
この美しい少女をご存知だろうか。現在15歳の彼女は、2014年にTIME誌が発表した「世界で最も影響力のあるティーンエイジャー25人」の一人に選ばれ、一躍有名人となった。
彼女の名前は、ジャズ・ジェニングス。性別は、男性。
自分の性に違和感を感じるジャズ。

自分で認識している性別が、身体的な性別と対応していない人々がいる。彼らはトランスジェンダーと呼ばれ、自分の性別への違和感に苦しむ状態から脱出するため、異性の服装を身につける、性ホルモン剤を投与する、外科手術で性器の形状を自らが望むものに近づけるなど、人により様々な方法で、自認する性に近づけるよう取り組んでいる。(トランスジェンダーの定義は日々変化しており、性別適合手術は望まない人々を意味するという意見もある)。
ジャズ・ジェニングスは2000年に男の子として生まれたが、成長するにつれ、自分の性に違和感を感じるようになる。「間違った体に生まれたみたい」と常に両親に話していた彼女は、3歳の時に性同一性障害の診断を受け、女の子として生きることを決める。
思春期になり、男性らしい身体へと変化していくことに耐えられなくなった彼女は、ホルモン剤の投与を決断、現在もホルモン剤を使用し、若者向けスキンケアブランド「クリーン&クリア」のCMや、リアリティ番組に出演するなど、たくさんのサポーターに支えられながら活躍している。
トランスジェンダーであることを認められず、自ら命を絶ったリーラー。

両親や友人に理解してもらい、ありのままの自分で生きることが出来るジャズ。しかし、トランスジェンダーの誰もが彼女のように生きられるわけではない。
2015年12月28日、米オハイオ州で17歳の男性、リーラー・アルコーンがトレーラーの前に飛び出して自殺した。リーラーは、自殺後に自分の遺書がネット上で公開されるよう設定しており、その遺書には自分がトランスジェンダーであること、女性に性転換したいという願いと、その願いを家族に反対されたことが記されていた。
「私は遂に、母親に話をしました。母は非常に否定的な反応を示し、『あなたは本当の女の子にはなれない。神は間違いを犯さない。あなたが間違っている』と言いました」
「このブログを読んでいる人は、お願いだからこんな風に自分の子どもには言わないで。たとえあなたがクリスチャンだとしても、トランスジェンダーに反対だとしても」
リーラーの母親は、米 CNNのインタビューにこう答えている。
「私たちは、宗教的にはトランスジェンダーを支持することはできません。しかし、私たちは無条件で愛していることを彼に伝えていました。私たちは何があっても彼を愛していました。私は息子を愛していました。人々はそれを知るべきです。彼は良い子、良い息子でした」
リーラーを失ってなお、彼女のことを「彼」、「息子」と呼び続ける母親に、避難の声が多く上がっている。
幸せに生きるということは、性別に左右されるものではない。
アップル、グーグル、Facebook、アマゾン、Microsoft、ディズニーら含む、世界中の計379社が、米国の最高裁判所に同性婚支持に関する声明を提出するなど、企業によるLGBTサポートが進む一方、まだまだ多くの差別や偏見が存在している。苦しみに耐えかね、リーラーのように命を落とす人々も多い。ジャズのように、愛する人々に支えてもらえさえすれば、リーラーは命を落とすことなく、幸せに生きていけたかもしれない。人の命は平等であり、尊いものである。幸せに生きるということは、性別に左右されるものではない。性の問題で苦しむ人々の声や物語を広く伝えることが、差別をなくす第一歩になる。誰にとっても幸せな世界であるように、私たちは努力しなければいけない。