーが見る世界はどこまでが現実なのでしょうか?

ホラーよりも恐ろしい演出と視点

冒頭でもお伝えした通り、『ファーザー』は決して感動作ではないと私は思っています。

(C)NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION TRADEMARK FATHER LIMITED F COMME FILM CINE-@ ORANGE STUDIO 2020

なぜならこの作品は、認知症であるアンソニーの視点を描いているので、どんな理不尽なことも辛いことも、それはすべてアンソニーがそのまま見ている世界なのです。

作中では突然時間軸がおかしくなり、同じシーンや同じセリフが何度も繰り返されます。登場人物の顔もコロコロ変わり、観ている私たちはわけが分からなくなります。

もしサスペンス映画ならそこに伏線回収や何らかのヒントが隠されていますが、この作品は、
「認知症という病気を視聴者に疑似体験させる作品」

なのです。

私たちの感じる違和感はそのままアンソニーの感情であり、そして認知症がゆえにそれを毎日繰り返す途方もない時間なのです。

「認知症」という病気への理解

私もそうですが、認知症と聞くと思い浮かぶ主な症状は「忘れる」だと思うんですよ。人の顔や名前はもちろん、ご飯を食べたことや物の置き場所などの記憶障害です。

(C)NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION TRADEMARK FATHER LIMITED F COMME FILM CINE-@ ORANGE STUDIO 2020

だけど『ファーザー』でのアンソニーは、今いる場所がまったく別の場所に見えていたり、認知症の世界のなかの自分が認知症だったりとかなり複雑な世界を生きています。

これが実際の認知症患者の方の世界なのかは分からないですが、そうだとしたら私たちの理解では到底追いつけない世界を過ごしていることになります。

もし自分の家族が認知症になったら? いや、自分がなってしまったらどんなに恐ろしいことだろう!

もちろん記憶を無くすアンソニーの姿に切なくなりますが、“かわいそう”、“悲しい”よりも伝えたいのはもっと深いところなんじゃないかなと。鬱映画の見過ぎで深読みしすぎなだけかもしれませんが……(笑)

ちなみに私は、デートでこの映画を観に行った相手がエンドロールで「めっちゃ感動した〜」なんて浅い感想を言ってきた日には、あまりの感性の違いに現地解散するかもしれません。(ひどすぎる)

いや、でもそれくらい私はこの作品を観て感動よりもモヤっとしたし考察が止まらなかったので、ぜひ皆さんがどう感じるのか知りたいです♪(笑)

週末のお供に『ファーザー』、いかがですか?

【ファーザー 予告動画】

※予告動画もすっごい感動演出ですが、もはや監督の巧みな罠だと思っています。

画像: - YouTube youtu.be

- YouTube

youtu.be
画像: これは感動作? それとも……? 認知症の父親が見る世界を描いたかつてない映像体験『ファーザー』【シネマ・グレイ File.029】

紺野ミク|Miku Konno

モデル・女優などで活躍中の他、2017年からはライターとしても活動。連載を持ちコラム執筆をするなど多方面で活躍中。お酒・映画鑑賞が大好き。

InstagramXYoutubeにて活動をcheck。

前回はこちら

『ファーザー』ではなく『マザー』はこちら

※物語に関連性はありません

シリーズものを紹介する連載はこちら!

アンソニー・ホプキンスといえば、レクター博士!

劇場で観られるかも? ミニシアター情報もあわせてどうぞ!

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