《自己紹介》
『singles』をご覧の皆さんこんにちは!モデルをしながらライターとして記事を書いている「紺野ミク」です。こちらでは映画大好きな私がオススメする作品を紹介しています。好きなジャンルは考察系、クソ映画、鬱映画など見終わった後にモヤっとする映画が大好きです(笑)独断と偏見で楽しくツッコミながら紹介していくのでよろしくお願いします☆
アリ・アスター × ホアキン・フェニックスの最強タッグ!
今回は、以前のコラムでも紹介している『ヘレディタリー/継承』(2018)や『ミッドサマー』(2019)を産み出した鬼才アリ・アスター監督最新作! 怪死した母のもとへ帰省しようとした男が奇想天外な旅に巻き込まれていく姿を描いたスリラー映画『ボーはおそれている』(2023)を紹介します。
こちらの作品、主演はなんと名優ホアキン・フェニックス!!
『ジョーカー』(2019)と同じ人とは思えないメインビジュアルで、マジで一瞬誰かわかりませんでした!(驚き)
「ジョーカー」でのシリアスな怪演とはまた別の不気味さがある今作は、
アリ・アスター × ホアキン・フェニックス × A 24
という、最強で最悪のタッグとなっています!(褒めてます)
そしてなんと、
179分(2時間59分)の長編作!!
な、長い!!(笑)
一気に見たいという方は、時間に余裕があるときに鑑賞するのをおすすめします。不思議な世界観と次々起こる展開に、ある意味パワーを使う映画になっていますがぜひ観てほしい作品です☆
『ボーはおそれている』とはどういうストーリーなのか?
物語は、日常のささいなことでも不安になってしまう怖がりの主人公 ボーが、大企業を経営する母親の急逝を電話で知り、実家を目指して旅をするというストーリーです。
まず冒頭に、精神科医とのカウンセリングの様子や処方される薬が映ることから、ボーが何らかの精神疾患を患っていることは明らかです。
ただ!!
この様子を最初に映すということは、この時点で視聴者にある警告をしているんですよね。
それは、これから起こるすべてのことは、
『ボーが精神病であることを前提で観て!!』
という、だから何が起きても許してね? というめちゃくちゃな要求を、アリ・アスター監督が観ている私たちにかましてきてるんですよ!!(笑)
もうこんなことを最初に突きつけられたら、こちらとしてはお手上げ。(笑)
(ぴったりすぎる画像がありました。笑)
この時点で、これは現実なのか? 妄想なのか? とひたすら悩まされる179分になることが確定しましたが、これぞ鬼才アリ・アスター監督の作品です。ボーのただの里帰りが、いつしか壮大で奇妙な旅へと変貌していくのです。
ボーがおそれているものとは?
小さい頃からボーのなかでの絶対的支配者であり権力者、それが「母親」です。常に行動を監視され抑圧された生活を送ってきたボー。その背景には「父親」の存在が大きく関係しています。
父親は浮気をし、ほかの女性との行為の最中に腹上死したと聞かされてきたボー。
女性との関係=悪 という意識と、父親のような男にはならないようにと刷り込まれてきたボーは、まともな人間関係を誰とも築かずに大人になりました。
小さい頃のトラウマは大人になっても消えることがないのと同じで、長い間抑圧されていた潜在意識がなくなることはありません。
『母親から解放されたい』と思っているのに、心がそれを許さない。父親から捨てられた可哀想な母親、自分しか拠り所がない母親。その母親を見捨てることができないボーは、心が子供のまま歳をとってしまったアダルトチルドレンなのです。
ボーがおそれているのはそんな母親でもあり、そこから抜け出せない自分でもあり、そして誰も助けてくれないこの世の中でもある気がします。
帰省中に起こる数々の奇妙な出来事
本当に母が死んだのか確かめるため実家に帰ろうとするボー。しかし一歩アパートを出るとそこから不思議なことが永遠と起こります。外はまるでゾンビ映画で退廃した街のよう。暴力や盗みがはびこる街で車に轢かれたボーは、運転していたグレースとその夫のロジャーに介抱されます。
しかしそこでも問題が起き、ボーは森の奥へ逃げ込みます。するとそこで旅する演劇グループ「森の孤児たち」に出会い、彼らの公演を見に行くことに。
しかし、なぜか自分の人生が舞台になったかのような公演と、そこで未来の自分を追体験するボー。さらに、マシンガンをぶっ放し大暴れする軍人が出現。実家に帰るだけの道のりがありえない出来事のオンパレードなのです。
この時点ですでに視聴者が置いてけぼりな気持ちになりますが、皆さんご安心ください!(笑)
最初にも説明した通り、
これはあくまで精神疾患を持つボーが見ている世界なのです。
つまりどれが本当でどれが嘘なのか? ボーという人間が存在するのかどうかさえ怪しく思えてきます。
だけどその境界線が分からないことこそが、この映画最大のおもしろさなのです。
色鮮やかなアニメーションパートに注目!
『ボーはおそれている』では、中盤に“ボーが歩んでいたかもしれない人生”がアニメーションパートとなって描かれています。
このパートには、チリのクリストバル・レオン氏とホアキン・コシーニャ氏が制作に参加。二人は2023年に日本でも劇場公開を果たし話題になった『オオカミの家』(2018)を制作したコンビです。
この『オオカミの家』でのアニメーションが、アリ・アスター監督の目にとまったことで今回の映画への参加へと繋がりました。
色鮮やかで繊細なアニメーションが、観ている人をより一層『ボーはおそれている』の世界に引きこんでくれます。
観る前から私たちはボーの母親に支配されている
じつは、視聴者である私たちは全員、最初からボーの母親の支配下にいるのです。どういうことかは公式サイトを見てほしいのですが、映画を「見た」と入力しないとサイトにはアクセス出来ないようになっているので、ぜひ本編を見たあとにじっくりご覧ください☆
この映画は最初から最後まで、ボーが見る本当か嘘か分からない世界が続く179分です。私たちにとっては奇妙な時間でも、ボーにとっては間違いなく現実であり、そして恐れ続けなければいけない179分が永遠と繰り返されているのです。
『ボーはおそれている』、週末のお供にいかがですか?
【公式サイトはこちら】
【ボーはおそれている 予告動画】