
中性的な美しさを持つこの男性、イギリスのハイエナジーバンド「デッド・オア・アライヴ」のリーダーでありボーカルを務める、ピート・バーンズ。妖艶な美しさを持ちながら、コンプレックスを抱え、彼は整形中毒となってしまった。

経済的に成功を収め欲しい物を全て手に入れたピートであったが、幼年期から続く自分の顔へのコンプレックスは抜けなかった。最初は昔から気に入らなかった鼻を整形する程度であったが、徐々にエスカレートし、儲けた金のほとんどを整形費用につぎ込むようになっていった。そして、整形医に勧められるまま唇に打ったジェル注射が原因で顔が変形し、その後死にも等しい苦しみと、闘病生活を余儀なくされた(唇に注入したジェルに対する炎症が顔面全体に広がり、肉芽腫を形成。また肉芽腫が血液を介して全身に播種し、腎臓の血管を詰まらせて腎不全を起こし、加えて腸障害、失明の危機などに直面した)。なお、後にこの整形医に対し損害賠償請求を提訴し、和解が成立した。治療費を捻出するため貯金をすべて使い果たし、3億円の豪邸も売り払い、過去の楽曲の著作権も売り払った。また、再生手術を執刀したイタリア人医師から「顔が元に戻ることはない」と告げられ絶望の淵にいたピートであったが、その執刀医の「あなたにはまだ音楽が残っている」という言葉に励まされ音楽活動を再開した。
美の頂点を追い求め、整形フリークに。

映画「バーレスク」をご存知だろうか。クリスティーナ・アギレラ演じる主人公が、一躍スターになり、経営難に陥っていたバーを救うというような内容で、見どころはクリスティーナの素晴らしい歌や、華やかなダンスシーン。だが、何よりも目がいくのが、舞台となる「バーレスク・ラウンジ」のオーナーを演じる、シェールの顔。アカデミー賞とグラミー賞という映画界と音楽界の頂点の賞を手中に収めた彼女だが、整形フリークとしても有名。バーレスクでは、ソロで歌うシーンがいくつかあるが、素晴らしい歌よりもどうしても顔に目がいってしまう。不自然にリフトされた肌、分厚すぎる唇‥彼女は自分の顔が美しいと思えるのだろうか?
美の世界に生きながら、原型をとどめないデザイナー

イタリアのファッションデザイナー、ドナテラ・ヴェルサーチ。ヴェルサーチの先任デザイナーというファッション界の重要なポジションにいながら、整形依存としても有名。ボトックス注射やインプラントを繰り返し、その外見は原型を留めていない。美しいデザインの洋服を世に送り出している彼女、自分の造形は見えていないのだろうか。
「美しさ」を追求することは、危険でもある。
女性ならば、誰でも美しくなりたいと思う。芸能界に憧れて‥好きな人に振り向いてほしくて‥理由は様々だが、ダイエットに励んだり、エステに通ったり、綺麗になるために皆努力している。皆多かれ少なかれコンプレックスを持っていて、「ここの形がもっと良くなれば‥」と思っている。この「もっと良くなれば‥」が一定のラインを超えてしまった人達は、整形依存に陥ってしまう。美しさを追い求めすぎて、美しさが見えなくなり、終わりの無い世界であがき続けることになってしまう。そして、この危険な世界は、比較的誰でも簡単に落ちてしまう可能性がある。この世界に落ちないために、私たちは、綺麗になる努力をしながら、「自分らしさ」を大切にすることを絶対に忘れてはいけない。「自分らしさ」は整形手術では作る事が出来ないのだから。