見終わったあとモヤモヤする映画が大好きな筆者が語る映画連載【シネマ・グレイ】。今回は、人間の醜さ、汚さを存分に描いたSFスリラー『プラットフォーム』(2019)を紹介します!(文:紺野ミク)

《自己紹介》
『singles』をご覧の皆さんこんにちは!モデルをしながらライターとして記事を書いている「紺野ミク」です。こちらでは映画大好きな私がオススメする作品を紹介しています。好きなジャンルは考察系、クソ映画、鬱映画など見終わった後にモヤっとする映画が大好きです(笑)独断と偏見で楽しくツッコミながら紹介していくのでよろしくお願いします☆

食事中に観るのは厳禁なSFスリラー『プラットフォーム』

『プラットフォーム』(2019)は、これが長編デビューとなるスペインの新鋭 ガルデル・ガステル=ウルティア監督が手がけたスペイン製SFシチュエーション・スリラーです。

第44回トロント国際映画祭ミッドナイト・マッドネス部門で観客賞、第52回シッチェス・カタロニア国際映画祭で最優秀作品賞など4部門を受賞。現代の階級社会と人間の極限状態を描き、世界的に話題となった作品です。

(C)BASQUE FILMS, MR MIYAGI FILMS, PLATAFORMA LA PELICULA AIE

ついに‼︎ この映画を紹介してしまいます。(震え)

好きな映画を聞かれたらベスト5に必ず入れる作品がこの『プラットフォーム』です。

いや〜もう何度観たことでしょう! ただあまりのグロさと難解な話に、周りからはまったく理解されません。ちなみにおすすめして観てくれた人の感想は「気持ち悪い」「意味わからん」「変なものすすめるな」がほとんどです。(Why……)

そうだけど! そうなんだけど!! ぜひ観てほしい作品なので紹介させてください(笑)
ただ食事中に観るのは厳禁です!

目覚めたら巨大な穴! 果たして生き残れるのか!?

(C)BASQUE FILMS, MR MIYAGI FILMS, PLATAFORMA LA PELICULA AIE

主人公ゴレンは、目が覚めるとある部屋に。そして目の前の老人から「ここは48階層だ」と言われます。

出た! 目覚めると知らないところに閉じ込められてる系!

まあここまではよくある話。「CUBE」や「SAW」のように目が覚めると閉鎖空間にいる系映画。

ゴレンが部屋を見渡すと、遥か下まで伸びる塔のような建物で、上下の階層は部屋の中央にある大きな穴でつながっています。上は47階層、下は49階層って事です。

そして部屋のブザーが鳴ると、上から巨大な台座が降りてきます。

そう! メインビジュアルにある山盛りに食事が乗った台座が『プラットフォーム』なのです。

(C)BASQUE FILMS, MR MIYAGI FILMS, PLATAFORMA LA PELICULA AIE

もう怖い。

縦長の巨大な建物と穴。そこに降りてくる食事を乗せたプラットフォーム。

メインビジュアルでは山盛りに食事が乗ってますが、ゴレンと老人の階に届いたのは残飯……。

(C)BASQUE FILMS, MR MIYAGI FILMS, PLATAFORMA LA PELICULA AIE

そう……つまり……、

上47階層分 × 各階2人=94人 が食べた後の残飯なのです!!

ぎゃーーーー!!

これはしんどい!しかもナイフやフォークなんてものはないので、94人が手で食べ荒らし無茶苦茶になったテーブルから、わずかに残ったものを食べなければならないのです。もちろん食べる食べないは自由だけど、ここにはそれしか食べ物はありません。しかもプラットフォームが各階に止まるのは本当にわずかな時間なので、急いで食べなければならないという地獄ルール。

【巨大な穴ルール】

① 1ヶ月ごとに階層は入れ替わる

② なんでも一つだけ持ち込める

③ 食事を摂れるのはプラットフォームがある間だけ

いや! こんなルールを聞いたところで「OK OK!」とはならないけどね!?

穴に連れてこられた理由は??

そもそもなぜこの穴に連れてこられたのか。どうやらこの穴には、来ることを選ぶしかなかった人間と、自ら志願してこの穴にきたパターンがあるみたいです。

そしてなんと主人公ゴレンはまさかの自ら志願してきたパターン。どうやら、半年後この穴から出れた際にもらえる『認定証』目的で穴への志願をしたようです。『認定証』とは何なのかの説明も一切ないのですが、個人的には「社会生活で何か優遇されるようになる証明書」だと思っています。

同室の老人トリマガシは、事件を起こし「精神病院か穴か選べ」と言われ穴に来たと言ってるので、ある種の更生施設や実験施設の類なのかもしれないです。

要するにこの穴から脱出するということではなく、それぞれ決められた期間この穴で生き延びることが出来れば出してもらえるみたいです。過酷な環境で生き延びる代償として、穴を出た際には何か報酬があるのではないでしょうか?

ただ、自らの意思で来たゴレンも、穴がどんなところかは聞かされていませんでした。実際にプラットフォームのシステムを目の当たりにして、とんでもないところに来てしまったと思ったでしょう。(苦笑い)

息子を探し続ける女性「ミハル」

C)BASQUE FILMS, MR MIYAGI FILMS, PLATAFORMA LA PELICULA AIE

穴でゴレンは1人の女性と出会います。プラットフォームに乗って上の階層から降りてくる女性「ミハル」です。トリマガシによると、ミハルはどこかにいる息子を探すため、毎月プラットフォームに乗って降りてくるそうです。

でも上から降りてくるってことは上層階にいるってことですよね? 毎月の入れ替えで上に行く法則はあるのか。そして下層はどこまで続いてるのか。ミハルの探す「息子」はどこにいるのか。とても重要なポイントになってきます。

穴の謎を解き明かすための手段はあるのか?

ゴレンに限っての話ですが、半年後に出れるのであれば何とか残飯食べて半年生き残ればいいのでは? と思うんですが、そんな簡単な話じゃないんですよね。48階層の時点で食べ物がほぼないということは、来月100階層とかになった日にゃ食べ物は何にもありません。半年どころか1ヶ月生き残るのも難しいです。

そうなると人間はどうなるのか……。

この穴のルールはあってないようなもんです。あるのはプラットフォームの食事ルールだけ。ミハルのように下に行っても罰せられるわけではありません。生き残るためなら何でもありの穴なのです。それが例え人殺しでも……。

ゴレンは最下層に行けば穴のメカニズムを解明出来るんじゃないかと考え(なんでそうなる)、一番上に行きたいというバハラットと手を組み、プラットフォームに乗って最下層を目指します。

プラットフォームは最下層まで行くととんでもなく凄い勢いで(ぶつかったら死ぬレベル)一番上に戻るので、途中から乗るのは不可能。乗り続けて最下層まで行くしか方法はありません。

C)BASQUE FILMS, MR MIYAGI FILMS, PLATAFORMA LA PELICULA AIE

無事に最下層まで辿り着き穴の謎は解き明かせるのか。そして一番上には何があるのか。降りていく過程もまた人間の醜さが存分に出ています。もちろんグロシーンあり。イイネッ!

映画『プラットフォーム』が伝えたいことは何なのか

C)BASQUE FILMS, MR MIYAGI FILMS, PLATAFORMA LA PELICULA AIE

上の階であればあるほど食事は豪華です。皆が必要最低限の食事をして次に回せば、今よりは下層の人たちにも食事は届くはずですよね。しかし誰も下の人たちに残してあげようとはしません。自分より下の者のことなんて知ったこっちゃないんです。

上に立つものが厚い恩恵を得られる構図は、私たちが生きる”実社会”そのものでもあります。だけどいつ落ちるかわからない。下にいた者も上に行けば自分がされた同じことをし、上にいた者が下に行けば自分がしてきたことを忘れ被害者面するでしょう。

階級社会、貧富の差、差別。これは資本主義に警鐘を鳴らす痛烈風刺映画なのか。何度見ても何回考えてもこの映画への答えは出ません。むしろ観るたびに自分の考えや捉え方も変わります。私もきっと、この穴にいる人たちとさほど変わらない。そんなふうに思うこともあります。
賛否ある映画ですが、私はずっと推し続けます!(笑)

週末のお供に『プラットフォーム』いかがですか?

【プラットフォーム 予告動画】

画像: 映画『プラットフォーム』予告編 youtu.be

映画『プラットフォーム』予告編

youtu.be
画像: 生き残る方法は食べること! 社会の縮図を描く風刺映画『プラットフォーム』【シネマ・グレイ File.006】

紺野ミク|Miku Konno

モデル・女優などで活躍中の他、2017年からはライターとしても活動。連載を持ちコラム執筆をするなど多方面で活躍中。お酒・映画鑑賞が大好き。

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