読書をこよなく愛する筆者utoが、自分時間の充実した読書体験をご提案。今回は、お正月のある1月らしく紅白をテーマに作品をピックアップしてみました。タイトルに「赤」や「白」など色の名前が入っている作品は、そのカラーが作品のイメージと密接に関わっていることも。新年の読書はじめの参考にしてみてくださいね。

赤を選ぶ? それとも白? 「赤」や「白」がタイトルに入っている小説5選

2026年1月になりました。寒い日も多く、おうちでおこもりしたくなりますね。

こんな季節には、温かな室内でゆっくり読書……なんていかがですか?

今回は、お正月シーズンらしく、紅白で作品をピックアップ! 「赤」や「白」などがタイトルに入っている作品を5つご紹介します。

不思議な作品から、ちょっとヘビーな作品、ほっこり時代劇……はたまたダイハードなサスペンスに、モヤモヤ感がたまらない!? 作品まで、幅広く選んでみました。

ぜひ、新年の読書はじめとして、読んでみてくださいね。

【紅】第2回戦後文学賞受賞『赤い繭』 安部公房/新潮社(1951)

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【あらすじ】
ある夕暮れ、“おれ”は「自分の家がない」と街のなかをさまよっていました。そしてある家の前にたどり着き、「ここはおれの家ではないか」と住人の女性に問いかけます。女性に否定された“おれ”は、「そうではないならその証拠を示してくれ」と迫りますが……。(「赤い繭」)

まずは、ちょっと不思議な世界観の作品をご紹介します。こちらは安部公房による『壁』という作品のなかに収録されている小さな物語です。高校の教科書などにも載っていることがありますので、知っている方もいらっしゃるかもしれませんね。

おすすめポイント

この作品は、不思議な空気感の作品に触れてみたい、または、サクッと数ページで読める作品が読みたい、という方におすすめです。

安部公房(あべ こうぼう)は、じつは世界的にも有名な作家です。1993年に68歳で亡くなりましたが、もしもっと長生きしていたらノーベル文学賞も取っていたかも……と言われるほどです。

そんな安部公房ですが、彼の作品は実存主義文学とも呼ばれています。実存主義文学とは、ひと言で言えば自分は一体何者か? というテーマをもつ文学のこと。

『壁』という作品は、3部(6編)で構成されているオムニバス形式の中編・短編集。「赤い繭」はそのなかのひとつです。

家を探してさまよっている男が、なぜか繭になってしまう……という“超現実”的な展開は、フランツ・カフカの『変身』のようでもあります。「赤い繭」自体は4ページほどの小さな作品ですので、サクッと読むのにもちょうどいいと思いますよ。

「赤い繭」を読むなら、新潮文庫版の『壁』が手に入りやすいと思います。こちらは名作と名高い『壁』を全編読むことができますし、カバーなしでも持ち歩きたくなるほど表紙がおしゃれですので、とてもおすすめですよ。

読書時間目安:5時間~6時間程度(304ページ)
※ページ数は、文庫版でのページ数です。

「戦後文学賞」って?
月曜書房によって1949年度と1950年度の2回開催された文学賞です。対象となる作品は、小説、戯曲、詩でした。

「赤い繭」は、1951年の第2回で受賞しました。「赤い繭」が収録されている『壁』の中には、第25回芥川賞受賞ともなった表題作「壁 S・カルマ氏の犯罪」も。

【白】第33回芥川賞受賞『白い人・黄色い人』 遠藤周作/新潮社(1955)

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【あらすじ】
1944年、フランス。の住むリヨンにナチスが迫ってきていました。私は幼い頃に斜視のため父親から愛されずに育ち、母親からは禁欲的な教育を受けます。12歳のとき女中が犬を虐待しているところを目撃してから、サディスティックな欲望に目覚めた私は、ナチスの手先となって……。(「白い人」)

こちらは、ややヘビーなテーマの作品となっています。「赤い繭」が“超現実”的な視点から人間を見つめているのに対し、こちらは目を背けたくなるような心理状態から人間を描いています。カトリック文学ではありますが、王道のキリスト教作品とはひと味違うこちらはいかがでしょうか?

おすすめポイント

この作品は、衝撃的な作品を読みたい、という方におすすめです。

遠藤周作は、11歳の頃に洗礼を受けたカトリックの作家です。よく言われていることですが、遠藤作品はマルキ・ド・サドからの影響が指摘されています。

遠藤作品のいくつかは、サドのようなグランギニョルな雰囲気や、ゴシックな味わいを持っていて、キリスト教文学としては賛否両論あるようです。このような面もあり、ノーベル文学賞を逃したと言われています。
※「血なまぐさい」「こけおどしのような」という意味。かつてフランス・パリに存在した大衆芝居や見世物小屋のこと。

筆者個人としては遠藤周作は大好きで、とくに『海と毒薬』を何度も読んでしまうほど好んでいます。『海と毒薬』が「なんとなく」で悪に転んでしまう人間を描いているなら、『白い人・黄色い人』では自らの意思で悪に走る人間を描いています。

人間が持つ悪魔のような一面を描写し続けている内容ですから、ちょっとグロテスクに感じられるかもしれません。反面、文体はかなり読みやすいので、ヘビーなテーマの物語は初挑戦という方でも読み切れると思います。

キリストを試すために神父を官憲に売るクリスチャンの青年の話「黄色い人」も併録です。

読書時間目安:3時間半~4時間半程度(208ページ)
※ページ数は、文庫版でのページ数です。

「芥川賞」って?
芥川龍之介の業績を記念して創設された賞です。芸術性のある1編の短編、または中編小説に贈られます。上半期と下半期の年2回開催。太宰治が受賞を熱望しながら選ばれなかったことでも有名で、このことは佐藤春夫が『小説 芥川賞』で描いています。

『白い人・黄色い人』に収録されている「白い人」は、1955年上半期の第33回で受賞しました。当時は今ほど芥川賞に話題性がなく、遠藤自身「ショウではなく本当に賞だった」と語っています。

【紅】第126回直木賞受賞『あかね空』 山本一力/文藝春秋(2001)

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【あらすじ】
永吉は上方から江戸へとやってきた豆腐職人。支えてくれるおふみと夫婦になり、表通りにお店を出します。さまざまな困難がありながらも、生活に前向きな兆しが見えてきた頃、3人の子宝に恵まれます。しかし、おふみはなぜか長男ばかりかわいがるようになり、一家に暗雲が……。

時代小説と言えばお侍さん、というイメージの方も多いかと思いますが、こちらは商人が主人公。親子二代に渡って家族の絆を描いたこちらの作品は、家族が持つ温かさを感じたいときにもぴったりですよ。

おすすめポイント

この作品は、温かな読後感の作品を読みたい、という方におすすめです。

作者の山本一力は、テレビなどのメディア出演もある作家さんですので、ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんね。

主人公は、京から江戸へ下ってきた豆腐職人。京と江戸とは豆腐の好みが違い、最初はかなり苦労します。そんな主人公たちが住んでいる江戸の雰囲気は、江戸時代の庶民生活がうかがえるようなリアルな空気感です。

時代小説に興味はあるけれど、できれば血なまぐさくない物語がいいとお考えの方にはぴったりかもしれません。

ちなみに、作中には「差配(さはい)」、「居職(いじょく)」といった見慣れない言葉が出てきます。「差配」は所有者に代わって管理する人のこと、「居職」は自宅が仕事場の職業のこと。こういった見慣れない言葉を知っていくのは楽しいですし、江戸時代らしい雰囲気が味わえてわくわくしますよ。

江戸時代の長さなどの単位も出てきますが、「五尺五寸」は「約百六十七センチ」と説明がありますのでイメージしやすいです。時代小説のなかにはこういった併記はないこともあるので、初心者さんでもなじみやすい作品だと思います。

読書時間目安:7時間~8時間半程度(416ページ)
※ページ数は、文庫版でのページ数です。

「直木賞」って?
直木賞は、大衆性を押さえた長編小説または短編小説集に与えられる文学賞です。大正時代から昭和時代にかけて名をはせた人気作家直木三十五が名前の由来。上半期と下半期の年2回あります。

『あかね空』は、2001年下半期の第126回で受賞しました。テレビドラマや舞台、映画にもなっています。

【白】第17回吉川英治文学新人賞受賞『ホワイトアウト』 真保裕一/新潮社(1995)

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【あらすじ】
新潟県にある奥遠和ダムは、日本最大の貯水量を有するダム。ここで働く富樫輝男は、11月に遭難者を救助したものの、同僚でもあった親友を亡くしてしまいます。その年の12月、5年前の夏に無差別テロで妻子を失った小柴拓也が、テロ組織を内部から根絶やしにしようと、その組織との接触を図っていました……。

こちらはやや長さがありますが、おもしろいので一気読みできてしまう!? そんな作品です。冬には雪によって閉ざされるダムという舞台で、テロ組織 VS 一般人の戦いが繰り広げられます。ドキドキするような展開がお好みでしたらぜひ!

おすすめポイント

この作品は、スリル満点で映画のような小説を読みたい、という方におすすめです。

主人公が強いストーリーは映画でもドラマでもわくわくしますが、この作品も主人公がどんどん強くなっていくのでとても楽しく読んでいくことができます。

テロ組織によってダムが占拠され、人質救出に向かう……という筋書きですが、スリルとスピード感が気持ちいいです。人質となったダム職員や住民を救うための要求は50億円、タイムリミットは24時間! 本当に映画のような内容で、死ぬまで諦めない主人公の姿勢はまるで映画『ダイ・ハード』シリーズのよう。

冒頭は多くの登場人物が出てくるので整理に戸惑うかもしれませんが、事件が起こってからはノンストップで読みたくなるほどぐんぐん引き込まれます。

誰かを救うために銃を握って戦いに挑む一般人、というシチュエーションがお好みならきっと楽しめるでしょう。

見取り図などは収録されていないので、ちょっとダム内部の構造がわかりにくく、「主人公は今どこにいるんだろう?」となるシーンもあるかもしれませんが、描写をしっかり読むのが楽しい作品なので、ぜひ挑戦してみてください。
※ちなみに、作中の舞台・奥遠和ダムのモデルは奥只見ダムと言われていますので、こちらの実在のダム写真を見ながら読んでみるとよりリアリティが増すかも……?

読書時間目安:10時間半~12時間程度(637ページ)
※ページ数は、文庫版でのページ数です。

「吉川英治文学新人賞」って?
公益財団法人吉川英治国民文化振興会が主催、講談社後援の文学賞です。新聞や雑誌、単行本といった媒体に発表された、優秀な小説を書いた新人作家の中から受賞者が選ばれます。1980年創設。

『ホワイトアウト』は、1996年の第17回で受賞しました。漫画化や映画化もされており、映画『ホワイトアウト』は「日本版ダイハード」として大きな話題になりました。

【紅白】第25回小説すばる新人賞受賞『赤と白』 櫛木理宇/集英社(2013)

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【あらすじ】
雪深い小さな町、新潟県轡市。そこに住む高校生の小柚子弥子は、一見穏やかにこの町での日常を営んでいました。しかしそれぞれの家庭では暗い影が落ちていて……。そんなふたりの前に、小学校時代に転校した京香が現れますが……?

最後に、ややショッキングな内容の作品をご紹介します。初めて読んだとき筆者もだいぶモヤモヤしましたが、そういう鬱系・モヤモヤ系が好きで挑戦してみたい! という方は、ぜひ読んでみてください。

おすすめポイント

この作品は、モヤモヤするような作品を読んでみたい、という方におすすめです。

『singles』で連載されている映画コラムに【シネマ・グレイ】がありますが、こちらは「見終わったあとモヤモヤする」映画がたくさん紹介されている連載です。

モヤモヤしたり嫌な気持ちになったりする作品は、映画だけでなく小説にもたくさんあります。そのなかから、こちらの小説『赤と白』をおすすめモヤモヤ小説としてご紹介いたします。

冒頭は、新聞記事の文章が並んでいます。無機質な出だしですが、本章に入ると高校生のなんとものんびりとした、けれどどこか不穏な感じのある日常が描かれ……。そして徐々に不穏さが加速していきます。

文体がとても平易なので、ストレートに不穏さが伝わってきて、よりモヤモヤできます。難しい文章だと混乱してしまい、安心して(?)モヤモヤできないこともありますが、この作品はその心配がありません。

少女たちの間に流れる瘴気のようなものがどんどん積み重なっていくのが、この作品の醍醐味だと思います。そんな本作のオチは……ぜひ読んで確かめてみてください!

読書時間目安:5時間~6時間程度(304ページ)
※ページ数は、単行本でのページ数です。

「小説すばる新人賞」って?
集英社が主催する公募新人文学賞です。小説誌『小説すばる』で年1回発表されています。この小説すばる新人賞を含めた、柴田錬三郎賞、すばる文学賞、開高健ノンフィクション賞の4つの賞は、集英社出版四賞と呼ばれています。

『赤と白』は、2012年の第25回で受賞しました。著者の代表作は、『ホーンテッド・キャンパス』、『死刑にいたる病』、『殺人依存症』など多数。

好きな色のタイトルで選ぶのも楽しいかも?

今回は、「赤」や「白」などがタイトルに入っている作品を5つ厳選してご紹介しました。

紅白(赤や白)の色の名前が入っている作品ですと、スタンダール『赤と黒』、吉本ばなな『白河夜船』、山本周五郎『赤ひげ診療譚』、ドストエフスキー『白痴』などなど、枚挙にいとまがありません。

また、紅白に限らない色の名前に広げますと、スティーヴン・キング『グリーン・マイル』、村上龍『限りなく透明に近いブルー』、宮沢賢治『銀河鉄道の夜』、尾崎紅葉『金色夜叉』、そしてこれまでにご紹介した『黒い家』や『青い鳥』などもそうですね。

もっともっとたくさんあって挙げきれないですが、このように、色の名前が入った作品はまさに色々!

好きな色の作品を読んでみるのも、本選びとして楽しいと思います。ぜひ、お好みの色で読書を楽しんでくださいね。

ほかにもおすすめの本が知りたい方はこちら

『黒い家』のご紹介はこちら

『青い鳥』のご紹介はこちら

読書におすすめなアイテムはこちら

読書におすすめなスポット情報はこちら

【シネマ・グレイ】ではモヤモヤできる映画をたくさんご紹介しています

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