こんにちは、恐竜おねえさんこと生田晴香です。モンゴルから新しい王子が誕生しました。その名も「カンクウルウ」! もちろん、こちらは恐竜コラムなので人ではありません、恐竜です。カンクウルウの発見から進化過程の解明などいろいろわかってきたので紹介します。

連載コラム「生田晴香、恐竜と生きる」。福井恐竜博物館 公認恐竜博士、古生物学会友の会・恐竜倶楽部メンバーでもある自他共に認める恐竜ラバーのタレント生田晴香が、恐竜の素晴らしさを隅から隅まで語り尽くします。壮大な歴史とドラマ、未解明の不思議が交差する魅惑の恐竜ワールドへ、ようこそ! - singles編集部

ティラノサウルスの新種発見!?

2025年6月12日(木)、新しい恐竜が新属新種として発表されました。その名も「Khankhuuluu mongoliensis(カンクウルウ・モンゴリエンシス)」!(拍手)

「ティラノサウルスの新種発見!」と、カンクウルウの話で話題になり、いろんなメディアで新種のティラノサウルス発見だと記事が出ていましたね。

画像: ティラノサウルス 。国立科学博物館にて撮影

ティラノサウルス 。国立科学博物館にて撮影

ここで、何かおかしいと気付きましたか? ティラノサウルスが発見されたんだよね……カンクウルウって何? と。

@yahoonewstopics post on X

x.com

Yahoo! ニュースだけで1.6万リポスト、すごいですね。新しいティラノサウルスが出たとなると銀河的に大大大ニュースとなるわけですが……。

まず、カンクウルウという新しいティラノサウルスが発見されたとなると、「ティラノサウルス・カンクウルウ」となりますよね。

例えばトリケラトプスだと「トリケラトプス・ホリドゥス」と「トリケラトプス・プロルスス」がいるので、トリケラトプスに新種ができたとすると「トリケラトプ・〇〇(また違うやつ)」となります。

じつはこの件は、新種のティラノサウルスの発見ではなく“ティラノサウルス類”……とどのつまりティラノサウルスの仲間「カンクウルウ・モンゴリエンシス」という恐竜が発見されたということなので、タイトル詐欺となります。

たった一文字「類」がを付けるかどうかで全然意味が違っちゃうんですね。恐竜だけじゃなく何でもそうですが、間違った情報でないかしっかり確認しておきたいところです。

さて、本題のカンクウルウとは何かを知っていきましょう!

学名の意味は「竜の王子」

学名、カンクウルウ・モンゴリエンシス(Khankhuuluu mongoliensis)。

画像: 画像中央:カンクウルウ、左:アリオラムス、上:ティラノサウルス、右:ゴルゴサウルス www.hokudai.ac.jp

画像中央:カンクウルウ、左:アリオラムス、上:ティラノサウルス、右:ゴルゴサウルス

www.hokudai.ac.jp

色が似ていてわかりにくかもしれませんが、真ん中の恐竜がカンクウルウです。

学名の意味は、「Khankhuuluu」はモンゴル語の王子と竜を組み合わせたもので、種小名「mongoliensis」はモンゴルの、これらをあわせて「モンゴルの竜の王子」となります。
(ちなみにヴェロキラプトル・モンゴリエンシスの種小名もモンゴリエンシスなので一緒ですね。)

時代は中生代白亜紀後期の約9,000万年前で、モンゴルのゴビ砂漠から発見されています。2025年3月に発表された、テリジノサウルス類のデュオニクスと同じ地層です。

元々は約50年前にアレクトロサウルスという恐竜だとされていた化石だったのが再分析され、足の形などが違うことが分かったことで、この化石はアレクトロサウルスではない別モノだと新属新種となり、カンクウルウと名付けられました。

中型のティラノサウルス類で、大きな鼻洞、棚のような涙の角、長い脚のような特徴があります。全長約4メートル、体重500キロ未満とティラノサウルスの仲間にしては小さめです。子どものティラノサウルスに似た特徴があります。

復元図を見たとおり、とても美しい恐竜です。

起源はアジア!?

これまでティラノサウルスの起源は北アメリカにあり、そこで大型化していったと考えられてきました。

ティラノサウルスは全長約12メートルと大きな恐竜として有名ですが、どうやって大型になっていったのか、その進化の途中の化石がこれまでほとんど見つかっていなかったのです。

しかし、今回の発見が「進化の空白」を埋めるカギとなったのです!

「カンクウルウ」を含む、アジアや北アメリカで見つかった32種類のティラノサウルスの仲間の化石について骨の特徴を比較して分析したところ、ティラノサウルスの仲間は最初にアジアで現れました。とどのつまりティラノサウルスの祖先ですね。

その後アジアと北アメリカの間を行き来しながら大型化し、大型ティラノサウルス類は北米に移動して、多様化・過形成熟していきました。

@carni_voris post on X

x.com

大型ティラノサウルス類はその後頂点を迎えるのですが、そのときに「幼形成熟」という幼い形のまま進化していく仲間ができた一方で、タルボサウルスの仲間から北米大陸に移動し、ティラノサウルスが誕生……。

これは、北海道大学総合博物館のダイナソー小林こと小林快次教授と、カルガリー大学などの国際共同研究チームが発表した研究結果です。

本記事では簡単にまとめたので、もっと詳しく知りたい方は論文をチェック!
「A new Mongolian tyrannosauroid and the evolution of Eutyrannosauria(モンゴルの新しいティラノサウルス類とエウティラノサウルス類の進化)」

「センセーショナルな研究結果なので、反論の論文がすぐにでも出てきそうな予感、、、」と小林快次先生はX(旧Twitter)にてポストしていましたがどうなるのでしょう。反論はあったらあったで面白くなりそうですね。

画像: 大型になった生田晴香(体重過去最高の重さ)

大型になった生田晴香(体重過去最高の重さ)

では!

画像: ティラノサウルスの祖先? 新恐竜「カンクウルウ」発見で進化の空白発覚!

生田晴香 | Haruka Ikuta

恐竜タレント。TV、CMのほかモデルとして活躍中。福井恐竜博物館の公認恐竜博士で恐竜検定所持。恐竜トークショー、クイズ、鳴き声コンテスト審査員。古生物学会友の会&恐竜倶楽部メンバー。恐竜のうた「ダイナソーDANCE」監修。実は元あやまんJAPAN。

YouTubeちゃんねる「恐竜わっしょい!」始めました。

Instagram

前回はこちら

おすすめの新着記事

よく読まれている記事

This article is a sponsored article by
''.