見終わったあとモヤモヤする映画が大好きな筆者が語る映画連載【シネマ・グレイ】。今回は、夏休みに不思議な力に目覚めた子供たちの“危険な遊び”を描いた北欧のサイキックスリラー『イノセンツ』(2021)を紹介します!(文:紺野ミク)

《自己紹介》
『singles』をご覧の皆さんこんにちは!モデルをしながらライターとして記事を書いている「紺野ミク」です。こちらでは映画大好きな私がオススメする作品を紹介しています。好きなジャンルは考察系、クソ映画、鬱映画など見終わった後にモヤっとする映画が大好きです(笑)独断と偏見で楽しくツッコミながら紹介していくのでよろしくお願いします☆

衝撃と絶賛の問題作! 北欧サイキックスリラー『イノセンツ』

画像1: (C)Mer Film

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退屈な夏休みに不思議な力に目覚めた子どもたちの遊びが、次第に狂気へと変わっていく姿を美しくも不気味に描いたノルウェー製の北欧サイキックスリラー『イノセンツ』(2021)。

第74回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品され、ノルウェーのアカデミー賞と呼ばれるアマンダ賞で驚異の4冠を獲得。世界の映画祭で16映画賞を受賞し、観客を絶賛と衝撃の渦に巻き込んだ問題作です。

監督・脚本を手掛けたのは、ノルウェーを代表する映画監督ヨアキム・トリアーの右腕として『母の残像』(2015)『テルマ』(2017)などの脚本を共同で務め、『わたしは最悪。』(2021)で米アカデミー賞®脚本賞にノミネートされた鬼才エスキル・フォクト氏です。

また本作は、「AKIRA」などで世界中に多くの熱狂的ファンを持つ漫画家・映像監督 大友克洋の傑作漫画「童夢」からインスピレーションを得ており、「これは童夢実写化と言っても過言ではない」「童夢への深い愛情を感じる最高に美しい演出」など、大友克洋ファンからの絶賛が相次ぎました!

童夢を知っている方はもちろん、知らない方でも『イノセンツ』の不穏な世界観とサイキック描写に目が離せなくなるはずです。

夏休みに出会った子供たちの不思議な力

舞台はノルウェー郊外、緑豊かな住宅団地。そこに両親と姉と共に引っ越してきた9歳の少女イーダ。夏休みという中途半端な時期に引っ越してきたのは、自閉症で口のきけない姉のアナのためでした。

画像4: (C)Mer Film

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優しい両親ではあるものの、自閉症のアナ中心の生活にイーダはなんとも言えない気持ちを抱えていました。

ある日イーダは同じ団地に住む男の子ベンと出会います。ベンも引っ越してきてからこの団地に馴染めずにいる似た者同士。彼はイーダを森に連れていきある特技を見せるのです。

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それはビンの蓋を念力で動かすというもの。

いつしかできるようになったというこの能力にイーダも興味津々。2人は頻繁に遊ぶようになります。

一方、姉のアナに声をかけてきたのはアイシャという女の子。彼女もこの団地に住んでいます。

画像6: (C)Mer Film

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自閉症で喋れないアナの心が分かるというアイシャ。

なんとアイシャもまた特別な力も持つ子供だったのです!

  

イーダ、アナ、ベン、アイシャは不思議な能力を使って4人で遊ぶようになります。

しかし大人には秘密の“無邪気な遊び”はやがてエスカレートし、いつしか“狂気の遊び”に変わっていくのです……。

純粋ゆえに残酷な子供の思考

本作はタイトル『イノセンツ』=「無邪気・うぶ・経験のない・天真爛漫」のとおり、子供たちの無垢な姿を表した作品です。

しかし、無垢だからこそできてしまう行為は、どこまでも残虐で狂気に満ちているのです。

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自閉症のアナは喋ることや感情を出すことが出来ません。それを知っているイーダはアナの手や足を思い切りつねってストレスの捌け口にしたり、靴にガラスを入れアナに怪我をさせたりします。

「何も分かってないから大丈夫」とベンやアイシャに話すイーダでしたが、テレパス能力のあるアイシャから、「アナは痛みを感じているしすべて分かっている。」という事実を聞きます。

これってまさに子供の思考というか、自閉症=何もわからない という単純な思考のもとでやっているんですよね。

子供が蟻を笑いながら踏み潰したり、動物を叩いたりするように、『やってはいけないこと』という区別がついていない状態でやっているから歯止めも効かない。まさに子供特有の残酷さです。

彼らは痛みを知って成長していくのか?

物を動かす能力を持つベンも、初めはビンの蓋を動かして遊ぶ無邪気な少年です。しかし次第にその力でいろんなことを試していくうちに、自分の隠された能力の凄さを知ってしまいます。

そして物語中盤からは、明らかに悪意を持ってその能力を使っていくのです。

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これも凄くリアルな子供の思考が表現されているなって感じました。悪いことと認識しても自制することが出来ない。その先がどうなるのか? そして関わる人たちがどんな思いをするのか? の想像力が欠けているから、感情任せでやってしまう。

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だけど、怖くなって後から泣いたり逃げたり。でもまた繰り返したり……。そんな子供たちの葛藤も見えてきます。

団地というコミュニティの中で愛情に飢えた子供たち

『イノセンツ』は、4人の子供たちが皆同じ団地に住んでいますが、それぞれの家庭環境はとても複雑です。イーダは自閉症の姉のせいで親の愛情に飢えてるし、ベンは母から暴力を受け、アイシャは母へ甘えることができずにいます。

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親の愛情不足とその家庭環境から、友達もいない寂しい毎日を送っていた子供たち。どこか似てるからこそ共鳴し、徐々に能力も開花していったのではないでしょうか?

自分たちではどうにもできない家庭環境と助けてくれない大人。そのなかで見つけた小さな楽しみが、集まって能力を使うこと。一線を超えてしまったとはいえ、決して子供だけを責めることは出来ないですよね……。

大人には程遠いけど、何もできない赤ん坊ではない。そんな子供たちの夏休みは予測不能な想像を絶する結末へと突き進んでいきます。

  

この作品、内容がおもしろいのはもちろんですが、
とにかく子役の皆の演技がすごすぎる!

皆、立派な俳優さんたちなので当たり前ですが……そのなかでも、自閉症のアナ役の子の演技が本当にすごい!! 目線や動きひとつひとつを研究しまくったんだろうなって。ぜひぜひ注目してみてください♪

本コラムでも紹介している『ミッドサマー』(2019)や『ラム』(2021)に続く北欧スリラー『イノセンツ』、週末のお供にいかがですか?

【イノセンツ 予告動画】

画像: - YouTube youtu.be

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画像: 世界が震撼&絶賛の問題作! 無垢な子供の“遊び”が狂気に変わるサイキックスリラー『イノセンツ』【シネマ・グレイ File.025】

紺野ミク|Miku Konno

モデル・女優などで活躍中の他、2017年からはライターとしても活動。連載を持ちコラム執筆をするなど多方面で活躍中。お酒・映画鑑賞が大好き。

InstagramXYoutubeにて活動をcheck。

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