ブログは死んだのか?

Facebookが事実上のソーシャルプラットフォームになり、一般消費者がインターネット上に自分の近況をアップロードすることへの抵抗感は、ほぼゼロになった。匿名がよければTwitterがあるし、動画や画像であればInstagram・Vine・YouTubeがある。また、限られた人とだけのやりとりということであれば、SnapchatやWhatsApp、LINEがある。

そのなかでブログは死んだのか、オワコンということでいいのか? というと、そうでもないらしい。

Facebookをはじめとするソーシャル系サービスには、タイトルというものがない。なぜなら、基本的に自分の今の状況や気分をシェアするサービスであるからだ。逆にいえばソーシャル系サービスは、特定のテーマについて掘り下げて、意見を明確に記すための道具ではない。

そのための道具こそがブログであった。今から自分がなにを語りたいのかを端的に知らせるためのタイトルがあり、本文がある。

しかし、残念なことにブログはフォーマットがあまりに古い。PC上で読むにはよいが、モバイル上では読みづらい。いちいちページ遷移しなければならないのは、じつにめんどうだ。

そこで最近になって、それなりに長文であっても書きやすく、かつ読みやすいフォーマットを自動的に構築する新型のブログフォーマットが復興してきている。それがMediumやTumblrである。

画像: Ev Williams, Founder and CEO of Medium.com techcrunch.com

Ev Williams, Founder and CEO of Medium.com

techcrunch.com

Mediumはともかく、Tumblrはソーシャル系サービスの勃興と同時期に存在しており、いまさら感があるかもしれない。しかしシンプルな操作でテキスト・動画・画像を組み合わせたコンテンツをつくり出すサービスとしては、やはり飛び抜けた存在だ。

また、冒頭に挙げたソーシャルサービス群が完全に普及し、逆にある程度匿名制を担保しつつ、自由な表現で自分の意見をコンテンツ化する、という作業にフィットしたサービスとして、改めてTumblrへの注目が集まっている。

そして、MediumとTumblrは、お互いを強く意識している。Tumblrは長文テキストよりは、画像や動画などのクリエイティブなコンテンツをサクッとアップするのに向いたサービスだったが、2015年になってエディタをMediumに酷似した、パラグラフごとにツールキットを表示させつつ、データを入力させるタイプへと変えた。

同時にMediumは、もともと長文を書きやすくするというコンセプトであったものの、画像などを気軽にアップしたりTwitterのように短いコンテンツを気楽に書けるUIも取り入れた。

画像: Mediumのエディター

Mediumのエディター

画像: dinoのエディター

dinoのエディター

日本国内では、リボルバーがこのdinoを和製Mediumとして提供しているが、最近はサイバーエージェントもブログとInstagramやTwitterなどを統合してWebサイト化するサービス(AmebaOwnd)を発表した。

たしかに従来型のブログフォーマットはブームの終焉を迎えているが、ブログが担ってきた、ある程度まとまったコンテンツをアップするプラットフォームの需要はまちがいなく上がってきている。

世界的にみると、TumblrとMediumがその急先鋒として存在感を増しているし、日本でも似たような試みが顕在化しているのである。

SNS系とブログ系のフォーマットの違い

FacebookやTwitterに代表されるソーシャルネットワーク系のサービスは、
・タイトルがない
・テキスト、画像、動画、リンクなどのオブジェクトをまず選択して投稿する
・ストリーム上に投稿された記事は、一覧性を高めた表示形式
・短文や画像だけなどのマイクロコンテンツを得意とする
・ハッシュタグをサポートする
といった特徴をもつ。

対して従来のブログは、
・タイトルが必須
・基本的にテキストの投稿をメインとして、画像や動画などを付属的に挿入
・タイムライン構造ではあるが一覧性を犠牲にしてもクリック数を稼ぐ(SEO対策のひとつといえる)
・基本的に長文を作成させるUIやフォーマット
・タグではなくカテゴリ
といったことが特徴だ。

こうした特徴に対して、新型のブログフォーマットを有するサービスは、表示面ではソーシャルネットワーク系サービスの影響を色濃く受けて、ストリーム構造で一覧性が非常に良い。ハッシュタグを取り入れていることも、ソーシャルネットワーク系サービスに慣れたユーザー体験を再現しようとしている。また、オブジェクトを選択して、それらを積み上げるようにコンテンツを生成するような投稿画面をもつほか、比較的長文を書きやすいような構造で、タイトルを必須にしている場合が多い。

このようなサービスは、自身の思想や意見などを体系立てて、肩書きと切り離してインターネットに公開したいと考えるユーザーに求められている。そしてこのようなサービスが、今後非実名のソーシャルオピニオンネットワークサービスとして発展していくと考えられるのである。

モバイルオンリー時代のコンテンツの粒度の細かさを意識せよ

インターネットの利用はPCからモバイルに主戦場を移しており、仕事以外でのインターネット利用時間のほとんどは、モバイルの狭い画面で消費される。モバイルファーストどころか、モバイルオンリー時代はすでにはじまっている。

そして現在のインターネット利用シーンは、ゲームを除けばFacebook、Twitter、Instagramなどの広範囲に情報を公開し共有するソーシャルサービスと、1対1もしくはそれに近い非常に狭い範囲でのコミュニケーションを行うためのメッセージングサービスというふたつの領域に二分されている。後者の代表はWhatsAppやLINE、Snapchatが挙げられる。前者は雑誌やテレビ、新聞といったメディアの領域に侵食しており、後者はメールやショートメッセージを(少なくとも非ビジネスでは)駆逐しつつある。

こうしたなかで「ブログプラットフォームが復権する」という主張をしているわけだが、最後にもう少しわかりやすく整理しよう。まず前提として、ブログ的なサービスが必要なのは、前述のうち前者の領域になる。

モバイルインターネットにおいて、SEOはほとんど意味をなさない。人々は検索によって積極的に情報収集をしなくても、SNS上に流れてくる情報(+リンク)を受動的に取得するからである。あえて検索をするまでもないのだ。だからこそ、FacebookやTwitterにそれぞれコンテンツを拡散させるための箱として、テキスト、画像、動画、リンクなどを効率的に置く場所が必要になる。これが僕のいう新しいブログだ。

ブログというよりも、コンテンツ生成のためのフォーマット、といったほうがいいかもしれない。従来のブログはそれ自体をメディア化するために、当初はシンプルにテキストを書くためのツールであったのが、Webサイト自体を構築するためのCMSへと変化した。しかしいま必要なのは、1ページごと(パーマリンクごと)に適切な記事を生成する機能である。

従来のブログは、記事ごとにパーマリンクを設置しながらも、どうしてもひとつのWebサイトとして固まりをつくり、そこに読者を誘致するという発想にあったが、ここでいう新しいブログとは、ページ単位でコンテンツを配信し、どんなデバイスやサービス上で見られるかわからない、という前提で成立するものである。

LINE上で見られているかもしれない、Facebook上で見られているかもしれない、そしてページごとに見られているから、Webサイトのトップページなど一生見てくれない読者なのかもしれない、そういう前提で考えられたブログなのだ。

MediumやTumblr、特にMediumなどはそういう前提で作られたフォーマットだ。Webサイトをつくるというのはもはや古くて、コンテンツそのものをつくり配信するという、より細かい粒度での話なのである。

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