《自己紹介》
『singles』をご覧の皆さんこんにちは!モデルをしながらライターとして記事を書いている「紺野ミク」です。こちらでは映画大好きな私がオススメする作品を紹介しています。好きなジャンルは考察系、クソ映画、鬱映画など見終わった後にモヤっとする映画が大好きです(笑)独断と偏見で楽しくツッコミながら紹介していくのでよろしくお願いします☆
鬼才ジョーダン・ピール監督が描く、アメリカ社会の闇『アス』
初の監督・脚本を手がけた『ゲット・アウト』(2017)が喝采を浴び、ホラー映画界に頭角を現したジョーダン・ピール監督。彼の2作目となるホラー映画が、今回紹介する『アス』です。
なんとアメリカの週末ランキングでは、オリジナルホラー映画としては史上最高となる7,111万ドルを稼ぎ出す大ヒットとなりました。
『ゲット・アウト』もそうですが、監督の世界観がとっても好きです。こんな事起こってたまるか! っていう怖さの中にある「本当にありそう感」がたまらないんですよね(笑)。『アス』もそんな不気味な恐ろしさが満載なので紹介していきます☆
「わたしたち」がやってくる!!
小さい頃、両親と遊びに来た遊園地でミラーハウスに迷い込み、自分とそっくりな少女と出会った経験を持つ主人公アデレード。トラウマを抱えつつもその後成長し、結婚して夫のゲイブ、娘のゾーラ、息子のジェイソンと幸せな生活を送っていました。
ある日、家族でサンタクルーズのビーチハウスで夏休みを過ごすことになったアデレード。幼少期にこの場所で不気味な出来事に遭遇した彼女は、忌まわしい記憶がフラッシュバックします。家族にも何か起きるんじゃないかと不安になっているある夜、ビーチハウスに誰かがやってきます。
え??
何か手繋いだ4人が来ましたけど?
こんな人が窓から見えたら怖すぎる! ただ立ってるだけなのやめて! せめて何か言ってくれ!
近寄るものの、不審に思った夫ゲイブは部屋に戻ろうとしますが、あっけなく家の中に押し入られてしまいます。(おい)
そして彼らの顔を見て驚愕するのです!!
その顔は自分たちにそっくりな4人!!
やってきたのは “わたしたち” (アス)だったのです!!
怖すぎる!!!
自分たちと全く同じ姿をした4人の家族=“わたしたち”
果たして彼らの正体とは? 目的は?
ドッペルゲンガーは本体の影
アデレードと瓜二つの彼女は話し出します。自分たちは「本体の影」であると。本体が美味しいものを食べているとき、影はウサギの生肉を食べ、本体が素敵なプレゼントをもらっているとき、影は刃物をもらい血まみれになっていたと。
つまり!!
ドッペルゲンガーが本体に会いにきたと!
いや、来んでいい!! 絶対に!!(怯え)
全力でお引き取り願いたいんだけど、どうやら本体を殺しに来たようなのでもう逃げるしかありません。
だけど、今まで影として身を潜めていた影がどうして本体の元へ来たのか? 話が進むにつれ、影はただのドッペルゲンガーではなく、アメリカ社会の恐ろしい闇の一部だったことが明らかになっていきます。
散りばめられたホラー映画へのオマージュ
ジョーダン・ピール監督は筋金入りのホラー映画オタク! 今作『アス』には、彼が愛する様々な映画のオマージュが散りばめられているのも面白いです♪
舞台となるカリフォルニア州サンタクルーズは「アルフレッド・ヒッチコック」の大ファンである彼が『めまい』や『鳥』を彷彿とさせる西海岸特有の空気を表現。
それに、「サンタクルーズを破壊した最初の映画である、『ロストボーイ』へのちょっとしたオマージュでもある」とも語っています。
また、影である彼らが着ている真っ赤な服やグローブは「スリラー」のマイケル・ジャクソン、「ハロウィン(1978)」のマイケル・マイヤーズが着ていたジャンプスーツ、「エルム街の悪夢(1984)」のフレディ・クルーガーが着けていた刃の付いたグローブの影響を受けているそう。
ほかにも細かい箇所にさまざまな往年の名作ホラーの要素を楽しむことが出来るので、ぜひ見つけてみてください☆
1986年に実施された「ハンズ・アクロス・アメリカ」
この映画で象徴的なのが、テレビモニターで流れる「ハンズ・アクロス・アメリカ」の映像。
1986年、実際に開催されたこのイベントは、アメリカ国内のホームレスや貧困問題を救済しようと立ち上げられたもので、西海岸と東海岸まで数百万人もの人々が一斉に手を繋ぎ、皆で『ウィー・アー・ザ・ワールド』などのチャリティー・ソングを歌うという、大掛かりな試みでした。
「みんなで手を繋いで一つになろう。不平等を打破しよう」というメッセージ自体はとても素晴らしかったのに、なんと有料イベント! 手を繋ぐ“人間の鎖”に参加するには、10〜35ドルの寄付金を払わなければいけないという、貧困問題救済とは程遠い本末転倒なイベント。
もちろん日々を生きるのに必死な貧困層は10ドルを払ってこのイベントに参加する訳もなく……。アメリカ国民の平等を呼びかけながらも、その実態は偽善チャリティイベントだったんです。
収益は目標の半分以下。大した結果も得られなかったこのイベントを皮肉っているのか、影たちが手を繋ぐ姿を見て、ゲイブが思わず「パフォーマンスアートか」と呟くシーンは監督の本音にもみえます。
『Us』が意味する本当のわたしたち
アデレードの影が「私たちはアメリカ人だ」と語るシーンがあるんですが、彼らは社会の闇で影として生きてきたアメリカ貧困層の象徴でもあります。映画タイトルの『Us』とは、「私たち」という意味だけでなく、「アメリカ合衆国」(The United States of America)そのものを意味しているのかもしれません。
ドッペルゲンガーたちと向き合うのは、自分自身と向き合うことでもあります。幸せに生きる裏にはそうでない影がある。自分が影として生きていたら、同じことをしたくなるかもしれませんね?
もちろんラストに明かされる衝撃の事実にも驚かされますよ!
週末のお供に『アス』いかがですか?
【アス 予告動画】