人類初の有人火星探査チームを突如襲う悪夢

ラスト・デイズ・オン マーズ
www.lastdaysonmars.com実はまったくなんの予備知識もなく見始めたこの映画。
なんとなく勝手な推測で、ハートフルなお話かと思っていたのだが、まったく違っていた。なんとSFホラーだったのだ・・・。
簡単に言ってしまうと、人類初の有人火星探査に赴いた宇宙飛行士たちを、火星の未知のバクテリアが襲い、感染するとゾンビになってしまう、という話だ。
彼らは、世界中の期待を背に火星に来たものの、特筆すべき成果を上げることができないまま6ヶ月の調査期間を終えようとしていた。火星を離れるまであと20時間足らずというときに、功を焦った飛行士の一人がチームリーダーを騙して、最後の調査にでかけるのだが、そこでバクテリアに感染してゾンビ化してしまう。
ゾンビ化すると人間性は失われて、仲間を襲い始める。傷口からなど感染するバクテリアは、どんどん飛行士たちをゾンビに変え、増殖するのだ。
映画『ラスト・デイズ・オン・マーズ』予告
youtu.be極限状態の人間性の見え方
火星というのは、いまは乾ききった惑星と見られているが、かつては大量な水が存在していたと考えられている。水分があれば生命体がいた可能性がある。その意味で、地球から宇宙植民地を作るのであれば、最も可能性が高いとされるのが火星だ。
(人気コミック『テラフォーマーズ』が火星を舞台にしているのも同じ理由だ)
生命体というと、つい哺乳類や魚類のような”動物”をイメージするが、今回の相手はバクテリア、つまり微生物だ。
もし本作のような微生物が火星で発見されれば、それは我々地球生物以外で初めて確認される生命体であり、この宇宙で我々が唯一の生命体ではないと証明することになる、大発見である。
その栄誉を受けたいと願うのは、ある意味当然で、その野心がついに身を結ぶのだが、それが逆に彼らを地獄に突き落とすことになる。
本作では、野心に忠実になるがゆえに利己的になる宇宙飛行士たちの姿を描きつつ、未知の怪物に襲われる極限状態になると、最も利己的であったはずの飛行士がチームを救おうと自己犠牲を払ったり、温厚で周囲に気を使っていたはずの飛行士が仲間を犠牲にしてでも生き残ろうと見苦しい姿を示す。つまり、上昇志向や野心が強すぎて周囲に煙たがられるからとって、悪人ではない、普段はいい人、と思われる人でも土壇場ではその仮面が剥がれる、という少し悲しい矛盾を本作は示している。
冒頭で述べたように、本作がホラーであると知らずに見た僕は、徐々にバッドエンドに向かいそうなムードに嫌な予感がしつつ、ゾンビ化した最初の飛行士が現れた時点で覚悟を決めてみた(苦笑)。
つまりは期待を裏切って始まった作品なのだが、全体で見れば悪くない。ただ、『エイリアン』より地味で、そしてとてもありえそうなことだけに、見終わった後に見なければよかった、とため息をついた。作品が悪いわけではない、よくできているだけに見なければよかった、と思っているのである。