《自己紹介》
『singles』をご覧の皆さんこんにちは!モデルをしながらライターとして記事を書いている「紺野ミク」です。こちらでは映画大好きな私がオススメする作品を紹介しています。好きなジャンルは考察系、クソ映画、鬱映画など見終わった後にモヤっとする映画が大好きです(笑)独断と偏見で楽しくツッコミながら紹介していくのでよろしくお願いします☆
3つの世界が交錯するサスペンスドラマ『ノクターナル・アニマルズ』
『ノクターナル・アニマルズ』(2016)は、世界的ファッションデザイナーでもあり、有名ブランド「TOM FORD」を設立したトム・フォード氏が、『シングルマン』(2009)以来の7年ぶりに手がけた映画監督作品です。ヴェネチア国際映画祭で審査員グランプリを受賞、そのほか数々の賞にノミネートされました。
今作は米作家オースティン・ライトが、1993年に発表した小説「ミステリ原稿」を映画化した物語となっています。
あらすじとポイント
アートギャラリーのオーナーとして優雅な生活を送るも、夫からの無関心、浮気、不眠、関心のないアートに囲まれながら孤独な生活をしているスーザン。
ある日そんな彼女のもとに、20年前に別れた元夫のエドワードから謎めいた小説の原稿が送られてきます。
『NOCTURNAL ANIMALS』(夜の獣たち)
というタイトルの小説と「この春出版予定だ。君といた頃の作品とは違うから読んでもらいたい」という手紙。
スーザンは、なぜ今さら? と思いつつも読み始めていくのですが、ここからは、
①小説「夜の獣たち」の世界
②過去のエドワードとスーザンの話
③現在のスーザン
という3つの物語が交錯していきます。どのシーンも非常に重要になっているので紹介していきます!
「夜の獣たち」とは?
エドワードによって書かれた小説「夜の獣たち」。ジェイク・ギレンホール演じる主人公・トニーが妻と娘を連れてのドライブの道中、若者たちに車で煽られ襲われます。自分の不甲斐なさを悔やむトニーは刑事ボビーとともに犯人を追い詰めていくという内容。
悪党への復讐劇ともとれるこの作品。スーザンはこのとても刺激的で暴力的な内容に、そしてトニーの悲痛な想いと苦しみが込められた小説にどんどん惹かれていきます。
まず忘れないでほしいのが、小説の映像は「夜の獣たち」を読んでいるスーザンの捉え方が映像化したものだということ。小説内のトニー役と元夫でもあるエドワードを、同じジェイク・ギレンホールが二役で演じているのは、つまりスーザンはトニーにエドワードを重ねて読んでいるってことなんです。
過去のスーザンとエドワード
小説を読むうちに、スーザンはエドワードと出会った頃を思い返します。街で偶然再会した友人のエドワード。小説家を目指すエドワードはお金もなかったけれど、彼の優しい人柄と、自分は諦めてしまった『夢を追う』という姿に惹かれ、2人は付き合い結婚を決意します。
しかし、スーザンは厳しい母親から結婚を猛反対されます。スーザンは裕福な家で育てられており、「あなたは私にそっくりだから彼で満足出来るはずがない」と。
精一杯の反抗をしエドワードと結婚したスーザンでしたが、幸せは長く続きませんでした。小説家としてうだつの上がらないエドワードにイラつく日々。狭い部屋で暮らす2人は喧嘩も多くなり、スーザンは耐えられなくなるのです。
うーん、分かるぞ!? スーザンの気持ちも!
最初は輝いて見えた夢追う姿も、いつしか「いつまで追うつもり!?」「こっちは働いて支えてるんですけど!?」っていうイラつきに変わっちゃうの。
でもね!? それは最初からわかってたこと!(笑)
夢追い人と付き合うなら、最後まで支える覚悟か、最初からそうゆうメンズと付き合わないことです!(私は自分の夢で精一杯ですごめんなさい)
そして「あなたは自分のことしか書かないからダメなんだ」と彼の夢を全否定し、その後もエドワードを傷つけ最悪な別れ方をしたのです。
果たしてこれは愛なのか? 復讐なのか?
あの頃のエドワードからは考えられない刺激的な内容の小説に、スーザンの胸は苦しくなると同時にエドワードへの想いが熱くなっていきます。そしてラストは視聴者にさまざまな解釈と考察をもたらしてくれます。
そもそもなぜエドワードは小説を送ってきたのか? もしやまだ自分を好き? それとも小説家としての成功を知らせたかったのか? いや、きっとそんな生ぬるい想いではないはず。。これはエドワードのある種の復讐でもあり、観ている私たちへの警告でもあります。
監督のトム・フォードも「『ノクターナル・アニマルズ』は、人生の中で私たちがなす選択がもたらす結果と、それを諦めて受け入れてしまうことへの、警告の物語です。」と語っています。
小説の中のトニーは、優柔不断で頼りなくて、自分の意志がまったく感じられない男性です。スーザンは、そんなトニーにエドワードを重ねて見ていたけど、実際、母親の言いなりで夢を諦め、エドワードとの将来も諦め、いまの夫との生活も諦めているのはスーザンです。
『夜の獣たち』は結局エドワード自身の事を書いた小説だったのか? それとも?
いや、ほかの誰でもなく……もしかしたら主人公はあなたかもしれないですね?
週末のお供に『ノクターナル・アニマルズ』いかがですか☆
【ノクターナル・アニマルズ 予告動画】