《自己紹介》
『singles』をご覧の皆さんこんにちは!モデルをしながらライターとして記事を書いている「紺野ミク」です。こちらでは映画大好きな私がオススメする作品を紹介しています。好きなジャンルは考察系、クソ映画、鬱映画など見終わった後にモヤっとする映画が大好きです(笑)独断と偏見で楽しくツッコミながら紹介していくのでよろしくお願いします☆
実際に行われた“心理実験”を描いた問題作『es エス』
1971年、米スタンフォード大学心理学部が出した、とある新聞広告によって集まった被験者で実際に行われた“スタンフォード監獄実験”。
これは心理学者フィリップ・ジンバルドー 指導のもと、
「刑務所を舞台に、普通の人が特殊な肩書きや地位を与えられるとどうなるのか?」
を検証するための実験でした。
そのあまりに衝撃的な実際の心理実験をもとに、ドイツで映画化されたサイコスリラー『es エス』(2001)。
メガホンを取ったのは『ヒトラー 最期の12日間』(2004)や『ダイアナ』(2013)などで、人間の尊厳や権力などをテーマに作品を描いてきたオリヴァー・ヒルシュビーゲル監督です。
本作は、「役割」を与えられた人間の心理が無意識のうちに変化していく過程を、実際の事件に基づいて描いていますが、本当にこんな実験がおこなわれたのかと思うほどに衝撃的です。
2001年モントリール国際映画祭 最優秀監督賞受賞、アカデミー賞外国語映画賞など数々の賞を受賞。主演は『ラン・ローラ・ラン』(1998)で知られるモーリッツ・ブライプトロイが、自分の精神がコントロールできなくなっていく記者の姿を迫真の演技で魅せてくれます。
新聞広告にて募集された“ある実験の被験者”
元新聞記者のタクシー運転手タレクは、また現役の記者に返り咲くためにおもしろいネタを探していると、ある日こんな新聞広告を目にします。
被験者求む。
⬜︎ 拘束時間:2週間
⬜︎ 報酬:4000マルク
⬜︎ 応募資格:不問
⬜︎ 実施場所:大学内模擬刑務所
タレクは怪しいと思いながらも、2週間で4000マルク(現在だと200万以上)という高報酬と、模擬刑務所での実験の様子を秘密裏に取材したら最高の記事が書けるのではと思い、実験に参加することを決めます。
さまざまな理由で参加を決めた男性達が一堂に会し、初顔合わせ。談笑していると、実験の内容が明らかにされます。
その実験とは、被験者で集まった24人の男を、大学の地下に作られた擬似刑務所で「看守」と「囚人」に分け、それぞれ与えられた役になり切り2週間生活するというものでした。
Kobal/SENATOR FILM/The Kobal Collection/WireImage.com
タレクは囚人役を割り当てられます。実験は和やかな雰囲気でスタートしますが、些細なことから看守側と囚人側が対立状態に。
さらに実験が進むうち、看守役の人々は支配的・攻撃的な振る舞いをエスカレートさせていきます。
最初は反抗していた囚人役の人々も次第に抵抗できなくなり、実験は思わぬ方向へと展開していくのです……。
“役割”をこなそうとする人間の心理
Kobal/SENATOR FILM/The Kobal Collection/WireImage.com
本作の真理であり一番怖いこと。それは、
“役割を与えられるとその通りに振る舞ってしまう”
という人間の心理描写があまりに恐ろしいところです。
決して脅されているわけでも強制されているわけでもなく、ただ「囚人」と「看守」という役割を与えられただけなんです。
最初は、2週間を適当にこなして終わらせようと遊び半分だった被験者たち。しかし、徐々にその振る舞いや言動は攻撃的になり、まるで本物の看守のようになっていきます。
Kobal/SENATOR FILM/The Kobal Collection/WireImage.com
そして、だんだんと抑圧され、最初は反抗していた囚人役たちも「言うことを聞かなければ罰を与えられる」という心理状態になっていきます。
Kobal/SENATOR FILM/The Kobal Collection/WireImage.com
もし自分が被験者になったとき、彼らと同じようなことをしてしまうのか.....?
そんなはずがないと今は胸を張って言えます。しかし、集められた被験者たちも同じ気持ちだったはずです。
たかが看守役……囚人役……。
しかし、狭い空間で権力を持ち、それを自由に使ってよいのだとしたら……隠された人間の欲望や願望は、急速に暴走してしまうのかもしれません。
スタンフォード監獄実験がもたらした影響とは?
実際に行われたスタンフォード監獄実験は、最悪の結末により2週間を待たずに終了。
その後「スタンフォード監獄実験」は、現代心理学におけるもっとも有名な実験のひとつとして名を残し、人間はある種の権威を与えられると、攻撃的に振る舞い、権力を濫用し「邪悪」な一面を誇示することを示す例として用いられるようになりました。
Kobal/SENATOR FILM/The Kobal Collection/WireImage.com
しかし、この実験結果は、決して他人事ではない私たちの身近にある現象から起きた結果なのです。
なぜなら、私たちも普段から知らず知らずにいろんな役割のもと生活をしているからです。
それは仕事内の立場にとどまらず、例えば「理解のある恋人」「良い母親」など……こうでなければいけないと思い、その役割をこなそうとしたことが誰だってあるはずです。
感情的な面で言えば「嫌われたくない」「同調しなければいけない」……。そんな気持ちから周りに合わせた言動を取ったこともあるはずです……。
Kobal/SENATOR FILM/The Kobal Collection/WireImage.com
この実験は決して許されることではなく、道徳に反したことではあるものの、人間の心理と欲望がいかに人を凶暴化させるのか? そして目を背けていた人間の弱さや闇を浮き彫りにした実験であったことには間違いありません。
『es エス』、週末のお供にいかがですか?
【es エス 予告動画】
『es [エス]』 日本予告篇
youtu.be








![画像: 『es [エス]』 日本予告篇 youtu.be](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16781421/rc/2025/12/06/d119a211220b43e6b05ff63abee5dcf0247ac654.jpg)




