連載コラム「生田晴香、恐竜と生きる」。福井恐竜博物館 公認恐竜博士、古生物学会友の会・恐竜倶楽部メンバーでもある自他共に認める恐竜ラバーのタレント生田晴香が、恐竜の素晴らしさを隅から隅まで語り尽くします。壮大な歴史とドラマ、未解明の不思議が交差する魅惑の恐竜ワールドへ、ようこそ! - singles編集部
日本の恐竜
今まで日本で発見された恐竜はたくさんいます。フクイラプトルにフクイサウルス、フクイティタン、タンバティタニス、カムイサウルス、コシサウルス……。
2020年に日本で発見された恐竜を、皮膚痕や卵化石を含み細かく紹介しました。それから、2021年には「ヤマトサウルス」。2022年には「パラリテリジノサウルス」。2023年には「ティラノミムス」なんかも。
※すべて別メディア『dino.network』で公開していた記事です。
新種として記載された恐竜も増えてきています。なんと、2024年は2種も名付けられているんです!
そう、世界はもちろん日本でもどんどん恐竜が発見されて新しく名前が決まっていっています。昔は日本から恐竜は出ないと言われていたみたいですが、今では出るところでは出るので、昔の話がまるで嘘かのような時代ですね。
さあさあ、2024年の新恐竜を紹介していきましょう!
その名も、「ヒプノヴェナトル」と「ササヤマグノームス」です!
眠るハンター「ヒプノヴェナトル(Hypnovenator)」
2010年と2011年に兵庫県丹波篠山市(当時は篠山市)の白亜紀前期(約1億1000万年前)の地層から恐竜の化石が発見されました。
「兵庫県立 人と自然の博物館」の久保田克博研究員、「北海道大学総合博物館」の小林快次教授、「兵庫県立大学」の池田忠広教授の研究グループの研究により、この恐竜化石がトロオドン科のなかでも進化的なトロオドン亜科であることが明らかになりました。
「トロオドン」といえば頭のいい恐竜で有名ですが「ステノニコサウルス」と「ラテニヴェナトリクス」の化石だったことがわかり疑問名となったものの、「トロオドン科」は消えずにそのままです。
そこで! なんと、新属新種として、
「ヒプノヴェナトル・マツバラエトオオエオルム」
と命名されたのです。おめでとうございます!(拍手)
「ヒプノヴェナトル」は、「眠る(ヒプノ)狩人(ヴェナトル)」という名前の意味です。
種小名の「マツバラエトオオエオルム」は、化石を発見した松原氏(マツバラ)と(= エト)大江氏(オオエ)、複数の男性が含まれる場合に用いる(= オルム)でできています。長いですが2人の苗字だけ覚えちゃえばフルネームも覚えやすいですね!
骨同士が関節して保存されており、その関節状態から眠った姿勢のまま化石化したことが判明したそうです。このような生態は小型マニラプトル類の中では一般的に見られたことが分かりました。
トロオドン科の前肢の末節骨の比較研究から、ヒプノヴェナトルは第1および第3末節骨の両方に同程度の力をかけることができたことが判明。ほかのトロオドン科と比較すると、ヒプノヴェナトルの第1末節骨の力はわずかに小さいが、第3末節骨の力は大きかったことになり、これはトロオドン亜科の初期進化と関係した可能性があるそう。
ヒプノヴェナトルは、約1億1000万年前にアークトメタターサル構造を獲得したことで、高い走行性と大型化のポテンシャルを備え、その後、趾骨(しこつ。足の指の骨)も走行性に適した形状へと変化したことがわかったそうです。
アークトメタターサル構造って何? と言う方は、それを持ってる恐竜は持ってない恐竜より早く走ることができる、と覚えておくとよいでしょう。
篠山の小人「ササヤマグノームス(Sasayamagnomus)」
兵庫県丹波篠山市に分布する篠山層群大山下層(約1億1000万年前)から植物食恐竜(角竜類)化石を発見し、新属新種として、
「ササヤマグノームス・サエグサイ」
と命名されました!(拍手)
学名の意味は、篠山の地下に隠された財宝を守る小人(ササヤマグノームス)。2006年より消液地域の化石発掘調査を指し、2022年にご逝去された三枝春夫博士に献名されました。(サエグサイ)
系統解析の結果、ササヤマグノームスは北アメリカの原始的な角竜類と近縁であり、アジアで誕生した角竜類が北アメリカへと渡った時期が1億1000万年前頃であった可能性が示されました。
白亜紀中頃にベーリング陸橋の形成と極端な地球温暖化が同時に起こったことが、原始的な角竜類の生息域を拡大させる原因になったと考えられそうです。
まとめ
兵庫県にはもともとタンバティタニス、ヤマトサウルスという恐竜がいて、さらにヒプノヴェナトルにササヤマグノームスが追加されました。
2024年の兵庫県の恐竜は盛り上がってますね。
恐竜が発見され、恐竜のことだけでなく、その時代のことなど新しいことがいろいろ判明されていくのも面白いところです。
2024年は、まだ残り1ヶ月ちょっとあります。もしかしたら、年内にまた新恐竜の発表があるかもしれませんね!
ではまた次回。
生田晴香 | Haruka Ikuta
恐竜タレント。TV、CMのほかモデルとして活躍中。福井恐竜博物館の公認恐竜博士で恐竜検定所持。恐竜トークショー、クイズ、鳴き声コンテスト審査員。古生物学会友の会&恐竜倶楽部メンバー。恐竜のうた「ダイナソーDANCE」監修。実は元あやまんJAPAN。
YouTubeちゃんねる「恐竜わっしょい!」始めました。