自己紹介》
『singles』をご覧の皆さんこんにちは!モデルをしながらライターとして記事を書いている「紺野ミク」です。こちらでは映画大好きな私がオススメする作品を紹介しています。好きなジャンルは考察系、クソ映画、鬱映画など見終わった後にモヤっとする映画が大好きです(笑)独断と偏見で楽しくツッコミながら紹介していくのでよろしくお願いします☆
承認欲求がもたらす破滅を描いた北欧ホラー『シック・オブ・マイセルフ』
(C) Oslo Pictures / Garagefilm / Film I Vast 2022
注目を浴びたいという承認欲求が暴走し、自身を傷つけていく若い女性の破滅を描いた北欧のサスペンスホラー『シック・オブ・マイセルフ』(2022)。
『わたしは最悪。』(2021)のオスロピクチャーズ製作で、本作が長編第2作となる新鋭 クリストファー・ボルグリ氏が監督・脚本を手がけています。
主演は『ホロコーストの罪人』(2020)のクリスティン・クヤトゥ・ソープ。人生に行き詰まった末、最狂の承認欲求モンスターになっていく主人公 シグネの姿をリアルに演じています。
メインビジュアルにも書いてある、
「暴走する自己愛に、嫌悪と共鳴が止まない“セルフラブ”メディケーション・ホラー」
というキャッチコピー!
この映画はまさにその通りで、主人公シグネに対して嫌悪するか、共鳴するかの二分になる映画なんです!!
果たしてあなたはどこまでシグネに共感出来る??
恋人への激しい嫉妬と羨望
(C) Oslo Pictures / Garagefilm / Film I Vast 2022
舞台はノルウェーの首都オスロ。カフェで働く女性シグネは、長年にわたり競争関係にあった恋人トマスが、アーティストとして認められ脚光を浴びたことで激しい嫉妬心と焦燥感を感じるようになります。
シグネはどうにか自分も注目されるため、トマスのオープニングパーティーで、わざとナッツアレルギーのフリをして苦しみだします。すると周りから心配され、パーティーの注目はトマスよりシグネに……。
注目されることになんとも言えない高揚感を覚えたシグネの承認欲求は、ついに超えてはいけないラインを超えてしまいます。
そう……、
(C) Oslo Pictures / Garagefilm / Film I Vast 2022
シグネはとうとう違法薬物に手を出してしまうのです!!
ロシア製の「リデクソール」という薬の副作用で、皮膚がただれた人の画像をネットで見つけたシグネが思いついたのは、
自分も皮膚がただれていけば注目を集められる!!
という恐ろしい考えだったのです。
(C) Oslo Pictures / Garagefilm / Film I Vast 2022
思惑どおり、薬の副作用で入院することになったことでトマスからの関心は得たものの、シグネの欲望は収まらず、さらにエスカレートしていってしまうのです……。
誰の心にもいるであろうモンスター
シグネの承認欲求はあまりに度を超えたものではあるものの、「誰かに認められたい」という気持ちは誰もが持っている感覚のような気がします。
(C) Oslo Pictures / Garagefilm / Film I Vast 2022
「仕事がうまくいった、美味しいご飯を作れた」といった日常のこともそうだし、「私ってかわいいでしょ?」とSNSに載せる写真だったり、人は誰かに注目されたい生き物だってことは皆自覚していると思うんです。
だけどシグネは、嘘をついても、体を傷つけてもその欲求を満たしたい衝動に駆られています。
(C) Oslo Pictures / Garagefilm / Film I Vast 2022
このシーン、めちゃくちゃ「今どき」っぽいなって思った印象的な場面なんですが、入院したシグネは傷だらけな体やただれた皮膚を病院の鏡ごしにパシャッと撮ります。お尻を出してまで。
どう見ても「そんなことしてる場合ちゃうやろ!」案件なんですが(笑)、シグネはとても満足そうです。
これって今のSNSでもとても多い現象ですよね。風邪のときに体温計の写真をアップして熱アピールをしたり、怪我や事故の写真を載せたり。
そう思うと、世の中はシグネ予備軍で溢れかえっているんですよね。
ミュンヒハウゼン症候群という疾患
シグネのように、周囲の関心や同情を引くために病気を装ったり自らの体を傷付けたりするのは、「ミュンヒハウゼン症候群」と呼ばれる精神疾患の一つでもあるみたいです。
(C) Oslo Pictures / Garagefilm / Film I Vast 2022
シグネの場合、違法薬物を摂取することで死ぬ危険があると分かっていてもやめられない。顔や全身の皮膚がただれても、髪が抜けても、血を吐いても、それでも自分は奇病であると言い続けることで周囲の関心を集めたい。
ここまで来るともう自分の力で制御することは難しく、専門的なサポートや医療機関で治療していくしかないのですが、シグネの周りにはそれを諭してくれる人もいないんですよね。
他者を介在させずに自分を愛することの重要性
私が『シック・オブ・マイセルフ』を観ていて一番最初に思ったこと。それは……、
トマスのどこがいいの!?
ってことです。
物語を観ていると、最初からトマスは全然いい男じゃないんですよ!(笑)
食い逃げするわ万引きするわ、それをシグネにもやらせるし、なんでこんな男と付き合ってるの! が素直な感想で、どちらかというと私は終始シグネに嫌悪感を抱いてました(笑)
(C) Oslo Pictures / Garagefilm / Film I Vast 2022
でも物語を観ていると、シグネは人生のすべてが「誰かに認められること、気にかけてもらえることで自分に価値を感じれる」人間なんですよね。
だからトマスがどんな男でもいいから自分に関心を持ってほしいと思ってしまう。それでやっと自分の存在を確認できる。だけどそれも一瞬のこと。そしてまた関心を得たくて繰り返す。
でも私は、
他者を介在させずに自分を愛することが自信に繋がるって思うんです。
他人がまったく関わらない部分の自分に自信を持つ。「自分のここが好き」でもいいし、「これをしているときの自分が好き」でも、どんなに小さいことでもいい。とにかく他人が介在していない自分の絶対的な何かを愛する。
もちろん誰かに認められることで感じる喜びはあるんですけど、人生のすべてがそれになってしまうと、シグネのように他人ありきの人生になってしまう。
何か一つでいい、自分を認めてあげる、愛してあげる。あなたは凄いよ頑張ってるよって自分に言ってあげるのは絶対に大切です。
シグネもカフェで働く自分を愛してあげて欲しかった。全然つまらない人生なんかじゃない、美味しいコーヒーで誰かが喜んでくれている。そんな風に小さい喜びでも誇りに持ってほしかった。
私はシグネの行動を理解できないけど、きっと共感する人もたくさんいるんだろうなと感じました。
とってもカロリーを使う映画なので、心が健康なときに観るのをおすすめします!(笑)
『シック・オブ・マイセルフ』、週末のお供にいかがですか?
【シック・オブ・マイセルフ 予告動画】
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