ベストセラー小説を原作に、西島秀俊、香川照之、井川遥、吉岡秀隆などの一流俳優陣で臨んだ作品

絶望の淵に追い込まれ、「もう死んでもいい」とさえ感じていた永田一雄。そんな時、突如目の前に現れたワインカラーのワゴンカー。運転していたのは橋本義明、助手席に座るその息子・健太。やがて、決して分かり合えないと思っていた父親・忠雄が同い歳の姿で現れる。
行き先は、一雄の人生にとって大切な分岐点。後悔の人生をやり直すためのドライブが、いま始まる。

主人公一雄(カズ)を西島秀俊が、その厳格すぎる父親(チュウさん)を香川照之が演じた。
最愛の妻には逃げられ、溺愛していた息子には家庭内暴力を起こされ、会社はリストラされた主人公カズは、重病で入院中の父親を見舞うたびにもらえる車代を頼りに生活している状況だ。しかも、その父親は幼少の頃からそりが合わず、絶縁状態だったはずであり、その相手の金に頼りきっている自分には嫌悪感しかない。もはや自分など死んでもいいと思っている。

すると、そこに一台のワゴンが現れて、人生の分岐点となるいくつかの過去の出来事を修正するチャンスをあたえてくれるという。ワゴンに乗って過去に戻ることができるというのだ。
なぜか乗り合わせている、今の自分と同い年の姿の父親(生き霊)とともに、過去の後悔を断ち切って、苦しい現在を変える旅に出る。そういうストーリーである。

僕は基本的にドラマ、というよりテレビを定期的に観る習慣がないが、この作品は日曜の21時ということもあって、結局1クール、すべてを欠かさず観てしまった。というより、最初から最後までとても楽しみにして観ていた。
同じ枠では「半沢直樹」以来、久しぶりにすべてを観た作品だ(それどころか一話分でさえも他のドラマは観たことがない)。

ところが周囲にあまり見ている人がおらず、おかしいなと思っていたところ、視聴率があまり振るわなかったという記事をどこかで読んだ。(まあそもそもドラマの話をすることもないのだが、「半沢直樹」の場合は周囲でも話題になっていたのだ)

だが、父と子、母と子、夫婦など、さまざまな絆を毎回情感たっぷりに描いてくれたうえに、何度も何度も、必死に頑張って過去を変えても、現在に戻ってくるたびに現実は何も変わっていない、頑張って修正しても元に戻ってしまうという絶望的な状況の中で、諦めずにトライする姿に胸を打たれることが多かった。

だから、視聴率が良くない、周りに誰も見ていない、という事実はショックだったのだ。

画像: 妻に逃げられ、息子にグレられ、自分はリストラ、父親は危篤。もう死んでもいい!と嘆く主人公カズ。 www.tbs.co.jp

妻に逃げられ、息子にグレられ、自分はリストラ、父親は危篤。もう死んでもいい!と嘆く主人公カズ。

www.tbs.co.jp
画像: そんなときにふと現れたワゴンから、人の良さそうな親子が手招き・・・

そんなときにふと現れたワゴンから、人の良さそうな親子が手招き・・・

画像: やり直したいと悔やむ過去に連れて行ってくれるという。

やり直したいと悔やむ過去に連れて行ってくれるという。

画像: ストレスからギャンブル依存症(原作ではセックス依存症らしい)になる妻ー井川遥

ストレスからギャンブル依存症(原作ではセックス依存症らしい)になる妻ー井川遥

画像: グレて不登校になる長男

グレて不登校になる長男

画像: 絶縁状態の父。危篤状態

絶縁状態の父。危篤状態

画像: なぜか自分と同い年の頃の父親(の生き霊)まで合流しての時間旅行が始まる。

なぜか自分と同い年の頃の父親(の生き霊)まで合流しての時間旅行が始まる。

イメチェンに対する失望と、入れ込みすぎた熱演が視聴者を遠ざけたのか?

ダメ男を演じる西島秀俊の演技もよかったし、広島弁でまくしたてるチュウさんを演じる香川照之の迫力も素晴らしかった。
しかし、思うに、みなかっこよくてクールな西島秀俊が好きで、女性ファンはそういう姿を見たかったのかもしれない。しかも昨年末に結婚したこともあり、家庭問題に悩む姿は、いっそう見るに堪えなかったのかもしれない。

また、香川照之のチュウさんは、いつものとおり激しい演技で、自分勝手で暴力的で亭主関白な男を見事に演じていたが、逆にその激しさを辟易する層も多かったのかもしれない。

画像: 基本的に情けない表情が多かった西島秀俊。上手だったんだけど。

基本的に情けない表情が多かった西島秀俊。上手だったんだけど。

画像: 「生きていようが死んでいようがわしとお前は永遠に朋輩じゃ!」チュウさん。僕は大好きだったな。

「生きていようが死んでいようがわしとお前は永遠に朋輩じゃ!」チュウさん。僕は大好きだったな。

番組継続中、なにかと人に(「流星ワゴン」を見るように)勧めてみた僕だけど、その努力は実らなかった。でも・・・・未来は変えられる(かもしれない)

多くの視聴者とは異なり、僕はもともと西島秀俊という役者にはあまり興味がなかったところを、このドラマを見て、とても好きになってしまった。
また、香川照之という役者は前から素晴らしいと思っていたが、この役でますますその思いを強くした。

いまどきのドラマは、視聴率が取れなくてもDVD販売という手段もある。レンタルもある。
ぜひ、今回見逃しているドラマファンには、じっくりこの名作を鑑賞してもらえたらいいと願っている。

実は僕は、実の父親とは愛憎関係というものは”ない”といっていいくらい薄く、父親の影響をほぼ受けずに育った。精神的にも生活上も疎遠だったと言っていい。
だからこのドラマのような深い情念には縁がないのだが、逆にそれらを羨ましく思った。

カズとチュウさんは、深い友情で結ばれ、同時に父と息子の間にも、それまでとは違った感情が生まれる。

結果として、カズは過去を変えることも、現在を変えることもできなかった。しかし、彼には唯一残されたものがあった。それは未来、だ。
未来を変えるために今を生きる。辛い過去も、苦しい現在も、ともに現実として受け入れて、前向きに生きていく。そして未来をよくしようと決意する。

100%ハッピーエンド、とも違うが、それでも苦さを乗り越えて笑って生きていこうとする、そういう力をくれる、素晴らしい作品である。

番組継続中、なにかと人に(「流星ワゴン」を見るように)勧めてみた僕だけど、その努力は実らなかった。でも、この記事を読んだ読者が、DVDを観て感動してくれるかもしれない。その未来を信じているよw

TBSさん、ありがとう。他の誰もが認めなくても、僕は認める。良い作品でした。ありがとう。

日曜劇場 『流星ワゴン』重松清100万部大ベストセラー待望の映像化【TBS】

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