豆園、と書いて"まめぞの"と読む。
今年(2015年)3月16日に恵比寿に直営店をリニューアルオープンした新しい和菓子ブランドだ。
豆園の取締役である濱涼子(はま りょうこ)さんは、豆園の実質的な経営を任されている。
昨今では、美しい、という形容詞を女性経営者に与えることをはばかる風潮があるが、かまうものか。嘘偽りなく美人経営者と紹介しようと思う。
若干27歳(奇しくも、豆園本店のオープン日である3月16日は彼女の誕生日でもある)になったばかりの彼女だが、毅然とした態度はすでに何年も経営を任されてきたかのようで、貫禄さえ感じさせるほどだ。

豆園 取締役 濱涼子氏
和菓子離れが続く若い世代にもアピールしたい

にこやかな表情だが、経営者としての意識がとても高い
和菓子の市場はいまでは縮小傾向にある、と濱さんは憂いている。
だからこそ、和菓子をWagashiへと、世界に通じる文化に育てる一助になりたいと濱さんは言う。小豆、餡子に対して”甘そう”とか”太りそう”などといった偏見をなくして、若者にも受け入れてもらえる商品開発をしつつ、和菓子を好む中高年のファンにも引き続き愛していただく。一見矛盾しそうな挑戦を続けていきたい、と濱さんは笑った。
「”ありがとうのお手伝い”をコンセプトに、あらゆる世代が安心して食べられる、上質で洗練された商品作り、それが私たちが目指していることです」
だから当然海外にも目を向けていると濱さんは語る。今年5月からはシンガポールの高島屋に、商品を提供することが決まっている。アジアの若い層に、和菓子の魅力を広げられるか。簡単ではないかもしれないが、世界のWagashiへの道のりの第一歩だと思うと、身が引き締まると語る濱さん。しかし、その表情からは緊張の色は見えなかった。
店舗はシンプルでモダンな作りと、絞り込んだ商品へのこだわり

豆園 東京恵比寿銘菓(まめぞのえびすめいか)

〒150-0013
東京都渋谷区恵比寿4-9-7 ABEビル恵比寿1F
TEL/FAX 03-5789-9899

品のいいパッケージに、豆園のロゴが軽やかに飾られる。
恵比寿本店は、比較的シンプルな作りだ。
カフェが併設されていて、インドネシアの名産であるトラルコ・トラジャコーヒーときんつばをその場で楽しむことができる。5月からは抹茶ときんつば、という定番の組み合わせを喫することもできるとのことだ。
【お飲物】
豆園珈琲 580円
トアルコトラジャ珈琲 680円
アイスコーヒー 580円
紅茶 580円
アイスティー 580円
黒豆茶 550円
おから茶 550円
玄米茶 550円
オレンジジュース 400円
ペリエ 400円
【きんつば各種】320円
黒豆きんつば
抹茶きんつば
芋きんつば
ショコラきんつば
桜きんつば
ちなみに、豆園は現時点ではきんつば専門店、である。
社名からもわかるように、大豆、黒豆、小豆など、豆という素材にこだわる。つまり和菓子の基本である餡子の魅力を最大限に引き出すために、まずきんつばを選んだという。
「だから、やがてはきんつば以外にも商品は増やしていきます」と濱さんは語る。「次の商品は、羊羹(ようかん)になる予定です」
ただ、一度にたくさんの商品に手を出していくよりも、素材を大切にしながら、土台となる商品を作って、少しずつ広げていく。そのほうが自分たちのブランドには合っている、と濱さんは言う。
「現在のきんつばは、黒豆、芋、抹茶の代表的な商品に加えて、新しい試みとしてのショコラ、そして春期限定の桜味が揃っています。
ショコラはバレンタインの時に作ってみたところ、男性のリピートオーダーが多くいただいたので、定番に加えさせていただきました。日本茶だけでなく、コーヒーや紅茶、赤ワインなどと一緒にいただいても、とても合う和洋折衷なお味に仕上がったと思っています」

意外なほどに男性人気が高い、ショコラきんつば 〜香り高いショコラに包まれた北海道十勝産小豆。
www.mamezono.co.jp
ほのかに香る桜風味が日本の春を感じさせる【数量限定】桜きんつば。
www.mamezono.co.jp実際にショコラ味と桜味をいただいたのだが、確かに甘くない。
いや、甘いのだが、しつこさを感じさせず、ほんのりと甘い。
これならスイーツを求める女性でも甘味を楽しめるし、男性にも甘すぎることなく受け入れられる。甘み付けには奄美大島産の さとうきびを使用した「素焚糖」を使用しているというが、上質な砂糖に頼り切るのではなく、利かせ方が絶妙にうまいのだ。
土台を大切にしていく。
和菓子に限らず、和洋折衷であるとか和漢洋才といったとしても、テーマがはっきりしていないと、どっちつかずなモノになりがちだが、豆園のきんつばは、土台として餡子が毅然として存在しており、たとえショコラ味であったとしても、あくまでこれがきんつばであるということが明快に分かる。
異質なモノが混ざっている、というのではなく、厳然として和菓子の基本がそこにあり、そこに新しいテイストがアクセントとして加えられている。ベースがはっきりしているのだ。
「商品開発をする上で、国産の素材や、伝統的なお菓子作りの基本を大事にしたうえで、新しいテイストの拡張を考えています」と濱さんは語る。いくら美味しく、売れる商品を作ったとしても、それが誰の目から見ても和菓子であると感得してもらえなければ、和菓子文化を継承することにならないし、世界のWagashiへとつなげることもできない。
濱さんにはそれがよくわかっているのだ。

和菓子を世界のWagashiへ。
しかし、彼女と話をしていると、本当に27歳になったばかりなのか、よくわからなくなってくる。
なぜそんなに落ち着いているのだろうか??
「そんなことないんですよ」と濱さんは笑った。
「何かに夢中になると止まらないたちで、小さい頃から本が好きで、とくに推理小説が大好きなんですけど、夜になってもなかなか止められず、布団の中で懐中電灯で読んで目を悪くしてました。今でも本を読み始めると仕事が手につかなくなるほど読みふけってしまうので、敢えて週に3冊以上は買ってはいけないと、自分で自分にルールを課しています」
集中力が強すぎて、趣味にいきすぎれば生活に支障をきたすほどの凝り性になるということか。しかし、その集中力と情熱が、今の濱さんには良い方向にすべてを向けているようだ。
和菓子業界は老舗も多いと思うが、新興ブランドの豆園が、どのような旋風を起こしていくか。濱さんの挑戦は始まったばかりである。

豆園 東京恵比寿銘菓(まめぞのえびすめいか)
〒150-0013
東京都渋谷区恵比寿4-9-7 ABEビル恵比寿1F
TEL/FAX 03-5789-9899
info@mamezono.co.jp
営業時間
月〜金曜 : 10時〜21時
土曜 : 10時〜20時
日曜 : 定休