《自己紹介》
『singles』をご覧の皆さんこんにちは!モデルをしながらライターとして記事を書いている「紺野ミク」です。こちらでは映画大好きな私がオススメする作品を紹介しています。好きなジャンルは考察系、クソ映画、鬱映画など見終わった後にモヤっとする映画が大好きです(笑)独断と偏見で楽しくツッコミながら紹介していくのでよろしくお願いします☆
ノルウェーの銃乱射事件を映画化『ウトヤ島、7月22日』
2011年7月22日にノルウェーのウトヤ島で起こった無差別銃乱射事件を、生存者の証言に基づき映画化した『ウトヤ島、7月22日』。
政府庁舎前の爆弾で8人、ウトヤ島の銃乱射で69人! 単独犯としては史上最多となる、
77人の命を奪った大事件を、主人公 カヤの視点から、事件に巻き込まれた若者たちの恐怖をリアリズムたっぷりに描いた作品です。
監督は『おやすみなさいを言いたくて』(2013)『ヒトラーに屈しなかった国王』(2016)のエリック・ポッペ氏。本作は2018年 第68回ベルリン国際映画祭コンペティション部門にも出品されました。
そしてこの映画最大のポイントは、なんと……、
“72分のワンカット”で撮影されたものなんです!!
よりリアルに、より鮮烈にこの事件の恐ろしさを伝えるべくして撮られた72分のワンカットは、圧巻以外の何者でもありません!
日本では限定的な報道しかされていなかったため、そもそもこの事件を知らない人の方が多いはず。でも、私たちは絶対に知っておかなければいけない歴史的事件なのです。
ウトヤ島でのサマーキャンプで起きた悪夢
2011年7月22日、ノルウェーの首都オスロの政府庁舎前で車に仕掛けられていた爆弾が爆発します。世間が混乱するなか、オスロから40キロ離れたウトヤ島では、主人公の少女 カヤと妹のエミリエを含めた10代〜20代の若者たちがノルウェー労働党青年部のサマーキャンプを楽しんでいました。
それぞれがテントを立てたり交流したり過ごしていると、突然、
「ドーーーーンッ」
と一発の銃声が鳴り響きます。逃げ惑う人々。カヤは何が起きてるのかわからないまま、とにかく皆が逃げる方へ走ります。
物語はここからもうずーっと緊迫の時間です!
97分間の本編のうち、銃乱射事件発生から収束までの72分間を、逃げるカヤの視点で追っかけたワンカット。銃声と逃げる若者の声だけが響き、まさに自分がリアルタイムで逃げているかのような臨場感と恐怖が襲ってきます。
犯人は誰なのか??
なんと死者77人を出したこの事件を起こしたのは、32歳のノルウェー人
「アンネシュ・ベーリング・ブレイビク」という男
たった1人だったのです!!
極右思想の持ち主であるブレイビグは、政府の移民政策に不満を抱きテロを計画。
ウトヤ島で労働党青年部のキャンプが行われる7月22日に狙いを定め、オスロで爆破を実行したのちに車で移動。警官に成りすましてボートでウトヤ島へ上陸。何の罪もない少年少女を、いきなりライフルと小銃で手当たり次第に撃ちまくりました。
現地からの度重なる救助要請の通報にもかかわらず、警察の初動ミスに通信トラブルが重なったため、ブレイビクの冷酷な凶行はじつに72分間にも及び、69人の若者が島で命を落としたのです。
音楽、編集など過剰な演出は一切なし!
ワンカット映画は今までたくさん観たことがありますが、ここまでリアルなのは正直初めてだったかもしれません。ワンカットでもあとから音楽や編集を加えたものも多いなか、『ウトヤ島、7月22日』では、そういった過剰な演出は一切なし!
ただただ乱射する銃声が響き、人々が逃げる叫び声や足音、隠れているときの息づかいなど、本当にその場で出る音のみを使っています。
そして、さらに恐怖を加速させるポイントなのが、
「犯人の姿がほぼ映らない」ところなんです。
リアリティを追求した実話の映画化とはいえ、あくまで事実を元に作られたフィクションでもあります。犯人が銃を乱射する様子や、少年少女たちを追いかけるシーンなどがあってもおかしくはありません。
しかし、本作では犯人の顔や姿はほとんど映りません。そのため、犯人と対峙するようなド派手なシーンやアクションなどももちろんありません。
姿が見えないことで、犯人が子供なのか大人なのか? どんな人物なのか? なぜこんなことをするのか?
何もわからないまま逃げ惑い、撃たれて転がった死体だけを目の当たりにし、身を隠して息をひそめる。72分間がどれだけ長いかを実感させられる本当に恐ろしい映画なのです。
生存者の方々と作り上げた唯一無二の作品
ポッペ監督は、この事件の生存者の方々と2年の歳月をかけ、本作の映像化を実現させました。
「勇気を持っていただいたのは生存者の方々。2年間ずっと一緒に作ってくれた彼らこそが勇気のある人たちです。こういった人たちが放置されることがもっとも怖いこと」と、覚悟を持って協力し製作に臨んでくれた生存者の方々に感謝の意を述べています。
さらに、『ウトヤ島、7月22日』でもっとも意識したのは、「大多数の声や体験談」であるともインタビューで答えています。この映画では、ドラマチックやセンセーショナルな体験ではなく、大多数の人が体験したことを忠実に描きたかったとのこと。
つまりカヤの視点で描かれている物語ではありますが、その景色はたくさんの生存者の方が見てきた
恐怖の視点の詰め合わせであるということ。そう思いながら観ると、
「あの72分間は永遠に続くのかと思った」
と語った生存者の方の言葉が重くのしかかりますね……。
面白い、つまらないでは片付けられない映画
この映画を観た感想をネットで調べてみると「つまらない」だの「ワンカットにしなくていい」だのさまざまな意見があります。でも個人的には、面白いとかつまらないとかそんな言葉で片付けちゃダメだと思うんです。
「生存者の方達が思い出すのも辛いなか、事細かに詳細を語りこの映画のために尽力した。」
これがすべてです。もちろんモヤっとする映画だから紹介してるんですが、モヤっとして当たり前。77人が亡くなった事件に納得のいく終わりなんて絶対にないんですから。
この事件を知らない人にこそ観てほしい『ウトヤ島、7月22日』、週末のお供にいかがですか?
【ウトヤ島、7月22日 予告動画】