こんにちは、恐竜おねえさんこと生田晴香です。今回は映画『ジュラシック・パーク』シリーズに登場する、ラプトルのモデルとなった恐竜を紹介します。映画だとヴェロキラプトルだとされていますが、果たしてその正体は……?

連載コラム「生田晴香、恐竜と生きる」。福井恐竜博物館 公認恐竜博士、古生物学会友の会・恐竜倶楽部メンバーでもある自他共に認める恐竜ラバーのタレント生田晴香が、恐竜の素晴らしさを隅から隅まで語り尽くします。壮大な歴史とドラマ、未解明の不思議が交差する魅惑の恐竜ワールドへ、ようこそ! - singles編集部

大人気なラプトルのモデルは……

画像: プライム1スタジオにて撮影

プライム1スタジオにて撮影

『ジュラシック・パーク』シリーズでは、ラプトルと呼ばれるヴェロキラプトルが大活躍し、『ジュラシック・ワールド』シリーズでは、ラプトルのブルーがヒロインを務め、圧倒的人気キャラとなった「ラプトル」。

じつは、ジュラシックシリーズのラプトルは、デイノニクスという恐竜がモデルなのはご存知ですか?

画像: ダイナソーズイマージュにて撮影

ダイナソーズイマージュにて撮影

実際のヴェロキラプトルは、約1.8メートルの大型犬くらいのサイズ(長いしっぽを除く)の小型肉食恐竜で、映画では迫力を出すために実際より大きいデイノニクスをモデルとしているのは、恐竜マニアには有名な話です。

ヴェロキラプトルは、中生代白亜紀後期(約8300万〜約7000万年前)の中国・モンゴルに生息し、デイノニクスの生息地であるアメリカより遠く、違う時代を生きていました。

同じ獣脚類ドロマエオサウルス類で、見た目はどちらも似ていますが、もちろん同じ恐竜ではありません。北米のティラノサウルスと、アジアのタルボサウルスが見た目が似ているけど違うように、こちらも別種です。

画像: 恐竜センターにて撮影

恐竜センターにて撮影

もともと、ヴェロキラプトルは頭骨と手の一部しか発見されておらず、そこまで注目されていませんでしたが、ヴェロキラプト対プロトケラトプスの格闘化石という素晴らしい発見があり、デイノニクスはヴェロキラプトルなのでは? なんていう説も出てきて注目されるようになりました。

では、デイノニクスとはどんな恐竜なのか? を紹介します。

デイノニクスについて

画像: 福井県立恐竜博物館にて撮影

福井県立恐竜博物館にて撮影

学名「デイノニクス・アンティロプス(Deinonychus antirrhopus)」。

1964年に化石が発見され、1969年に、イェール大学の古生物学者ジョン・オストロムによって名付けられました。名前の意味は、デイノニクスが「恐ろしい爪」で、種小名のアンティロプスが「しっぽでバランスをとる」、です。

全長は約3.4メートル、体重は約70キログラム。顎は、U字型ではなく、V字型かのようにほっそりとしてます。

見た感じ目立つのは、前あしの長さ! 手長いですねー! 鳥類と同じく、肘を曲げると連動するように手首が折りたたまれる仕組みです。

うしろ足は第2指が大きくクイッとなっていて目立ちますね。これは、移動するときには爪をもち上げて鋭さを保ち、いざというときに飛びかかって一気に振り下ろすという強力な武器となります。

ドロマエオサウルス類の第2趾の指先は、180度以上動かせたと考えられています。シックルクローですね、恐ろしい鉤爪に狙われたら命の保証はありません。

かたく真っ直ぐ伸びたしっぽは、よくしなり、付け根の部分は、自ら上下方向にコントロールして動かすことができ、垂直にはね上げることもできたと考えられます。

生きていた時代は、中生代白亜紀前期と、ヴェロキラプトルよりも全然古い時代の肉食恐竜です。化石が発見された場所は、クロヴァリー層ほか、アメリカのモンタナ州で見つかっています。

画像1: 恐竜博2019にて撮影

恐竜博2019にて撮影

ほかにも、デイノニクスの尾椎と血道の間に、別のデイノニクスかと思われる左手の第3指の鉤爪が挟まるような状態で化石になっているのも……。

この化石から、デイノニクス同士の共食いの可能性が指摘されました。かわいい子同士の共食い、ちぎれた体を口に挟み食うデイノニクス……想像したらよだれがとまりません。共食いイラストが得意な方は、ぜひ復元チャレンジしてみてください。喜ぶ人間多いと思います。

歯は小さめですが、ナイフ状で鋭く尖っていて、後方に向いています。攻撃は、歯というより爪がメインだったのでしょう。

なお、オルニトミムスをはじめとした速く走ることができる恐竜は、足の骨が束状にまとまっているアークトメタターサル構造になっている一方で、デイノニクスはうしろ足の中足骨が、アークトメタターサル構造になってないんです。

このことから分かるように、走るのはそこまで速いタイプではないので、待ち伏せして奇襲攻撃をしかけていたかもしれません。

羽毛復元で、もふもふな姿も

画像2: 恐竜博2019にて撮影

恐竜博2019にて撮影

昔の復元では、ジュラシックシリーズのラプトルのようにウロコで復元されていますが、羽毛恐竜である可能性がとても高いので、最近は羽毛復元が一般的になっています。

画像: ミュージアムパーク茨城県自然博物館にて撮影

ミュージアムパーク茨城県自然博物館にて撮影

ミュージアムパーク茨城県自然博物館の復元デイノニクスは、もっふもふ。

ヴェロキラプトルの場合は、前あしに羽毛が生えていた跡のポツポツがあるので羽毛恐竜だとわかります。デイノニクスは、実際の羽毛の痕跡が発見されたわけではありませんが、近い仲間からみて羽毛はあったと判断できます。手の部分は翼かのようです。

まとめ

ヴェロキラプトルとデイノニクスの違い、わかってもらえたかと思います。どちらも同じなのは、とにかく最上級に美しいということです。

ヴェロキラプトルに注目されがちですが、博物館に行けばデイノニクスは結構置いてありますよ!

じつはデイノニクスの発見で、恐竜はこれまで変温動物だと思われていたのが、恒温動物だと考えるきかっけとなりました。「恐竜ルネサンス」というやつですね。

1つの発見からだいぶ大きく変わるので、やはり恐竜は面白いですね。

画像: 現代の羽毛動物と!

現代の羽毛動物と!

では!

画像: 正体は別の恐竜だった!?『ジュラシック・パーク』シリーズの“ラプトル”のモデルとは

生田晴香 | Haruka Ikuta

恐竜タレント。TV、CMのほかモデルとして活躍中。福井恐竜博物館の公認恐竜博士で恐竜検定所持。恐竜トークショー、クイズ、鳴き声コンテスト審査員。古生物学会友の会&恐竜倶楽部メンバー。恐竜のうた「ダイナソーDANCE」監修。実は元あやまんJAPAN。

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