三原則はすべて守らなくてはならない
F香は、身長168cm、誰が見てもモデル並みのプロモーションの持ち主であるが、容姿について口に出して褒められることをあまり好まない。天邪鬼というか、そういうタチである。
しかし、彼女自身は男も女も見かけが重要であることを十二分に認識していて、不断の努力をしている。(こちらを参照してください)
彼女が言うには、ダイエットの三原則というものがある。どれか一つを守ればいいというのではなく、すべてリンクしているので、すべてを同時に守っていかねばならないという。F香はいつも、なかなかに厳しい。
原則1 体重は気にせず、鏡に映る自分の姿を気にすること
原則2 正しい食事の方法を覚えること
原則3 正しい運動の方法を覚えること
「全身が映る鏡を買って、その前で裸になって、自分の姿をチェックするの。毎日10分でも5分でもいいわ。他人のあら探しをするように、一生懸命見ることが大切よ」
そうすると、肌の荒れも気になるし、余分な肉が腰の周りにあることや、二の腕がたるんでいることがはっきりわかる、と彼女は言う。「同時に、意外に自分のカラダが太ってもいないことに気がつくこともあるわ。いいところと悪いところを両方見るのよ」

ジョニー・デップを陥落させた美女 アンバー・ハード
www.imdb.com第二の原則:正しい食事とは
君ならどう見たってあら探しなんてできないだろ、と私。
「そんなことないわ」F香は私を軽く睨んだ。「少しでも体型に変化があったら、人に言われる前に自分で気づくことが大事なの。体重は嘘をつくけど、鏡は嘘をつかないわ」
脂肪が増えて筋肉が減っても、体重は減る。つまり体脂肪率を減らした状態で体重をキープすることが大事なのだが、体重を計るだけではそれはわからない。体脂肪率を測れる体重計なら良いが、それでも体重の増減だけで一喜一憂してしまう女性が多い、とF香は言う。
つまり、と彼女は言った。「大事なことは筋肉を増やすか維持して、脂肪を減らすことよ。それには正しい食事と運動が大事なの」
正しい食事とは、何か。F香に言わせると、それはバランスとタイミングだという。
まずタンパク質をたくさん摂ること。
質のいいオイルを積極的に摂ること。
野菜は色の濃い、いわゆる緑黄色野菜をたくさん摂ること。
炭水化物は朝と昼だけ。夜は摂らないこと。
と、彼女は細くて長い指を折りながら言った。
「ほんとはできるだけ小刻みに食事するのがいいのだけど、社会人には無理よね。だから朝、昼、晩と三食をちゃんととることが大事よ。三食通じて、なるべくタンパク質、つまり肉か魚か豆類を中心とした食事にすること。野菜もいつでも食べていいわ。甘いものとお米、パスタやそばなどの麺類、パン、つまり炭水化物は夜は禁止。果物も夜はダメよ」
なかなかに厳しいね、と私は言った。「それが正しいとして、なかなか続かないのでは?」
「意思が強くないことを白状するならそれでもいいわ」彼女は冷たく言ってから、少し笑った。「でもね、そうでもないのよ。食事を抜くわけではないし、お肉と魚は好きなだけ食べていいんだから意外と平気と思うわ。チーズとかヨーグルトもタンパク質を含むし、お豆腐や納豆もとてもいいのよ」
食事量を極端に減らしたり、スムージーのような代替食にするのはよくない、と彼女は言う。「もちろんわたしは医者じゃないから」とF香は断りをいれながら続けた。「食べる量を単純に減らすと筋肉が細って、かえって太りやすくなるし、なによりストレスが溜まるから避けたほうがいいのよ」
あとは、と彼女は言った。「1日にお水を2リットル飲む事。それもなるべく硬水をね。硬水のほうがミネラルが多く入っているからカラダにはいいのよ」
「硬水は飲みづらいという人も多いよね」私は言った。
「そうだけど、どうせお水を飲むなら、メリットが多い方がいいし、食事を少しでも減らすと、そもそもミネラルの摂取量が少なくなるから、硬水を飲むほうがいいのよ。それに、すこしくらい辛い思いをしたほうがダイエットしている気分になるじゃない」と彼女は言いながら、時計を見た。
「もう(夜の)10時だわ、帰りましょ。続きはまた今度ね」F香はそそくさとスツールから降りた。「ごちそうさま。また誘ってね」
ちょっと待って、と私は慌てた。
「もう少しいいだろ?それに、なぜそれが正しい食事なのかの理由も聞いてない」
「そうだったわね」彼女は言った。「でも、それはまた次にしましょ。わたしの優しさと思って」
優しさ?? 私が聞き返すと、F香はいたずらっぽく笑った。
「だって、またわたしを誘える口実ができたでしょ?」