美術館巡りが趣味である筆者ameが、ひとりでゆっくりと楽しめる企画展をご紹介。今回は番外編として、アートウィーク東京の特別展である「AWT FOCUS」の内覧会の様子をお届けします。出展作品すべて購入可能という、“買える展覧会”に注目です!

美術館での鑑賞と、ギャラリーでの購入を組み合わせた催し「AWT FOCUS」

画像: 現代アートの祭典「アートウィーク東京」

現代アートの祭典「アートウィーク東京」

「アートウィーク東京」とは、2022年から開催されている現代アートの一大イベント。今年は、過去最多の東京都内53ヶ所の美術館・ギャラリーが参加しています。

無料のシャトルバス「AWT BUS」が巡回しているので、気になるところから手軽に見ることができるのも魅力。普段美術館に行き慣れていない方でもアートに触れやすいという点が、きっとあなたの美術鑑賞のハードルを下げてくれるはず。

そんな世界的にも注目されているアートイベント「アートウィーク東京」では、目玉となる催しがあります。

画像: 「AWT FOCUS」の会場、大倉集古館(東京メトロ南北線 六本木一丁目駅から徒歩5分) Photo by Kei Okano. Courtesy Art Week Tokyo.

「AWT FOCUS」の会場、大倉集古館(東京メトロ南北線 六本木一丁目駅から徒歩5分)

Photo by Kei Okano. Courtesy Art Week Tokyo.

それが、買える展覧会「AWT FOCUS」。

今年は、森美術館館長の片岡真実さん監修のもと、「大地と風と火と:アジアから想像する未来」をテーマに開催されます。4つのセクションに分かれた展示には、世界各国のアートが集結。なんと、これらすべて購入可能なんです!

会期は2024年11月7日(木)〜10日(日)の4日間と短いですが、ぜひ余すところなく楽しんでほしい! ということで、目玉の催し「AWT FOCUS」のメディア内覧会の様子をお届けします。

「AWT FOCUS」の見どころ

はじめに、「AWT FOCUS」では、各アートの解説が載った冊子を無料でもらえます。そのため、その場でアートの理解を深めつつ見ていくことができるんです!

通常の美術館では、有料で音声案内を受けられたり、ミュージアムショップで有料の図録を購入したりという形が一般的なので、手軽に解説を読みながら鑑賞できるという点だけでも、ものすごくとっつきやすい!

とくに筆者は、現代アートは解釈が難しいと考えがちなので、アートの解釈を助けてくれる解説はとてもありがたいです。

もちろん、自分の感性のみで鑑賞するのもアート体験の形のひとつ! 肩肘張らずに、自分の家にこのアートがあったらどうだろう、と考えながら見てみてくださいね♪

第1セクション「宇宙の構造」

まず、大倉集古館に入ってすぐに、第1セクションである「宇宙の構造」の展示があります。ここでは、自然現象から生命、死後の世界、神々の棲む世界など、さまざまな世界からインスピレーションを受け、宇宙を解釈した作品が集められています。

ベロア製のカーペットにプリントされたアートから、糸と釘を使用した立体作品、ビー玉迷路のような作品まで、さまざまな表現手法によって宇宙の構造が表現されています。

画像: 不思議な音に注目(赤松音呂の作品)

不思議な音に注目(赤松音呂の作品)

私がとくに気になったのが、赤松音呂の《チョウズマキ》。ガラス瓶に入った磁石が回転することにより発生した渦巻きが見た目にも引きがあるのですが、注目したいのは、その渦巻による“音”

水流に加えて、泡が弾ける高音が混ざった複雑な音が、独特の形をしたガラス管から聞こえてくるというこちらのアート。ぜひ、耳を澄まして聴覚でも楽しんでほしい作品です。

第2セクション「手、身体、祈り」

入り口から入って左手側、作品番号30から第2セクション「手、身体、祈り」が始まります。2階にも続いているので、そのまま階段で上がって流れで見ていくのがおすすめです。

こちらでは、アートは無形のものに形を与えることもある、ということに着目。手から形が生み出され、身体全体の運動に繋がっていく過程が、悟りに至る祈り、宇宙へ繋がる時間だという宗教的な解釈ができる作品が集められています。

画像: 暖かい雰囲気も感じられます(小林万里子の作品)

暖かい雰囲気も感じられます(小林万里子の作品)

私が見どころとしておすすめしたいのが、作品番号32、小林万里子による《この世界からは出ていくけれど》。残念ながら図版は載っていないものの、かなり注目したい作品です。

森美術館館長の片岡真実さんの解説によると、火葬した際に残る猫のしっぽがとても短いところから、生命の終わりを表現しているとのこと。ただ、穏やかな雰囲気が終わりではないことを伺えてとてもよい空気を感じられました。

「AWT FOCUS」は買える展覧会なので、自宅に持って帰りやすいサイズ感もポイントですね!

第3セクション「見えない力」

第2セクションからの流れで、第3セクション「見えない力」の展示を見ることができます。こちらでは、神々の見えない力だけでなく、政治的・社会的権力、新型コロナウイルスの世界的蔓延といった見えない力による恐怖や制限に注目。環境問題や社会問題を解釈した作品が集められています。

一部、珊瑚の白化現象を題材とした作品(画像4枚目)は、集合体が苦手な方にとっては刺激が強いかもしれません。しかし、美しい作品なので一度画像を確認のうえ、鑑賞していただければと思います。

画像: ぱっと見でも惹きつけられる写真でした(川田喜久治の作品)

ぱっと見でも惹きつけられる写真でした(川田喜久治の作品)

こちらのセクションでの個人的な見どころは、川田喜久治の《原爆ドームと太陽 爆心地》。かなりセンシティブなテーマではありますが、報道写真とはまた違った写真表現を見ることができます。

美しさを感じることに罪悪感を抱かずに、アートとして対峙していただければと思います。モノクロながら、その表現にはきっといろいろ考えさせられるはず。

第4セクション「自然界の循環とエネルギー」

第3セクションから順路に沿って進んでいただくと、最後のセクション「自然界の循環とエネルギー」の展示を見ることができます。

異常気象の常態化や武力の衝突による脅威がある時代だからこそ、現在まで継承されてきた叡智に立ち返って、すべての命を考える。ありとあらゆるものが多様なままひとつに繋がりあう。そんな世界を想像させてくれるきっかけとなるような作品が集められています。

このセクションでは、映像作品も豊富。3つのブースでそれぞれの作品を鑑賞することができます。少々尺は長いですが、じっくり向き合うのもオツなもの。仮想のカメラが追う100万年前、あるいは100万年後の地球をイメージした空間を楽しんでみてください。

画像: 2枚並んでいるのであわせて見てほしいです(ローラン・グラッソの作品)

2枚並んでいるのであわせて見てほしいです(ローラン・グラッソの作品)

私が注目したのは、作品番号63〜66のローラン・グラッソ。楽園のような風景に、黒い四角形のモノリスが妖しい影を落としているこの作品群は、恐怖すら覚えます。風景の美しさを楽しんでいたら、無機質な物体が突然現れたような感覚に陥ってしまうほど。

その異物感が、現実世界を包み込む不条理などを連想させてくれる作品となっています。

4日間の現代アートイベント「アートウィーク東京」を楽しんで!

画像: メディア内覧会では、片岡真実さんの解説を聞けました!

メディア内覧会では、片岡真実さんの解説を聞けました!

アートウィーク東京の「AWT FOCUS」は、アートを身近に感じられる催しです。森美術館館長の片岡真実さんは、展示の仕方にもこだわっていたので、気に入った作品があったらぜひ壁ごと購入を!

……壁ごとは難しいかもしれませんが、気に入った作品があったらぜひ、自宅でも楽しめるように購入してみてください。

アートを身近に取り入れた生活は、また違った毎日にしてくれるはず。たまには現実から一息ついて、アートを通して自分自身と向き合う時間を作ってみてくださいね。

AWT FOCUS:大地と風と火と:アジアから想像する未来」

会期:2024年11月7日(木)〜10日(日)
時間:10:00〜18:00(最終入場17:30)
会場:大倉集古館(東京都港区虎ノ門2-10-3)

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