《自己紹介》
『singles』をご覧の皆さんこんにちは!モデルをしながらライターとして記事を書いている「紺野ミク」です。こちらでは映画大好きな私がオススメする作品を紹介しています。好きなジャンルは考察系、クソ映画、鬱映画など見終わった後にモヤっとする映画が大好きです(笑)独断と偏見で楽しくツッコミながら紹介していくのでよろしくお願いします☆
ブラムハウスが放つ問題作『ソフト/クワイエット』
ホラー&スリラー界のトップブランド、ブラムハウスが放つ衝撃作『ソフト/クワイエット』(2022)。
『ゲット・アウト』(2017)のジェイソン・ブラムが製作総指揮を手がけ、これが長編デビュー作となるベス・デ・アラウージョがオリジナル脚本・監督を務めた本作は、大胆な撮影手法とセンセーショナルなテーマを融合させた問題作で、なんと92分の全編ワンショットとなっています。
わずか4日間のリハーサルで撮られたとは信じがたい完成度を誇る本作は、SXSW2022でのプレミア上映で大反響を呼んだのち、映画批評サイトの「Rotten Tomatoes」で86%、「Metacritic」で82%の高評価を獲得。
アメリカで社会問題化しているヘイトクライム(憎悪犯罪)の狂気をえぐり出し、このうえなくリアルな没入感と息づまる緊迫感に圧倒される体感型クライム・スリラーです。
あらすじ
郊外の幼稚園に勤めるエミリーは、ある日「アーリア人団結をめざす娘たち」という白人至上主義グループを結成し、教会の談話室で初会合を開きます。
そこには現代の風潮に不満を抱える6人の女性が集まってきました。日頃の鬱憤や過激な思想を共有して盛りあがった彼女たちは2次会のためエミリーの家へ向かいますが、その途中アジア系の姉妹と口論になってしまいます。
腹を立てたエミリーたちは悪戯半分で姉妹の家を荒らしに行きますが、それが取り返しのつかない事態になってしまうのです……。
教会に集まった白人至上主義の女性達
幼稚園で働く主人公エミリーは、はたから見れば教育熱心な良き先生ですが、実際は学校で働く黒人の清掃員へ嫌がらせをするような、いわば「白人至上主義」の女性です。
そんな彼女はある日「アーリア人団結をめざす娘たち」という、白人至上主義グループを結成。メンバーを募り教会で初めての会合を開きます。
そこに集まったのは、マージョリー、アリス、ジェス、キム、レスリーという5人の女性たち。
彼女たちは皆、多文化主義や多様性を重んじる現代の風潮に不満を抱えています。
「こんなに頑張ってるのに移民が優遇される」「白人はできて当たり前と、努力を認めてもらえない」など、1人ずつ話す日頃の不満はどれも「自分たちが白人ということで不当な扱いを受けている」というものです。
女子会のようなノリで行われる会合ですが、この会合がすでに狂気なんですよ!(笑)
まずエミリーが会合用に焼いてきたのは、なんと、
ナチスの鉤十字が刻まれたパイ!
おいおい、初めて会う人たちとの会合で主催者がそれはあまりにもブラックジョークすぎでは!? と思ったんですが、5人は「クソやばい!(笑)」「会合の定番にしよう!」と爆笑しながらパイをむしゃむしゃ食べるんです。
この瞬間に、彼女達の倫理観のズレをまざまざと見せつけられ「あ、これは何かやらかすな……」と不穏な空気を感じざるを得ません。
ちなみに、日本でもよく使うこのOKサインは、白人至上主義を表すサインとも言われているので海外で使う場合には注意が必要です!
アジア人姉妹とのトラブルが起こす最悪の事態
教会での不謹慎な発言と態度を見かねた牧師に「出ていってほしい」と言われた6人。文句を言いながらも教会から出たエミリーは、まだ時間のあるレスリー、キム、マージョリーを自宅に招待することにします。
途中、キムが経営するスーパーで買い物をしていると、アジア系の姉妹アンとリリーの2人が来店します。キムはわざと閉店中だと言って追い出そうとしますが姉妹は納得がいかず揉み合いに発展。
そして無理やり追い出されたリリーは去り際にあることをエミリーに吐き捨てていきます。その言葉に酷く動揺したエミリーを見たレスリーは、「あいつらを許してはダメ! 思い知らせてやろう」と、姉妹の家に行くことを提案します。
「気晴らしに少し嫌がらせしてやろう!」と4人は大盛り上がり。車に乗りノリノリで姉妹を追いかけます。
ここまでですでに彼女らのヤバさは伝わっていると思いますが、本当に恐ろしいのはここからです。
少しイタズラするつもりが、
それは取り返しのつかない犯罪の始まりだったのです……。
「白人至上主義」の彼女たちの根底にある憎悪がこれでもかというほど溢れ出る後半は、本当に本当に恐ろしいです。
全編ワンショットで観る加害者の視点
冒頭でも説明した通り、本作は92分の全てをワンショットで撮影した作品です。
ワンカットなのに、出演している皆さんの演技があまりにも凄すぎて、これは今まさに起こっている事件なんじゃ!? と思ってしまうほどです!
たった4日間のリハですべてを把握し撮影に挑んだなんて信じられない臨場感なので、それだけでも観る価値ありです。
そして『ソフト/クワイエット』最大のポイント。それは、
加害者目線の視点で進行していく
ということです。
エミリーの視点というよりも、エミリーの常に横にいる人間視点のように思えます。この撮影効果により、自分も「アーリア人団結をめざす娘たち」の一味であり加害者になってしまったような気分になり、まさに胸糞指数100!!
都合の悪いことは“差別”と捉える思想
エミリー含め、彼女たちは常に不満を持って過ごしています。冒頭すぐに映るのは、エミリーがトイレで妊娠検査薬を使い涙を流すシーン。そう、彼女は『伝統的なアメリカ家庭像』を掲げる一方で、自分が不妊で親になれないことに強くコンプレックスを抱いています。
ソフト(優しく)でクワイエット(静か)な彼女は、
「自分より幸せな黒人や移民がいる」ことが何より許せないんです。
マージョリーも「私の方が仕事ができるのにコロンビア人に出世を横取りされた」という、もの凄い差別発言をします。
実際白人差別を受けて苦しむ人がいる一方で、エミリー達のように“自分に都合の悪いことや気に食わないことは、すべて白人差別”と受け取る人もいるのです。
予想のつかない展開にハラハラするのはもちろん、人種差別について改めて考えさせられる作品でもあります。
最初から最後まで不快な気持ちが続く、精神衛生上よろしくない映画ではありますが(笑)、個人的にはこういう日常でいつ起こってもおかしくない怖さは好きなのでぜひ観てほしいです。
『ソフト/クワイエット』、週末のお供にいかがですか?
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