連載コラム「生田晴香、恐竜と生きる」。福井恐竜博物館 公認恐竜博士、古生物学会友の会・恐竜倶楽部メンバーでもある自他共に認める恐竜ラバーのタレント生田晴香が、恐竜の素晴らしさを隅から隅まで語り尽くします。壮大な歴史とドラマ、未解明の不思議が交差する魅惑の恐竜ワールドへ、ようこそ! - singles編集部
コンカベナトールって?
学名、「Concavenator corcovatus(コンカベナトール・コルコヴァトゥス)。
コンカヴェナトル、コンカベナトル……図鑑や地域の方言によってはカタカナ表示がさまざまなのがこの恐竜。コンカベナトールとコンカヴェナトルは違う恐竜なのでは? と思う方もいるかもしれませんが、どれもConcavenatorであることは同じなので各自好きに呼びましょう。この回はコンカベナトールで進めていきます。
学名の意味は、クエンカ(スペインの地名)。背に帆のあるハンターです。2010年に発表されました。

巨大恐竜展2024にて撮影
見た目は一見落ち着いた感じの、よくいそうな肉食恐竜に見えるコンカベナトールは、背中の帆……というほど大きくありませんが、まるでコブかのような盛り上がりがあるのが特徴的な肉食恐竜です。
時代は約1億3000万年前の白亜紀前期、スペインのラーゲルシュテッテンと呼ばれるラス・オヤスから化石が発見されました。
当時のラス・オヤスは湿地帯だったということが層状の石炭岩からわかっています。低地はシダ植物が生えていて、池や沼……一時的な水路などがあり、雨季や乾季がありました。乾季の平均気温は20度くらい、雨季には40度くらいまでなっていたと考えられています。
シダ植物はラス・オヤスの湿地帯では植物化石の7割を占めるほどたくさん発見されており、さらには燃えた痕跡もあったことから森林火災が起きたであろうことがわかります。
火災から逃げるコンカベナトール……水辺にいるコンカベナトール……背景がわかり想像してみるとどちらも絵になりますね。
分類は竜盤類、獣脚類、カルカロドントサウルス類、カルカロドントサウルス科。
カルカロドントサウルス科の初期の一種だと考えられています。ちなみに、カルカロドントサウルスという全長約12メートルの大きい肉食恐竜がいるのですが、それも含めジュラ紀の肉食恐竜で一番有名なアロサウルスの仲間です。
いろんな恐竜名が出てきて「?」となるかもしれませんが、ディープな恐竜好きな人間というのはだいたいどの恐竜がどこの分類に入るのか知らないとスッキリしない病ですし、このさき恐竜検定があるとしたら分類問題は絶対出るので覚えておきましょう!
全長は約6メートル。約8メートルのアロサウルスに比べると少し小さく、カルカロドントサウルスの約12メートルと比べると半分ですが人間からしてみたらそれでも十分大きいですね。
背中のこぶの謎
ラス・オヤスで発見されたコンカベナトールはすごくレアでほぼ全身、手足の一部を除きほとんど関節でつながっている状態で見つかりました。
デスポーズは……首としっぽは背中側に反った状態ですね。

図を見てみましょう。右の真ん中あたりが頭で右を向いて歯も見えており、左下は腕があって、左上は腰や足があります。背中をグルンと「の」を書くようにしっぽが頭骨に向かっているのがわかります。
素晴らしいことに胴椎(背骨)は13個全部関節していて、胴椎の神経蕀にはほかの肉食恐竜にはない特徴があります。
後方2つの胴椎(第11、12胴椎)では神経棘が長く、なんと第10胴椎の2倍以上の長さです! ここだけ長いので、背中に帆があるのかな? 帆とまではいわずコブみたくなってるのかな? と目が行きます。
第13胴椎の神経蕀は低いので、やはりその部分だけ長くぴょこっと出ている感じのチャームポイントになっています。
このぴょこ(コブ)は何のためにあったのでしょう?
ほかの恐竜を襲っていたので迫力を出したのではないかなぁと考えてみましたが、まぁ人間みたいに髪型や刺青などいきなり自分で見た目を変えたりできるわけではないので(元々の骨なので)、コンカベナトール本人に聞いたところで知らないと言われそうですが、ディスプレイ説はありそうです。
モテるためとか、もしかしたら体温調節にも役立っていたのかもしれません。研究者からは、ラクダみたいに肉厚な体組織に脂肪を蓄えることに役立っていた可能性があるとも言われています。
羽毛恐竜?

腕の尺骨に小さな突起がぽちぽちと並んでいます。これは現生鳥類や一部の獣脚類の恐竜にもみられるものに似ていることからコンカベナトールにも風切羽があったと思われます。
化石を見て復元図を描いてみるなら、体は基本的に鱗にして腕のところに羽毛をパパッと生やしておくと、例えイラストが上手くなかったとしてもコブと腕の羽毛ですぐにどの恐竜かわかってもらえるでしょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。特徴バッチリ覚えられたのではないかと思います。実は皮膚の痕もあり、肉球と爪の痕跡もあるんです。素晴らしい化石ですよね!
肉球といえば、恐竜にも猫みたいに肉球があったと言われていることをモチーフにしているお菓子を恐竜王国である福井でお土産に買いました。美味しかったのでオススメです。
コブがあるコンカベナトール、覚えておきましょう!
ウェェェイ
では!

生田晴香 | Haruka Ikuta
恐竜タレント。TV、CMのほかモデルとして活躍中。福井恐竜博物館の公認恐竜博士で恐竜検定所持。恐竜トークショー、クイズ、鳴き声コンテスト審査員。古生物学会友の会&恐竜倶楽部メンバー。恐竜のうた「ダイナソーDANCE」監修。実は元あやまんJAPAN。
YouTubeちゃんねる「恐竜わっしょい!」始めました。