バーでの会話のあと、私がF香に会ったのは2週間後、今度は青山のオーガニックレストランだった。F香は長身美女。自分に厳しく、非常に自立心の強い女性だ。
彼女はいう。ダイエット、正しくはトーニングであったりシェイプアップというべきなのだが、その秘訣はとても簡単。以下の三原則を守るだけでいい、と。
それは、
原則1 体重は気にせず、鏡に映る自分の姿を気にすること
原則2 正しい食事の方法を覚えること
原則3 正しい運動の方法を覚えること
の3つである。
同時に彼女は言う。三原則はすべて守らなければならない。それが普通の人には難しいのだと。

メリハリがあるボディが理想。
www.victoriassecret.com三原則のうち、もっとも簡単なのは1番目だが、体重を気にするな、という教えを女子は意外に守れない。体重という数字よりも鏡に映る自分の姿をごまかさずチェックすることが重要だと彼女はいうのだが。
第二の原則である正しい食事の摂り方については「まずバランスとタイミングを考えて、朝、昼、夜の食事の質を変えること」とF香は言う。
炭水化物をとっていいのは朝と昼だけで、それもできるだけ少なめに抑えること。果実もたくさん食べていいが、やはり夜はダメ。甘いものを夜に食べることは厳禁なのだという。
「基本的にお肉とお魚でタンパク質をたくさんとることが大事よ。同時に野菜をたくさん食べること。ピーマンとかトマト、セロリ、ブロッコリのように、色が濃い緑黄色野菜がおすすめよ」「お米とかパンは、朝と昼ならとっても大丈夫だけど、心持ち少なめにすることね」
特に男なら、これだけで結構痩せる、と彼女は言う。「男性は皮下脂肪より内臓脂肪がたまる体質なんだけど、炭水化物をカットすると、最初に内臓脂肪から減るから、効果が出やすいの。逆に女性は皮下脂肪の方が多いから、効果が出るのは少なくとも1-2ヶ月かかるわ」
「硬水をたくさん飲めと言ったよね」と私は聞いた。
「そう。一日に人間は1.5リットルの水分を排出しているのよ、汗とか尿とか呼気からね」だから少なくとも1.5リットル、できれば2リットル飲むべきだと彼女は言った。
「硬水がいいのは、軟水に比べてミネラルが多いからよ。食事制限するとただでさえ十分にとれていないミネラル摂取量が減るでしょ?だから硬水で補給するのよ」
「硬水は味が苦手だな」と私が言うと、だったら飲まなきゃいいんじゃない?とF香は冷たく言った。「別に無理にとは言っていないわ」
結局、第二の原則である正しい食事の摂り方とは、とても簡単で、さほど苦行でもない。
# 全体としてはタンパク質(肉、魚、豆腐、ヨーグルトなどの乳製品 etc)をたくさん食べること
# 同じように野菜をたくさん摂ること。色の濃い野菜をなるべく選ぶこと
# 炭水化物(米、パン、蕎麦、パスタなど。甘いものも含む)は控えめして、特に夜は摂らないこと
# 水をたくさん(2リットル)飲むこと。硬水を選ぶこと
これだけである。
しかしこの簡単ささえ、いろいろな口実をつけて、人は実行を避けようとする。だから手っ取り早く減量できるような短時間での苦行に走る。
F香から言わせると、それは自殺行為だという。
「何事もバランスとタイミングなの。簡単なことでも、淡々と毎日続けていくことが難しいの。でもそういうルーティンワークをこなせる人なら、きっと仕事もできるわよね。こんな簡単なことさえできない人なら、肥っていようが痩せていようがそもそも私は興味がないの」とF香は言うと、私を見た。
「すいません!」私は右手をあげてウェイターを呼んだ。
「ペリエ(硬度400.5mg/Lの硬水)ください!」