【1/100の映画評】神の子ではなくても英雄にはなれる「ヘラクレス」

神の子ヘラクレスを普通の人間として描く

本作の面白さは、英雄ヘラクレスを単なる傭兵として描いたことだ。彼の伝説はすべて作り物であり、うまく流布することで誰もがヘラクレスを畏怖するように仕向ける作戦である。

ただし彼の強さは強さは本物であり、伝説効果も手伝って、多くの偉業を成し遂げている。

本作のヘラクレスは神の子ではないかもしれないが、金のためにだけ働いてるわけではない。義理人情や弱者を救いたいと思う、正しい性根を持っている。

彼と彼の仲間たちは、内紛によって混乱している国を救うために雇われるが、その雇い主の王が実は冷酷な暴君であることを知る。金を受け取って黙って立ち去るか、見過ごせず正義のために死を賭して戦うか。それがヘラクレスたちの究極の選択となる。

最近のギリシア神話モノでは最も楽しめる娯楽作品

最近ギリシア神話に基づく映画が数多く公開されているが、本作はエンターテイメントとしてはおそらくは最も出来がいい。アクションは素晴らしいし、ヘラクレスを神の子として演出するために懸命な仲間たちの努力が微笑ましい。あわよくば続編を作りたいという製作側の思い入れが見え隠れする。

ストーリーは単純であるが、その単純さがかえって本作の魅力を作っていると思う。神格化されたヘラクレスを、巧みに伝説を操ることで戦闘を優位に進めてきたヘラクレス率いる傭兵チームの、現代的な戦略眼を楽しむこともできるのだ。

一流の作品、ではない。
しかし、週末の二時間を使うには、こういう頭を使わずに楽しめる映画がいい。娯楽映画というものの、手本のような作品だと思う。