新年に、初を感じよう
1月、新春ですね。新しい年が始まり、これからの一年に期待感が高まる時期です。そんな季節に、初めての開催となる企画展を見に、美術館へお出かけするのはいかがでしょうか?
今回は、美術館リニューアルオープン後初の企画展や、それぞれのアーティストの初個展など、今後を期待したくなるような魅力が詰まった企画展を5つご紹介します。
気持ちが新たになるような、新年のこの新鮮な季節に、ぜひ美術館へのお出かけを楽しんでくださいね。
再開館記念 「不在」ートゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル(三菱一号館美術館)
東京駅にほど近い赤煉瓦の建物は、ジョサイア・コンドル設計の建物を復元した三菱一号館美術館です。こちらは長らく施設メンテナンスのため長期休館となっていましたが、2024年11月23日から再開館されています。
そしてご紹介するのは、リニューアルオープン後の初の企画展となる、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックに焦点を当てたものとなっています。
ロートレックは、19世紀フランスを代表する画家、版画家で、日本の浮世絵にも影響を受けた平面的な表現や大胆な色彩が特徴です。
ロートレックの作品の姿勢は、描く人物を美化したりせずにひとりの人として描くというもの。今回の企画展では、美術館所蔵の主要な作品に加え、フランス国立図書館から借用した作品も展示されます。合計136点の作品群から、ロートレックの作品の姿勢を余すところなく体験することができるでしょう。
今回は、協働者として参加し、テーマである「不在」を提案したソフィ・カルの創作活動作品、とくに初公開となる「グラン・ブーケ」も展示されるので、それぞれのアーティストのさまざまな表現を楽しむことができます。
再開館記念 「不在」ートゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル
会場:三菱一号館美術館(JR「東京」駅 丸の内南口改札 徒歩5分)
会期:2024年11月23日(土)~2025年1月26日(日)
小西真奈 Wherever(ウェアエバー)(府中市美術館)
小西真奈は、日本における風景画家のなかで、風景画の表現の可能性を広げているアーティストのひとりです。
今回の企画展は初の大規模な個展となり、2000年代の代表作を中心に、新作も多数紹介されています。2006年にVOCA賞(絵画など平面作品の新作を出品・発掘する現代美術展「VOCA展」でのグランプリに贈られる賞)を受賞したふたつの作品をはじめ、大きな風景画が展示されます。
どこでもあるし、どこでもない、そんな世界観の作品は、ファンタジーの空気もありながら、どこか懐かしさを感じることができる不思議な作品たちとなっています。
油彩画約80点、鉛筆や水彩による作品約20点の合計約100点におよぶ多数の作品が展示されます。
見たことがあるような、でもどこでもない不思議な景色を見に、ぜひ訪れてみてくださいね。
小西真奈 Wherever(ウェアエバー)
会場:府中市美術館(京王線「府中」駅からちゅうバス(多磨町行き)「府中市美術館」(1) 下車すぐ)
会期:2024年12月14日(土)~2025年2月24日(振休)
雨宮庸介展| まだ溶けてないほうのワタリウム美術館(ワタリウム美術館)
ドローイングや彫刻などの立体作品、さらにパフォーマンスなどの多彩な表現で知られる雨宮庸介。東京では初の個展となります。
今回は、ワタリウム美術館そのものを舞台として制作した最新のVR作品を中心として、「溶けたりんごの彫刻」や「石巻13分」の記録映像、また「1300年持ち歩かれた、なんでもない石」のペーパーといった、ユニークなビジュアルを持つ代表作が展示されます。
そして、会期中の毎週土曜日17時からは、作家本人によるライブ制作もおこなわれます。「人生最終作のための公開練習」と題されたこちらのパフォーマンスもぜひ注目してくださいね。
展示としてはVR作品が中心ですが、そのために制作されたドローイングも同時に公開されています。VRと平面作品であるドローイングの両方を鑑賞することで、作品への理解もより深まることでしょう。
雨宮庸介展| まだ溶けてないほうのワタリウム美術館
会場:ワタリウム美術館(東京メトロ銀座線「外苑前」駅 3出口 徒歩7分)
会期:2024年12月21日(土)~2025年3月30日(日)
今津景 タナ・アイル(東京オペラシティ アートギャラリー)
1月11日(土)から開催となるこちらの企画展は、インターネットやデジタルアーカイブといった電子上の素材をもとに構成した下絵から、キャンパスに油彩を施すアーティスト今津景の初の大規模個展です。
今回は、作家が現在の活動拠点としているインドネシアと、作家本人のルーツ、日本というふたつの土地を題材として、自分が生きる場所について考え、制作された作品を展示しています。
今津景といえば油彩画ですが、そういった絵画作品はもちろんのこと、3Dプリンターによる大きな立体作品や空間自体を作品として体験するインスタレーション作品など、会場そのものが作品となったような空間を体験することができます。
インドネシアの神話や、都市開発、環境問題に至るまで、広いテーマのイメージを多様な手法で表現しているので、緻密な構成のなかにさまざまな意図を感じることができると思います。
今津景 タナ・アイル
会場:東京オペラシティ アートギャラリー(京王新線「初台」駅 東口 徒歩すぐ)
会期:2025年1月11日(土)~2025年3月23日(日)
ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子ーピュシスについて(アーティゾン美術館)
最後に、今年はアートや現代アートの鑑賞に挑戦してみたい! という方におすすめの企画展をご紹介します。
毛利悠子は、現代美術のオリンピックと言われている「ヴェネツィア・ビエンナーレ国際美術展」など、国際的な展示会に、近年数多く参加しています。この企画展は、そんな作家の初の大規模な個展となっています。
既発表の作品はアーティゾン美術館の展示空間に合わせて刷新されており、また美術館に所蔵された作品からアイデアを得た新作なども展示されています。
磁力、重力といった目に見えない力、そしてまた空気の流れや音などにいたるまで、不可視の存在を組み合わせて可視化する作品は、クロード・モネやアンリ・マティスの作品も併存させることによって、繊細な空間における作品鑑賞ということを体験させてくれます。
今回の展示での作品は、それぞれの作品に関連性を見いだすこともできれば、独立した作品として感じることもできるので、さまざまな感じ方を体験できます。現代アートは初めて……という方でも、居心地の良さを感じることができるでしょう。
ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子ーピュシスについて
会場:アーティゾン美術館(JR線「東京」駅八重洲中央口 徒歩5分)
会期:2024年11月2日(土)~2025年2月9日(日)
年の初めに、「アート初(ぞ)め」!
今回は、初開催や初の個展など、初めての企画展を5つご紹介しました。
書き初めなども表現活動のひとつですが、アート鑑賞も自己表現のひとつです。美術館に足を運んで、ゆっくりと「アート初め」はいかがですか?
空気も乾燥して、ぴんとはりつめた寒さが続きます。ぜひあたたかくしてお出かけくださいね。