《自己紹介》
『singles』をご覧の皆さんこんにちは!モデルをしながらライターとして記事を書いている「紺野ミク」です。こちらでは映画大好きな私がオススメする作品を紹介しています。好きなジャンルは考察系、クソ映画、鬱映画など見終わった後にモヤっとする映画が大好きです(笑)独断と偏見で楽しくツッコミながら紹介していくのでよろしくお願いします☆
スイス製の新感覚ホラー『ブルー・マインド』
大人へと成長していく15歳の少女の身に起きた奇妙な出来事を描いた、スイス製の新感覚ホラー『ブルー・マインド』(2017)。スイス映画賞では7部門にノミネートされ、作品賞、主演女優賞、脚本賞の主要3部門を受賞しました。
「カミング・オブ・エイジ・ホラー」という新しいジャンルで注目を集めたこちらの作品は、まさに大人になること(coming of age)の不安や葛藤を幻想的なホラーで描いています。
血とかちょっとグロいシーンがあるのでジャンルとしてはホラーに分類されてるんだけど、終始美しい映像に個人的にはホラーというよりはファンタジー寄りの作品に感じました。
思春期に感じた「大人になることへの憧れと不安」
両親の仕事の都合で新しい街に引っ越してきた15歳のミアは、転校先の学校で不良グループのジアンナたちと仲良くなるために、タバコを吸うフリをしたり、万引きをしたりと必死で悪いことをします。
最初は反発し合うものの、お互い同じ思いや共通点から次第に仲良くなるミアとジアンナ。親に振り回される苛立ちや、少女から大人の女性へと変わっていく言葉にできない不安を抱えるミアは、その気持ちを振り捨てるかのようにジアンナたちとの悪い遊びにどんどんハマっていきます。
そんなある日、ミアはあまりにも不気味で不自然な身体の異常な変化を感じはじめる……。
といったストーリーなんですが、ミアが不良グループに入ろうと必死で合わせたり悪いことをするのが見ていて本当に痛々しいんですよ。飲酒、タバコ、SEX、ドラッグ。いけないことほどしてみたくなる好奇心。誰もが10代の頃一度はそんな気持ちになったことがあるはず。
こんな風に濃いメイクや派手なファッションをして恋愛の話をするジアンナ達の仲間に入れば、自分も大人に近づけるんじゃないか。退屈な毎日が変わるんじゃないかってミアは思うんですよね。
これぞ若さ!The 青春!!
心配する親のお説教も忠告も、すべてが鬱陶しいときってありますよね! 正直いまでもあります!(笑)
(ずっと思春期かもしれない)
そんな甘酸っぱい青春に浸るのも束の間。急展開が起こります(笑)
ミアの身体に起こる奇妙な異常
ミアはある日家に帰ると、母親が飼っている熱帯魚を見つめます。
そして何を思ったか水槽へ向かい、
なんと熱帯魚を手掴みで食べるのです!!
キタキタキターーーー!! 待ってました! 突然のグロ展開!
熱帯魚をバリバリ食べるミアですが、我に返ったのかその後トイレで吐きます。しかしその数日後、ミアに初潮が訪れ、さらには足の指が水かきのようにくっついてることに気づきます。
誰にも言えず不安と恐怖に襲われるミアですが、身体はさらに変化していきます。果たしてミアの身体は一体どうなってしまうのか。
少女は人間なのか? それとも別の何かなのか?
ここまでストーリーを追うと、
熱帯魚を食べたことで魚になる話なの!?
って感じですが、そんな単純なホラーではないんですよね。この作品は見る人によってまったく別の捉え方が出来るんです。
※以下、重大なネタバレはしていませんが、私なりの仮説を書いてるので見たくない方は飛ばしてください!
仮説その1「ミアは人魚なのでは?」
足の指に始まり、身体が段々と魚に変化していくミア。その姿はまるで人魚のようです。魚を無性に食べたくなる衝動に駆られたり、泳ぐのが得意になったり。
ミアが自分の出生に疑問を持つシーンもあり、観ている私たちに「そもそも人魚なのでは?」と思わせる布石がいくつもあります。少女から大人になる変化とともに、本来の姿である人魚へと身体が変化を始めたとも思えます。
仮説その2「心と身体の変化をホラーで表現」
少女から大人になる過程で起こる、葛藤、不安、焦り、恐怖を「魚への変化」というホラー形式で表現しているとも見ることが出来ます。つまり、実際に魚へ変化しているわけではないけれど、ミアからしたら大人になっていく自分の変化をそれくらい怖く感じているということ。
自分が自分じゃない何かに心や体が支配されていく、表現できない不安と恐怖をあえてホラーで分かりやすく描いたのかも知れません。
美しい映像と切ない2人の結末
『ブルー・マインド』はどのように感情移入するかで、ラストの見方がまったく違うものになります。個人的には仮説1のファンタジー要素も入れつつ観た方がしっくりきました。
また、タイトルの『ブルー・マインド』は直訳すると「憂鬱な心」です。15歳という彼女たちの不安定な心と葛藤にぴったりですが、じつはもう一つ『平和で穏やかな状態である気持ち』のことを、アメリカの海洋生物学者のウォレス・J・ニコルズ博士が『ブルーマインド』と名付けました。
物語のラストを考えるならば、こちらの意味の方が合っているかも知れません。
ミア役のルナ・ベドラーが美しいのはもちろん、不良グループのリーダーであり、のちにミアの唯一の理解者になる、ジアンナ役のゾーイ・パスティル・ホルトアイゼンがめちゃくちゃ色気あるんですよ! でもどこかまだ幼さが残る危うい美しさがすごく魅力です。
大人への憧れで徐々に派手になるミアとは逆に、後半になるにつれメイクが薄くなっていくジアンナの変化もまたいい。自分が大人の女性になったからこそ、彼女たちの葛藤や気持ちが痛いほど分かる映画です。
週末のお供に『ブルー・マインド』いかがですか?
【ブルー・マインド 予告動画】