僕は決して戦争マニアではない。サバイバルゲームに興じる人たちを軽蔑はしないが、だったら自衛隊に入れ、と心の中で舌打ちをするほどだ。

ただ、戦争という極限状況の中で命を預け、命を奪う、そのためだけに作られた武器や兵器たちは美しい。機能美の極致だからである。だから地上最強の兵器である戦車戦が繰り広げられる「フューリー」は、映像だけを見ているだけでも心が踊ることを正直に告白しよう。特にドイツのタイガー戦車(ドイツ語ではティガー。ただし発音は映画であるからタイガーと呼んでいる)の神々しいまでの美しさには惚れ惚れする。

しかし、この映画での戦闘は、非常にリアルだ。リアルということは残酷な破壊や殺戮をそのまま見せるということだ。

人間性を失いたくないと考えるか。人間性を隠して戦うか

画像: ブラッド・ピッド演じるドン・ウォーダディー・コリアー。「理想は平和だが、歴史は暴力の連続だ」 fury-movie.jp

ブラッド・ピッド演じるドン・ウォーダディー・コリアー。「理想は平和だが、歴史は暴力の連続だ」

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『フューリー』(Fury)は、デヴィッド・エアー監督・脚本による第二次世界大戦時代を描いた2014年のアメリカ合衆国の戦争ドラマ映画(英語版)である。
出演は、ブラッド・ピット、シャイア・ラブーフ、ローガン・ラーマン、ジョン・バーンサル、マイケル・ペーニャ、ジェイソン・アイザックス、スコット・イーストウッドらである。
撮影は2013年9月から11月までにイングランドで本物のティーガーI戦車を使って行われた。

本作は、第二次世界大戦の末期、ナチス・ドイツが降伏する数ヶ月前の話だ。
連合軍は最後まで抵抗しようとするドイツ軍に手を焼きながらも、町を制圧しては次の町に向かっている。
主人公のドン・ウォーダディーは歴戦の勇士であり、過酷な戦闘の連続の中で、ひたすら非情に徹しようとしている。彼の戦車の副操縦士の一人に任命された新参兵のノーマンは、非情になりきれないナイーブな青年である。彼ら以外のクルーは、戦争の空気に飲まれており、非情というよりは粗暴で残酷な感情に取り憑かれているから、戦闘にも迷いがないし、捕虜の女性を凌辱することにもためらいがない。

しかし、誰一人として真の悪人はいない。戦争だから、相手を殺す。それ以外の理由で悪事を働くことを思いつく人間はいない。本作では憎まれ役のドイツ軍でさえもそれは同じことだと思う。

激しい戦闘のあとに去来するものとは・・

画像: 米軍のシャーマン戦車とドイツ軍のタイガーの死闘はあまりに激しい

米軍のシャーマン戦車とドイツ軍のタイガーの死闘はあまりに激しい

戦争自体には、ほぼ勝利を収めているはずの連合軍だが、ドンたちの戦車の戦闘は違う。常に激しく、勝ち負けは神のみぞ知る。
彼らの最後の戦いは、思ってもみない災厄に襲われることから始まった。地雷を踏んで戦車が故障しているまさにそのときに、200-300人はいようと思われるナチスのSS部隊(親衛隊)と遭遇したのだ。

戦車を捨てて逃げるか。それともそこに残って任務を全うするか。
究極の選択の中で、彼らが下した決断。それは死を恐れずに戦いに向かうことだった。そこで逃げても戦局自体は変わらない。それでも少しでも早く勝利を得るために彼らは戦うことを選ぶ。

正義感であるとか、義務感ではなく、最終的に彼らを突き動かしたのは’’戦争の気分”であったかもしれない。

本作には、安いヒューマニズムはなく、リアリズムとしての戦いしかない。戦い続けた主人公たちも、敵対するドイツ軍たちも、ただ任務のため戦闘に身を投じた。ただそれだけだ。
映画「フューリー」にあるのは、非情な戦い、ただそれだけである。

『フューリー』本編映像 (ティーガー戦車を狙い撃て)

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