こんにちは、恐竜おねぇさんこと生田晴香です。今回は、見た目はティラノ、頭脳もティラノ? な、アジアのティラノサウルス「タルボサウルス」を紹介します。この2頭、とても似ている肉食恐竜なんです! あなたは見分けられますか!?

連載コラム「生田晴香、恐竜と生きる」。福井恐竜博物館 公認恐竜博士、古生物学会友の会・恐竜倶楽部メンバーでもある自他共に認める恐竜ラバーのタレント生田晴香が、恐竜の素晴らしさを隅から隅まで語り尽くします。壮大な歴史とドラマ、未解明の不思議が交差する魅惑の恐竜ワールドへ、ようこそ! - singles編集部

アジアのティラノサウルスって何?

“アジアのティラノサウルス”なんていうと、まるでアジアにティラノサウルスがいるかのようですよね。

例えば、よく恐竜イベントの広告でモササウルスなどの海棲爬虫類を「海の恐竜」、プテラノドンみたいな翼竜を「空の恐竜」と呼ぶような感じです。何も知らない人からしてみたら、それらは恐竜だと勘違いさせてしまうかもしれません。

“アジアのティラノサウルス”という呼び方も同じく勘違いしやすくなってますが、ティラノサウルスとタルボサウルスは別物で、アジアにティラノサウルスはいません。ティラノサウルスは北米に生息していた恐竜です。

なぜアジアのティラノサウルスなんて例えたかというと、とにかくティラノサウルスに似てるんです! 見た目でどっちだか判断できる人はなかなかいませんが、もし当てたらすごいのでクイズを出しましょう。

画像: 恐竜センター、国立科学博物館にて撮影

恐竜センター、国立科学博物館にて撮影

こちらの2体の恐竜、いかにもな肉食恐竜なのですが、左右どちらが何の恐竜だかわかりますか?

ティラノサウルスか、タルボサウルスか、それとも両方同じなのか……。

それかまさかの、急にゴルゴサウルスという肉食恐竜を登場させ難易度を上げていくのか。

こんがらがりそうなので今回はティラノサウルスとタルボサウルスのみのクイズにします。博物館好きは背景でわかっちゃうかもですね。

群馬県立自然史博物館にて撮影

ちなみにゴルゴサウルスはこちらです。こちらも似てますよね。

では答えを!

画像: アジアのティラノサウルスって何?

正解は……、
左がタルボサウルスで、右がティラノサウルスです!(正解者に拍手)

“暴君トカゲの王”「ティラノサウルス」とは?

画像: 国立科学博物館にて撮影

国立科学博物館にて撮影

ティラノサウルス(Tyrannosaurus rex)といえば、超肉食恐竜で誰もが知る恐竜界のトップアイドルです。名前の意味は暴君トカゲの王の、永遠の知名度No. 1恐竜!

全長約13メートル、約9トンの重さで、がっしりとした顎の筋肉が異様なほど発達しているのとバナナのような太い歯で、恐竜を骨ごと噛み砕くことができました。

大きな体なのに前あしは小さく、見た目は二本指だけど片手で200キロは持ち上げられる力があり、後ろ足はアークトメタターサル構造で早く走ることができます。

嗅覚も優れていて遠くや物陰にいる獲物の臭いもすぐにキャッチ。時代は約6800万年前〜6600万年前。分類は、竜盤類獣脚類テタヌラ類ティラノサウルス上科。

大人の化石がいっぱい出てきたことでいろいろ判明しているのですが、無限にすごいところが出てきて話が終わらなくなるのでこのへんで。

とにかく、白亜紀末の北アメリカを牛耳っていたのが、ティラノサウルスなんです!

“恐れを抱かせるトカゲ”「タルボサウルス」とは?

画像: 福井県立恐竜博物館にて撮影

福井県立恐竜博物館にて撮影

タルボサウルス・バタール(Tarbosaurus bataar)。名前の意味は、恐れを抱かせるトカゲです。バタールはモンゴル語で「英雄」を意味します。

全長9.5メートルの4トンの重さで、優れた嗅覚があり、がっしりとした太い顎を持っていて歯も太いことから噛む力が非常に大きいことがわかります。頭骨の横幅はティラノサウルスと比べると少し狭めです。

こちらも大きな体なのに前あしは小さく二本指で、見た目ティラノサウルスと似ていますが比べると少し小柄です。前あしもティラノサウルスの方が大きいですね。

あのティラノサウルスの前あしのことを大きく感じる日が来るとはなんだか不思議です。

分類は、竜盤類獣脚類テタヌラ類ティラノサウルス上科……と、ティラノサウルスと同じで属違いです。系統樹にするとお隣さんといいますか、とにかくとても近く、兄弟的なイメージを持ってもらえばいいと思います。

化石は大人から子どもまで多く発見されている肉食恐竜です。

子どものころは大腿骨より脛骨のほうが長く、大人になるにつれて大腿骨の方が長くなっていきました。骨の長さが2倍になると骨の体積は8倍に増加。重くなっていく体を支えるために後ろあしは太くなっていきます。

子どもの頭骨は華奢で歯も細いので、大人と同じ獲物を食べていたとは考えにくく、成長する過程で食べるものを変えていたと考えられています。

ティラノサウルスもそうですが、成長していくと獲物や体格が変わるんですね。時代はティラノサウルスより少し前には誕生していました。

棲み分け

タルボサウルスはアジア(モンゴル)に生息していました。そう、アジアを牛耳っていたのはタルボサウルスだったのです!

タルボサウルスとティラノサウルス、時代や場所が同じならエサの取り合いもしていただろうしどっちが強いのか争っていたでしょう。

ティラノサウルスとタルボサウルスは祖先が同じだと思われています。現在は海峡となっていますが当時は北アメリカとアジアは陸で繋がっていました。

これまで、ティラノサウルス類の起源は北米とされてきましたが……前回ご紹介したカンクウルウは覚えていますでしょうか。
カンクウルウの発見から、大型ティラノサウルス類の起源はアジアだという論文が出たのです。

その通りだとすると、タルボサウルスの仲間から北米大陸に移動し、ティラノサウルスが誕生したのかもしれません。

  • 北アメリカのティラノサウルス
  • アジアのタルボサウルス

上記で覚えておきましょう!

画像: 棲み分け

では!

画像: あなたは見分けられるか!? “アジアのティラノサウルス”な「タルボサウルス」をクイズ付きで解説

生田晴香 | Haruka Ikuta

恐竜タレント。TV、CMのほかモデルとして活躍中。福井恐竜博物館の公認恐竜博士で恐竜検定所持。恐竜トークショー、クイズ、鳴き声コンテスト審査員。古生物学会友の会&恐竜倶楽部メンバー。恐竜のうた「ダイナソーDANCE」監修。実は元あやまんJAPAN。

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