猫の日! 猫がメインになっている本5選
2月になりました。暖かい日もあれば寒い日もあり、体調管理にはより一層気を遣いたい時期ですね。
さて、2月にあるイベントといえば、2月3日にある節分、2月14日のバレンタインデーが有名ですね。そして、もうひとつ有名な記念日を挙げるなら、2月22日の猫の日なのではないでしょうか?
ふわふわ、もこもこで柔らかくて、かわいらしい猫。ああ、猫を愛でたい! と思ったら、文学で猫の内面を想像してみるのもいいかもしれません。
いつも文学賞受賞作からピックアップしている【ブックガイド】ですが、今回は、番外編。猫の世界を楽しめる作品を5つピックアップ!
人間を観察する猫、冒険する猫、100万回生きた猫など、どれも猫を中心にして物語が進みます。かわいらしい猫の世界を、ぜひ楽しんでくださいね!
『吾輩は猫である』 夏目漱石(1905)
【あらすじ】
吾輩は猫である。名前はまだ無い。どこで生まれたかもわからない。そんな吾輩は、変わり者の珍野苦沙弥(ちんの くしゃみ)先生の家に住んでいます。吾輩の周りには、いつも苦沙弥先生のみならず、先生の家族、先生の門下生など、これまた“珍妙”な人々が生活していて、人間観察に事欠きません。今日も、吾輩はこの家で人間を観察するのでした。
おすすめポイント
この作品は、文学史に残る名作を読みたい、という方におすすめです。
もはや説明不要の感じもありますが、こちらは夏目漱石による小説で、しかも世に初めて発表した処女作といわれています。漱石40歳ごろの作品です。
「吾輩は猫である。名前はまだ無い。」という、とても有名な書き出しで始まります。聞いたことがない人を探すのも難しそうなくらい、とても有名ですね。
ここから始まる物語は、すべてこの“吾輩”視点で語られます。“吾輩”の目を通して見る人間は、滑稽で、ちょっとおかしな人々ばかり。もしかしたら、現実の猫も、こんなふうに人間のことを見ているのかも?
この小説の元ネタになったと、まことしやかに言われているのが、E.T.A.ホフマンによる小説『牡猫ムルの人生観』です。確かにアイデアは似ていなくもないのですが、漱石はこの指摘を『吾輩は猫である』の連載中に受け、なんと『吾輩は~』の作中でしっかり否定しています。
この否定は、『吾輩は~』の11話(最終話)に「先達(せんだっ)てカーテル・ムルという見ず知らずの同族が突然大気焔を揚げたので、ちょっと吃驚(びっくり)した。」という文章で出てきますので、ぜひ注目してみてくださいね。
読書時間目安:10時間~11時間程度(592ページ)
※ページ数は、角川文庫版でのページ数です。
『牡猫ムルの人生観』 E.T.A.ホフマン(1819)
【あらすじ】
人の言葉を理解するオス猫、ムル。なんとこの猫が本を出版することに!? ムルの人生を書き綴った本になるはずが、とある音楽家・クライスラーの伝記が混ざってしまい、編集者も困ってしまいます。そうして出版されたこの本は、ムルの半生とクライスラーの人生が交互に現れる、なんとも不思議な本となったのでした……。
おすすめポイント
この作品は、ちょっと変わった構成の本を読んでみたい、という方におすすめです。
上でご紹介した『吾輩は猫である』の元ネタになったとまことしやかに言われている、この『牡猫ムルの人生観』。(漱石ははっきりと否定していますが)
いまだにこの噂を信じている人はいるようで、この『牡猫ムル~』の紹介文に『吾輩は~』のことが言及されている場合があります。
人語を理解し、なんと文章まで書けるというオス猫のムルが、自分の生い立ちなどを書いているのは、確かに『吾輩は~』と似ている感じもあるかもしれませんね。
しかし、この本のおもしろいところは、ムルの文章とムルとは無関係の音楽家・クライスラーの伝記とが交互に現れ、まったく関係のなかった両者の文章それぞれがやがて密接に関係してくる点。
この本は第2巻まで出版されましたが、ホフマンの死去により構想されていた第3巻は書かれず、未完となっています。出版当時の第2巻の表紙を今でもウィキペディアなどでも見ることができますが、東京創元社版の単行本は、ホフマンが描いたその表紙絵をそのまま採用しています。
ちなみに、ホフマンは実際に「ムル」という猫を飼っていて、この子が亡くなったときに、人間並みの「死亡通知」を知人たちに書き送った、というのは有名な話です。
読書時間目安:7時間半~8時間半程度(448ページ)
※ページ数は、東京創元社版でのページ数です。
『長靴を履いた猫』 民話(1697/シャルル・ペロー版)
【あらすじ】
粉挽き職人であった父親を亡くした、3人の息子。長男は粉挽き小屋、次男はロバ、そして三男は残った猫を相続します。「この猫を食べたら、もう何も残らないよ……」と嘆いていた三男でしたが、その猫から「長靴と袋をください。そうしたら、あなたが受け継いだものがそんなにわるいものでもないとわかります」と言われ……?
おすすめポイント
この作品は、有名な民話やおとぎ話に改めて触れてみたい、という方におすすめです。
民話や童話を集め、本として出版していた人としては、グリム兄弟のほかにシャルル・ペローが有名です。
「長靴を履いた猫」は、ヨーロッパに古くから伝わっていた民話のひとつ。猫ではありませんが、イタリアのシチリア島あたりには、ほとんど同じ筋書きで狐が出てくる「ジョヴァンヌッツァ狐」というお話が伝わっていたりもします。
一般的に、シャルル・ペロー版のほうが出版年が古いので、グリム版よりもより民話の原型に近いのではと考えられることもあります。ペロー版のほうがグリム版より100年ほど古いため、そう思われているのです。
どちらのほうがより原型に近いかという学術的な話を抜きにしても、猫が長靴を履き、知恵を出して飼い主を出世させる、というお話には夢があります。
昔から身近な存在だった猫。飼い猫がこんなふうに長靴を履いておしゃべりし始めたらかわいいかもしれないな~! なんて、思ってしまったのは筆者だけではないかも……?
読書時間目安:6時間~6時間半程度(282ページ)
※ページ数は、岩波文庫版『ペロー童話集(完訳)』でのページ数です。
『ルドルフとイッパイアッテナ』 斉藤洋(1987)
【あらすじ】
小学生のリエちゃんに飼われている黒猫のルドルフは、ある日魚屋から逃げる途中でトラックに乗ってしまいました。そのままたどり着いたのは全く見たことのない大都会……。どうしたらいいかと困っていたところ、ふとしたことでその土地の親分猫と知り合います。名前をたずねると、「おれの名前はいっぱいあってな……」との返答。ルドルフは、親分猫の名前が「イッパイアッテナ」だと勘違い! 言葉の読み書きができるイッパイアッテナの助けを借りて、ルドルフは故郷に帰ることができるのでしょうか?
おすすめポイント
この作品は、児童文学の名作的作品を読んでみたい、という方におすすめです。
こちらの作品も、なんと猫が書いたという設定のお話。ゴミ捨て場にあったインクを使って、ルドルフが自分で書いたとか。作中でルドルフがイッパイアッテナに日本語の読み書きを教わる場面があるので、その知識を生かしたんだなあと思うとかわいらしいですね。
筋書きとしては、『忠臣蔵』をモデルにしたそうで、そのせいか大人が読んでも充分な読み応えを感じることができます。ルドルフがイッパイアッテナとともに野良猫生活を送るなかで、どのような物語を紡いでいくのか、ぜひ注目してみてください。
作中に出てくる土地は実際に存在する場所が多く、その地元の人ならば「ああ、あそこだ!」と思える場面も。
とくに、ルドルフがたどり着いた大都会は、東京都の江戸川であることが作中でも明言されています。その土地おなじみの電車や商店街が登場するなど、現実と作品がリンクするので、そういう面でもとても楽しめますよ。
演劇やミュージカル、なんとオペラにまでなっているこちらの作品。ぜひ、ルドルフたちの冒険を見守ってみてくださいね。
読書時間目安:4時間半~5時間程度(274ページ)
※ページ数は、単行本でのページ数です。
『100万回生きたねこ』 佐野洋子(1977)
【あらすじ】
あるところに、100万回生きた猫がいました。あるときは王様の猫、あるときは孤独なおばあさんの猫……。輪廻転生を繰り返し、さまざまな人の猫となったこの猫は、あるとき、誰の飼い猫でもない立派な野良猫になりました。100万回生きたことを自慢していた猫の周りには、いつも彼に魅了されたメス猫がいっぱい。しかし、そんな彼の自慢話にも唯一素っ気ない態度を取る白猫がいて……?
おすすめポイント
この作品は、タイトルは知っているけれど読んだことはない、という方におすすめです。
こちらは絵本なのですが、誰もが知っている不朽の名作です。100万回生きて、さまざまな人に飼われたものの、飼い主のことは好きでなく、自分のことだけ大好きな猫。自分だけを愛する猫が、あるとき白猫と出会い、どのように変わっていくのか、というお話。
オチもとても有名なのですが、実際に読んでみたことがない人もいるかもしれませんね。ぜひ、読んで確かめてみてください。
そして、抱いた感想を大切にしてみてください。物語に触れるということは、ときに人生を豊かなものにしてくれるはず。ぜひ、この物語を読んで、本を読むことが気に入ったら、ほかの作品にも挑戦してみてくださいね。
読書時間目安:10分~20分程度(31ページ)
※ページ数は、絵本でのページ数です。
ちなみに、この絵本、タイトルを勘違いされることも案外多い作品でもあります。「生きた」、ではなく、「死んだ」と思い込んでしまうのです。
そんな「100万回死んだねこ」という勘違いを、ちょっとクスッと笑える本にしたものがあります。
『100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集』というこちらの本もとってもおもしろいですので、読書の足がかりとして、またちょっとクスッと笑いたいときの本として、ぜひチェックしてみてくださいね。
文学で、猫に思いをはせてみて!
今回は、猫をメインに据えた本を5つ厳選してご紹介しました。
ふわふわもふもふ、柔らかくて愛くるしい。そんな猫を、文学でも楽しんでみてください。もしかしたら、もっと愛着が湧くかもしれませんよ。
文学者のなかには、E.T.A.ホフマンなどのように猫好きの人もいます。そんな人たちの描く猫は、愛らしくも一生懸命で、ちょっとかわいらしさもある魅力的な存在です。
2月22日は猫の日。猫のことに思いをはせながら、ぜひ物語を楽しんでくださいね!







