草間彌生《無限の鏡の間 ―求道の輝く宇宙の永遠の無限の光》 2020年 作家蔵 ©YAYOI KUSAMA Courtesy of Ota Fine Arts
演奏にアートと、日頃から芸術にどっぷりと浸かっている筆者utoが、ひとりでゆっくりと楽しめる企画展をご紹介。今回は「関係性」をテーマに、小さな展示会場から大きな美術館まで、多種多様なアートスペースでの展示をご紹介します。おひとりさまでも、大切な人とでも、ぜひ楽しんでいただきたい企画展、この機会にお出かけしてみてくださいね。

バレンタインの季節に、さまざまな「関係性」を見る

2月になりました。2月と言えば、節分やバレンタインデーなどの行事がありますね。

なかでもバレンタインデーは、近年あまりジェンダーの関係ない行事になってきているように思います。恋人や好きな人だけでなく、自分、友人、家族、ペット、推しなどなど。大切な存在へ贈り物をしたり、一緒の時間を過ごしたり……。

そんなとき、自分自身や相手との関係性を改めて考えて、幸せな気持ちになる人もいるのではないでしょうか。

今回は、そんな「関係性」について見ることができる企画展を5つご紹介します。どれも少々小難しい内容ではありますが、きっとさまざまな関係性を見つめ直すよいきっかけとなるはず。

小さな展示会場では開催期間のとても短い展示もありますので、ご確認のうえお出かけくださいね。

清水伶 「あなたがいない「  」を、どう埋めるかさがしています ―何かを失いながら生きていく私たちの声とグリーフケア―」(上野spaceバズチカ)

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清水伶は、社会や他者との関係について問い続けているアーティストです。個人的な体験のみならず、多くの不特定の人々にも耳を傾けることで、人類に共通の課題と議論を探っています。

今回の展示は、“喪失”をテーマに清水伶と11名の当事者たちが作り上げた、映像インスタレーション作品を見ることができます。

喪失にはさまざまな種類があります。死によってもたらされるものもありますが、離れて暮らすことになったり、体の一部を失ったり、尊厳を損なわれたりすることも喪失体験となります。

そういった喪失の痛みや悲しみを持ちながら、それでも生きていくために、当事者でもあり、また家族でも友人でもある立場の私たちになにができるのか。それを考える展示となっています。

期間中はグリーフケア(喪失へのケア)の専門家やアートキュレーターなどによるトークショーも実施されますので、そちらもぜひご注目くださいね。

開催期間は9日間となっておりますので、ご興味のある方はご都合を合わせてお出かけください。

清水伶 「あなたがいない「  」を、どう埋めるかさがしています ―何かを失いながら生きていく私たちの声とグリーフケア―」
会場:上野spaceバズチカ(JR京浜東北線・山手線「御徒町」駅 北口 徒歩5分)
会期:2025年2月8日(土)〜2025年2月16日(日)

那須佐和子 「ライナスの布」(KEN NAKAHASHI)

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風景画や人物画をおもに制作してきた那須佐和子は、過去に生み出されてきた芸術と現在を生きている自分との間の埋められない距離に関心を置き、それをテーマとした絵画の表現を模索しています。

今回の展示では、古いキャンバスを用いた絵画作品を見ることができます。古いキャンバスには、過去の画家が触れてきた痕跡やそこから読み取れる物語が存在しており、それを用いた作品を見ることで、今を生きる私たちと過去とのふれあいを体験することができます。

展示のタイトルである「ライナスの布」は、漫画『ピーナッツ』に登場するライナスがずっと持ち歩いている毛布に由来しています。この毛布は「ライナスの毛布」「安心毛布」と呼ばれ、心理学的には安心をもたらすもの、愛着の象徴として語られます。

その愛着の対象である「ライナスの毛布」と「古いキャンバス」を重ねることで、那須本人の創作の姿勢を存分に見ることができます。

会期中は定期的に展示替えがおこなわれ、そのたびに壁につく釘やビスのあとすらも作品として扱われます。空間自体が大きな作品であるこの展示を、ぜひ楽しんでくださいね。

那須佐和子 「ライナスの布」
会場:KEN NAKAHASHI(JR「新宿」駅 東南口 徒歩6分)
会期:2025年1月10日(金)〜2025年3月29日(土)

PART OF THE ANIMAL 動物と人間のあいだ(世田谷文化生活情報センター 生活工房)

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この企画展では、絵画や立体のみならず、詩や音楽、演劇など、広い分野でおこなわれてきたその表現について、芸術学や比較文化学などの学者による研究や、アーティストの作品を通じて、「動物と人間のあいだ」を考えます。

文化が非常に原始的だったころから、人間は動物を描いたり形作ったりして表現してきました。これまで、動物モチーフだけでなく動物を用いた作品も残されています。

動物たちは人間のイマジネーションを刺激してやまない存在です。クマからぬいぐるみを作り出し、ゲームの中のモンスターに心躍らせ、ミツバチやクジラから音楽を創造する……。そうした動物と人間のあいだに横たわる物語の、延長線上にある社会を生きている私たち。しかし一方で、動物と人間が生きているこの環境すらも破壊している側面もあります。

この展示では、いま一度動物と人間との関係性を考え、人間も動物の一員であるのではという問いのもと、共に生きていく未来を見つめることができるのではないでしょうか。

PART OF THE ANIMAL 動物と人間のあいだ
会場:世田谷文化生活情報センター 生活工房(東急田園都市線・東急世田谷線「三軒茶屋」駅 直結)
会期:2025年1月21日(火)〜2025年4月20日(日)

マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート(森美術館)

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仮想現実(VR)や人工知能(AI)など、日々新しいテクノロジーが浸透してきています。アートなどの芸術活動は、こうした最先端のテクノロジーと常に隣り合ってきました。

表現の新たな可能性となっているこれらのテクノロジーですが、生成AIなどの登場は、表現をおこなう立場の人にとって脅威のひとつとなりつつあります。

本展では、ゲームエンジンや仮想現実、脅威となるのか隣人となるのか未知数の生成AIなど、多くのテクノロジーを用いた現代アートを展示します。デジタル空間上のデータ、人間の体に縛られないアバターなど、現実を超えた表現を見ることができます。

しかし、これらの新しい表現を用いながら、生命や倫理観、現代が抱える多様な問題など、作品のなかには不変のテーマが流れています。

「マシン」とアーティスト、そしてその表現のなかに入っていく私たち。これらの人類とテクノロジーの関係を考えることが、これからの未来をどのように生きていくのかを作り出していくきっかけになるでしょう。

マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート
会場:森美術館(東京メトロ日比谷線「六本木駅」1C出口 徒歩3分(コンコースにて直結))
会期:2025年2月13日(木)〜2025年6月8日(日)

カラーズ ― 色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ(ポーラ美術館)

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私たちは、色あふれる世界に生きています。自然のものに始まり、人の手による芸術作品や、また画面に映し出される光学的な色まで、その色の種類は非常に多彩です。

この企画展では、これまでアーティストたちが手にし、模索してきた「色彩」の、その表現と関係とを考えます。近代から現代までの広い世代のアーティストの作品を集め、色彩論から始まり、色の持つ役割について改めて見つめ直しています。

絵画における視覚の世界を新しく構築し直した印象派の絵画、鮮烈な色彩を持つフォーヴィスム、非現実的な色彩の組み合わせによる抽象絵画。現代アートでは、色彩の持つ効果によって、見る人の身体感覚を揺さぶります。

アーティストたちが心と人生を賭して発見し、表現してきた色彩を、見に行ってみませんか。これらのアートを体験することで、人生や生活に新たな彩りを発見することができるかもしれません。

カラーズ ― 色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ
会場:ポーラ美術館(箱根登山電車「強羅」駅下車後、ポーラ美術館無料送迎バス 約8分)
会期:2024年12月14日(土)〜2025年5月18日(日)

さまざまな「関係性」を見に、大切な自分や、大切な人と

今回は、「関係性」をテーマに、おすすめの企画展を5つご紹介しました。

開催期間の短いもの、長いもの、会場の大小など、その会期や規模もさまざまです。大きな美術館はもちろんですが、小規模なアートスペースでも、ゆっくりとアート鑑賞はいかがですか?

大切な自分と、また、大切な人と。

バレンタインデーのこの時期に、ぜひアートを楽しんでくださいね。

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