連載コラム「生田晴香、恐竜と生きる」。福井恐竜博物館 公認恐竜博士、古生物学会友の会・恐竜倶楽部メンバーでもある自他共に認める恐竜ラバーのタレント生田晴香が、恐竜の素晴らしさを隅から隅まで語り尽くします。壮大な歴史とドラマ、未解明の不思議が交差する魅惑の恐竜ワールドへ、ようこそ! - singles編集部
君の名は
今回紹介するのは、下半身にやたら羽毛が発見されいるおり羽毛恐竜のオスだと思われている名前がそのまんまな、チンゲノサウルス……という架空の話ではなく(実際には存在しません)、チンタオサウルスの事です。
「ちんたお」と文字を打とうとすると「青島」と変換候補が出るのでやってみてほしいのですが、チンタオサウルスのチンタオとは青島。発見された近くの大都市である、中国の青島にちなんでいます。
サウルスはラテン語がベースで、トカゲ・爬虫類という意味で、ティラノサウルスやステゴサウルスといった多くの恐竜にも使われていたりしますね。
チンタオサウルスは鳥脚類で、パラサウロロフスやランベオサウルスと同じハドロサウルス類、ランベオサウルス類の全長約7〜8メートルの植物食恐竜です。
時代は中生代白亜紀後期、今では絶滅しています。
ハドロサウルス類はあごが幅広く、口のあたりが平べったくてカモのような角質のくちばしで覆われているのが特徴的なのでカモノハシ恐竜と呼ばれています。植物食恐竜で歯は数百~数千本持っていたりと多くの歯を持っているグループです。
そんなハドロサウルス類のチンタオサウルスさん。見てわかる通り、特徴はなんといっても頭です。
頭骨を見てください。頭の上にユニコーンのような棒の突起があり、まるで漫画「名探偵コナン」に出てくる毛利蘭のような強さを感じる立派な存在感です。
突起の先から魔法で攻撃してきそうですが、これは恐竜。架空の生き物ではありません。
では何に使っていたのか?
普通に考えたら、ステゴサウルスのしっぽみたいに攻撃に使って、肉食恐竜などの敵に突っ込んでいってツノを刺し込んで命を守っていそうですよね?
じつは違う可能性が大きいようです。
チンタオ発見事件
振り返り美人ならぬ振り返り恐竜
チンタオサウルス・スピノリヌス(Tsintaosaurus spinorhinus)は、1958年に中国で新属新種として命名されたハドロサウルス類の植物食恐竜です。
事件の始まりは1950年の中国・山東省は莱陽。金崗口村の北西、冲溝の道路脇でハドロサウルス類の脛骨と腓骨が発見が発見された事により、そこで本格的な発掘が始まりました。
何体かのハドロサウルス類の骨がたくさん発見され、他にもいくつかの場所で恐竜化石が発見されたのです! その後クリーニングされ、そこにいたのがチンタオサウルス。
もちろんその頃はまだその化石の中にチンタオサウルスがいるなんてわからないしそんな名前すら存在しないので「こ、これは……? チンタオサウルスだ!」という発見ではありません。
まとまった化石があるけど鼻骨チューブ伸びてて変わってるな……5体は同じ恐竜だろう。その名はチンタオサウルス! という感じで論文が1958年に出て命名されたわけです。
その場所から他にも恐竜2種、タニウス・チンカンコウエンシス(Tanius chingkankouensisと)、タニウス・ライヤンゲンシス(Tanius laiyangensis)が命名されました。
が、のちにそれらのタニウスは疑問名とされました。新恐竜ではなく、チンタオサウルス(とどのつまりシノニム)の可能性があるのです。
違う恐竜発見したかと思ったら前に発見されていたのと同じやつだったというのは、恐竜あるあるです。
ツノ問題
話は頭のツノ問題に戻ります。このツノは長さ約40センチあるわけですが、死んだ後化石化の途中で吻部の鼻骨がめくれあがってしまっただけでそもそもツノなど存在しないなどとも言われてきました。
それだとがっかりしそうな人がいそうですが安心してください。頭にある骨は確かにあったのです。
なんと! じつは、2013年に発表された論文でこの正体がわかりました!
ツノだと思われている突起を再検討した結果、前上顎骨(上顎の骨)と鼻骨で形成される大きな板状の突起の1部である可能性が高いとのことでした。
これはハドロサウルス類のランベオサウルス亜科にみられる特徴です。とどのつまり、頭部の上のトサカの1部を形成していたわけです。
元々の復元ではツノは前方に伸びており、最近の恐竜展でもそのままのツノの角度の復元で展示されていますが、イラストで最新の復元図があったり説明が添えられてたりしますね。
なんで新しくわかってから10年以上経つのに頭骨の復元骨格を新しくしないのか問題ですが、元々の見た目のインパクトが変わってて気に入られているのでそのままにしてあるのではないか、と予想してます。
地震でチンタオサウルス全身骨格破損
2011年の東日本大震災。福島県広野町でチンタオサウルスの全身復元骨格が頭骨が落ち大きく破損するなどして被災しました。
そこで「恐竜でフクシマを応援しよう」プロジェクトができ、恐竜をきっかけに福島の今を知って欲しいということでクラウドファンディングで修理費を募りました。
目標金額350万を上回りクラウドファンディング成功! 無事に修復されました。
2016年、支援した人にはわたくし生田晴香からも感謝を! これからも共に恐竜を盛り上げていきましょう。
ではまた次回。
生田晴香 | Haruka Ikuta
恐竜タレント。TV、CMのほかモデルとして活躍中。福井恐竜博物館の公認恐竜博士で恐竜検定所持。恐竜トークショー、クイズ、鳴き声コンテスト審査員。古生物学会友の会&恐竜倶楽部メンバー。恐竜のうた「ダイナソーDANCE」監修。実は元あやまんJAPAN。
YouTubeちゃんねる「恐竜わっしょい!」始めました。