《自己紹介》
『singles』をご覧の皆さんこんにちは!モデルをしながらライターとして記事を書いている「紺野ミク」です。こちらでは映画大好きな私がオススメする作品を紹介しています。好きなジャンルは考察系、クソ映画、鬱映画など見終わった後にモヤっとする映画が大好きです(笑)独断と偏見で楽しくツッコミながら紹介していくのでよろしくお願いします☆
ヨルゴス・ランティモス監督が描くサスペンススリラー『聖なる鹿殺し』
以前紹介した『ロブスター』(2015)で、独特な世界観を描き注目を集めたギリシャの鬼才 ヨルゴス・ランティモス監督の長編作『聖なる鹿殺し』(2017)。1人の少年によって幸せな家庭が崩壊していく様子を描いた本作は、第70回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞したサスペンススリラーです。
このメインビジュアルからすでに伝わる不穏な空気。(笑)ロブスターでもタッグを組んだコリン・ファレルを主演に迎え、その妻にベテラン女優のニコール・キッドマン、家族を追い詰める少年にバリー・コーガンと個性的な面々が出演しています。
1人の少年によって壊される家族の物語
郊外の豪邸で暮らす心臓外科医スティーブンは、美しい妻とかわいい子どもたちに囲まれ順風満帆な人生を歩んでいます。しかしスティーブンには、家族には内緒でかわいがっている16歳の少年マーティンが……。
ある時マーティンを家に招待し、家族に紹介したことをきっかけに次々と奇妙な出来事が起こり始めるのですが、
とにかくマーティンが不気味すぎる!!
一度見たら忘れられない、不気味な存在感と表情。最初から何の説明もなく出てくるんですが、のちのち、スティーブンがなぜマーティンをかわいがっているのかが明らかになっていきます。
マーティンが用意した4つの悲劇とは?
ある日、マーティンに呼び出されたスティーブンは衝撃的なことを告げられます。それは、
家族の誰かを選んで一人殺さないと、スティーブン以外の家族全員が死ぬ
という、唐突すぎる話!!
16歳がなんか意味わからん事言ってるわ! と流したいのですが、マーティンはさらに不可解なこと言います。
それは4つの段階で家族に死が迫るというもの。
①最初に手足が麻痺し歩けなくなる
②食べることが出来なくなる
③目から血が出る
④そして死ぬ
いやいや、めっちゃ怖いやん。
メインビジュアルにも書いてある「“彼”は4つの悲劇を用意した。」ってのはこれのことなの!? あまりに悲劇すぎるしシンプルに怖い。
しかも、え? マーティンが実際に殺すとかいう話だと思ってたらそうじゃない!! 手足が麻痺して目から血が出る?
最初は信じてなかったスティーブンでしたが、実際に息子のボブが立てなくなり、食べ物を受け付けないという症状が出たことでマーティンの言うことが本当だと確信します。つまり、
家族の誰かを殺さないと全員が死ぬという究極の選択をしなければならないのです!!
ちなみに、なぜそんなことができるのかという描写は一切ありません。(笑)マーティンに特別な能力があるのか、呪いなのか。その謎は視聴者が考察できるようになっています。
タイトル『聖なる鹿殺し』が意味することとは?
映画を観ただけじゃ『聖なる鹿殺し』というタイトルの意味を理解できる人はほとんどいないかもしれません。本作はギリシャ悲劇『アウリスのイピゲネイア』に基づいているものなのです。
トロイ戦争の大将であり英雄のアガメムノンが、女神 アルテミスの鹿を弓で殺したことから始まる悲劇的なストーリーなので、詳しく内容が知りたい方はぜひ調べてみてください♪
マーティンとスティーブンの関係も『アウリスのイピゲネイア』に当てはめるとさらに面白いです。
あと気になったのが、邦題では『聖なる鹿殺し』と色分けされたメインビジュアルに、誰もが「聖なる」「鹿殺し」と思ってますよね?
でも原題は「The Killing of a Sacred Deer(キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア)」なので、本来は『聖なる鹿 殺し』なんですよ!
だいぶ意味が変わってくるので、これは監督の意図的なミスリードなのかどうかがめちゃくちゃ気になります。
幸せな家族の裏に見える人間の本質
家族の誰かを殺すという究極の選択を迫られたスティーブン。家族にそれを話すと、皆が皆、自分が助かることに必死です。
本来なら子供を絶対に守りたいと思うはずが、妻のアナは「子供はまた作れる」と言い出す始末。誰もが羨むような一家だったはずですが、この家族は本当に今まで幸せだったのでしょうか?
マーティンが、なぜスティーブン一家にこんな仕打ちをするのかは、意外と早い段階で明らかになります。ただ! 見所はそこからの人間模様な気がします。
人間の欲望と本質が渦巻く『聖なる鹿殺し』、週末のお供にいかがですか?
【聖なる鹿殺し 公式サイト】
【聖なる鹿殺し 予告動画】